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トルコ語のこと #2:韓国語に似てるとこ

言語学な人々 Annex Advent Calendar 2024」の21日目の記事として書いています(本館もよろしく)。昨日はyukihirose先生の「コーパスをつくったよ!UH-UT CSLAD ちいさい言語学者の冒険・第二言語編」でした。明日はKen Nakatani先生の記事です。

わたしの専門は韓国語ですが、ここ2年くらいトルコ語を勉強しています。元々韓国語や日本語に似ている言語たち、トルコ語、モンゴル語などとの対照研究がいつかできたらなぁと思って勉強を始めたのですが、今はそんなことより単純にトルコ語学習を楽しんでいます。

ここでは今までトルコ語を勉強してきて気づいた、トルコ語と韓国語の共通点を簡単にご紹介したいと思います。トルコ語と韓国語だけの共通点ではなく、他の言語との共通点という可能性も十分にありますが。


先行研究:連体形の使い分け

まずは先行研究を見ておきましょう。心の師匠、風間伸次郎先生の論文に「アルタイ諸言語の3グループ(チュルク、モンゴル、ツングース)、及び朝鮮語、日本語の文法は本当に似ているのか : 対照文法の試み」があります。この中で、トルコ語と韓国語だけの共通点として、修飾される名詞の意味役割によって、連体形の使い分けがある、と指摘されています。要は、修飾される名詞が主語か目的語かによって連体形を使い分ける(かなりざっくり)ということです。
(1) は主語である「子供」を修飾しています。「子供が本を読んだ」と戻せますね。(2) は目的語である「本」を修飾しており、「私が本を読んだ」と戻せます。そのため、連体形に使い分けが生じるということです。

(風間2003: 325)

このような連体形の使い方が中期朝鮮語にもあるというのです。(3) が主語名詞が修飾されている例、(4) が目的語名詞が修飾されている例です。中期朝鮮語には (4) のような -오/우- (-o/wu-) という形態素があり、連体修飾されるのが目的語の場合はこれが用いられるということです。

(風間2003: 325)

ただし、この -오/우- (-o/wu-) があっても主語名詞が修飾されることもありますし、その逆も然りです。つまり、-오/우- (-o/wu-) がなくても目的語名詞が修飾されることがあります。そのため、上記のような傾向がある、ぐらいに解釈しておくのがよいでしょう。

「飲み物」

「飲み物」はトルコ語で içecek、韓国語で 마실 것 (masi-l kes) あるいは漢字語で 음료 (umryo; [飲料]) と言います。トルコ語の iç-(飲む)という動詞に未来の連体形 -AcAk が付いています。韓国語の masi-l kes は masi-(飲む)という動詞に未来の連体形 -(u)l が付いたうえで kes(もの)が続きます。どちらの言語も未来の連体形(ここでは大胆にもこのように言ってしまいます)を使っている点が似ています。

「天気が暑い/寒い」

トルコ語で「天気」はhava、韓国語では날씨 (nalssi) です。日本語では「今日は暑い/寒い」とか言うだけでいいのですが、トルコ語と韓国語ではよく「天気が暑い/寒い」のように言います。

天候のようなものは主語をまったく言わないような言語も珍しくありません。英語ではとにかく主語が必要なので it という仮の主語を置くわけですね。

値段の与位格

「(いくら)で」というとき、日本語は場所や道具を表す「〜で」を使いますが、トルコ語と韓国語は「〜に、〜へ」にあたる格助詞を用いる点が共通しています。

(9) は大川 (2019: 77) より

2つの「白」と「黒」

トルコ語、韓国語は「白い」と「黒い」に2つ語があります。

【トルコ語】
白:beyaz / ak
黒:siyah / kara

後の ak, kara はそれぞれ「白い」「黒い」以外にも「清い、潔白だ」「暗い、悪い」のような比喩的な意味もあるらしいです。
韓国語の場合も状況は似ています。後の方はざっくり白系統、黒系統の色を表すとともに、比喩的にも用いられます。

【韓国語】
白:하얗- (hayah- ) / 희- (huy-)
黒:까맣- (kkamah-) / 검- (kem-)

ただ、韓国語の場合は「白」「黒」含め、基本の五色(赤青黄白黒)は2つずつ語を持ちます。
ちなみに、このような色彩を表す語をあまり持たない言語もあります。そのような言語でもまず持っているのが「白」と「黒」です(その次の候補は「赤」)。やはりそのような普遍的な色彩語だからこそ、トルコ語でも2つ語を持ち合わせているのでしょう。

「気づき」「思い出し」の過去形

日本語と同様なのですが、「(探し物をしていて)あっ!」と気づいたときや「あの人誰だっっけ?」と思い出すとき、日本語は過去の「〜た」を使います。これはトルコ語、韓国語も同様です。「気づき」の例を挙げておきましょう。

(11) は大川 (2019: 77) より

ただ、韓国語は「あった!」と気づいたときにぱっと発言するときには過去形が使えず、もう少し時間的なラグが必要です。


まだまだトルコ語講座は残っていますし、これから講座が終わってもトルコ語はじめチュルク諸語の勉強はしていくつもりなので、またなにか気づいたらどこかに書こうと思います。

参考文献

大川博 (2019)『ステップアップ トルコ語』白水社.

風間伸次郎 (2003) 「アルタイ諸言語の 3 グループ(チュルク、モンゴル、ツングース)及び朝鮮語、日本語の文法は本当に似ているのか―対照文法の試み」アレキサンダー・ボビン、長田俊樹 (共編) 『日本語系統論の現在』日文研叢書 31: 249-340. 国際日本文化研究センター.



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