自立ってなんだろう

患者さんのお話を聞いていると、悩んだりしていることをあまり話していない方が多いような印象を受けます。

理由を聞いてみると、「迷惑をかけるから」。

私も子どもの頃からよく「周りに迷惑をかけないように」と親に言われてきましたが、日本の社会で生活する上で、このように親や周りからこのように言われてきた方は多いのではないでしょうか。

でも、そもそも迷惑ってなんでしょうか?そもそも何が迷惑かなんて誰が決めるのでしょうか。

私はよく飛行機に乗りますが、身長が低いために、荷物入れに荷物をいれたり出したりするのがどうしてもできない時があります。そういう時は、「すみません、身長が低くて取れないので取っていただけますか?」と言うようにしています。できないことを頑張っても、自分がしんどいだけだと思うのです。

このような言葉を聞いたことがあります。

「自立とは、依存先を多く作ること」

全くその通りだと私は常々思っています。

一人で生きられる人はいません。

自分ができないことは誰かできる人にお願いをして、逆に誰かができないことをもし自分ができることがあるようであれば、その人に確認をした上でお手伝いする。

そういった関係の繰り返しが社会で生きるということなのではないかと私は思っています。

依存先について、SNSなどを利用した依存先ももちろん良いかと思いますが、直接人と関わることを必要とする依存先もなるべく多く持っておくのがいいのではないかと私は思っています。

ソーシャルワーカーは、行政や福祉などのフォーマル(公的な)社会資源と患者さんをお繋ぎすることはもちろんのこと、地域のサークルや近所などのインフォーマル(民間の)社会資源をどれだけ一緒に考えられるかだと思っています。そのためには、その方が今どういう暮らしをしていて、この先どういう暮らしをしたいのか、何が好きで嫌いなのか、どういう性格なのかなどの情報をもとにすることになります。

弊院では、初診の方は医師の診察の前に患者さん自身を知るためのお時間を取り、いろいろお話をお伺いしております。再診時も希望していただければ、さらにお話をお伺いすることも可能です。

「こんなこと話して診察に関係あるのか?」
とお思いになるかもしれませんが、今後も関わっていく中でとても重要なことだと考えています。

できない、しんどい、さみしい、そういった気持ちを誰もが言える社会が、本当の意味でインクルーシブ(多様性のある)社会なのではないかと思います。

とは言っても、なかなか普段からそのようなことはすぐには言えないと思いますが、ぜひクリニックにいらした時には遠慮なさらず心の中にある気持ちをお伝えいただきたいな、と思っています。

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