『82年生まれ、キム・ジヨン』#2:解説
【語注】
기운 気、気配、空気(찬 기운:冷気)
움츠리다 すくめる
【解説】
今回の下線部は全て文の前後をつなぐ接続語尾(などと呼ばれるもの)が含まれています。
下線部1の -는데/-ㄴ데(動詞、存在詞は -는데、形容詞、指定詞は -ㄴ데 が付く)には、前後の関係によって様々な意味があります。국립국어원 (2005: 238-239) では4つの意味を挙げています。以下、この4つの意味にそって例を挙げてみます。
① 発言の前置き
죄송한데 전화 좀 받을게요.「すみませんけど、ちょっと電話に出ますね。」
② 状況説明(前置き)
어제 그 드라마 봤는데 진짜 재미있더라.「昨日あのドラマ見たけど、本当におもしろかったよ。」
③ 促しの理由
추운데 옷 따뜻하게 입고 다니세요.「寒いので暖かい格好してください。」
④ 逆接
많이 먹었는데 아직도 배고프다.「いっぱい食べたけど、まだお腹空いてる。」
接続語尾には -았/었- が自由に付くものとそうでないものがあります(詳細はまたの機会に)。-는데/-ㄴ데 は①-④の用法であれば、過去の -았/었- と結びつくことが可能です。下線1を含む文は最後が過去形 (열었다) なので、②や④の用法であれば(①と③は会話で使われるのでここでは除外できる)過去形になるのが普通です。しかし、下線1で過去形になっていないのは、-는데/-ㄴ데 が、ある動作が起こる時間を表しているからだと考えられます。この時間を表す用法の場合、過去の出来事であっても -았/었- が付きません。下のような例があります。
例)어제 아침에 네가 마루에 걸어 나오는데 너희 아버진 줄 알았다.
「昨日の朝あなたがリビングに出てくる時あなたのお父さんだと思ったよ.」(池2013: 147)
長くなりましたが、よって下線1は前と合わせて「トーストと牛乳を食べているとき/食べていると」のように解釈できます。
下線部2の -더니 も -는데/-ㄴ데 と同様の接続語尾です。-더니 は過去の -았/었- が付くと、1人称(わたし)の動作について述べることになります。
例)교실에 갔더니 아무도 없었다.「教室に行ったところ、誰もいなかった。」
この例で「教室に行った」のは1人称(わたし)です。-더니 は過去の -았/었- が付かない場合は、基本的に3人称(わたし、あなた以外)の動作に付いて述べますが、2人称(あなた)場合もあります。注意すべき点は、-더니 は過去の -았/었- が付いても付かなくても、話し手の視点から述べるときに使う表現ということと、-았/었- は時間的な過去とはあまり関係ない働きをしているということです。-더니 に -았/었- が付かない場合「〜すると(順接)」「〜するが(逆接)」のどちらでも訳せますし、あるいは「〜と思ったら」のようにも訳せます。下線部の前と合わせて「ベランダへ出ていくと/出ていったと思ったら」のように解釈できます。
ちなみに、日本だったらアパートのベランダに出たら窓を開けることはできませんが、韓国のアパートはベランダにもガラス窓があって分離した空間になっているので、나가다 は「出ていく」でいいはずです。
下線部3の -자마자 は「〜するとすぐに」という意味を表します。似たような接続語尾に -자 がありますが、こちらは「すぐに」という意味を必ずしも含みません。また小説に出てきたときに解説することにしましょう。
下線部4の -(으)며 もいくつか意味がありますが、ここでは「〜しながら」という意味を表しています。-(으)면서 と同じような意味ですね(-(으)면서 にもいろいろ意味がありますが)。気を付けるべきなのは、下線部4は文字通り「座りながら」、つまり「立っている状態から座るという状態に移行しながら」ということです。日本語は「座ったままの状態」でも「座りながら」と言えますが、韓国語ではその場合 앉으며/앉으면서 ではなく 앉아/앉아서 と言わなければなりません。下線部4は「座りながら」ですが、「座りつつ」とすればニュアンスがはっきりするでしょう。
4行目の 움츠린 채 は過去の連体形 -ㄴ と 채 で「〜したまま」ですね。念のため。寒いときに肩をすくめて首を縮めて「お〜さむさむ」とかやりますよね。어깨를 움츠리다 はあの動作です。
今回取り上げた部分の前後に 백로 [白露] という言葉が出てきます。これは二十四節気のうちの一つで秋分の前にあたります。こんな文化的なところも詳しく解説できればいいのですが、そんな余裕もないので、簡単に紹介だけしておきます。
【日本語訳】
(以下はオリジナル訳です。多少ぎこちないところもありますが、原文を活かした訳文にしています。ぜひ翻訳版とも比較してみてください。)
チョン・デヒョンさんが朝食にトーストと牛乳を食べているとき、キム・ジヨンさんが突然ベランダへ出たかと思うと窓を開けた。日差しは十分まぶしいほどだったが、窓を開けるやいなや食卓まで冷気が伝わってきた。キム・ジヨンさんが肩をすくませたまま食卓へ戻ってきて、座りつつ(こう)言った。
◎ ちなみに1行目は英語版だと「ジヨンがベランダへ行って窓を開けたときに、デヒョンは朝食にトーストと牛乳を食べていた」と、主従を逆に訳していました。
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