タンザナイト・ブルー
私は美しいものが好きだ。
美しいものに触れるとき、
私が美しいものになったように感じる。
今、私の心にある美しい思い出の致景に触れてみる。
その瞬間、蒼く輝きを放つタンザナイトの世界へと導かれていくのを全身で感じる。
とあるアフリカの島に、日本語教師として赴任していた頃の話。
希望に満ちた眼でみる空はどこまでも高く澄み渡り、海は燦然と水面を輝かせていた。日本から遠く離れたアフリカの島で、若かった私には恐れるものは何ひとつとしてなかった。
朝から夕方まで教壇に立ち、異国の生徒の前で嬉々として日本語を教える日々。生徒の弾けるような笑顔が思い出の中で眩しかった。
まぎれもなく、あの頃の私はタンザナイトの蒼い輝きを放つ日々の中にいて、美しく輝いていた。
今、蒼氓の中で一人呆然と立ち尽くしている。
美しく、蒼い輝きを放つタンザナイトにブルーが流れた。