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白の俳句道場風【第7回】
今日も白杯に応募してくれた句に焦点をあてていくよ!今日のゲストはたまちゃん!
たまごまるちゃんの俳句
秋の夜の赤灯籠や音を帯びて
二種類の月見バーガーふたり暮らし
閉鎖街随所に山や燕帰す
総評
さすが、たまちゃん。
たまちゃんの記事を読むと、どうやら、この三句すべてが実体験をベースに作られている。
俳句は「写生」の文学である、という。
正岡子規に始まったとされる近代俳句は、その後諸派に枝分かれしたことから、仔細については、さまざまな捉え方がなされるべきものだと了解したうえでなお、根っこにおいておきたい考えである。
その意味で、実体験に基づく俳句と言うのは、やはり力があるのだ。たまちゃんの句は大きな力を有していた。
また、提出された三句を一つ一つ見ていくと、その内容が多彩であることに気づく。
三句について、それぞれ一語で表現するならば、
「美」「日常」「社会」
だろうか。たまちゃんの持つ多面性、あらゆる方向に表出される、情熱に裏打ちされた表現力の豊かさが感じられた作品群だった。
秋の夜の赤灯籠や音を帯びて
秋の夜の赤灯籠によって真っ赤に照らされた参道に虫の音が響き、まるで灯籠が音を帯びているかのようだ、と詠む。
良い点
視覚と聴覚の対比、夜の闇と赤い灯籠の光の対比、また、虫の音を際立たせることで、反対に辺りの静寂を表す、とさすがのうまさ。
そこには紛れもない「美」が浮かびあがる。この風景を美しいと感じるたまごまるちゃんの美意識がそこにかいま見える。すてきです😏
アドバイス
実はこの俳句、季語が二つある。「秋の夜」「灯籠」である。虫の音も秋の季語なので、もしそう詠んでいたら季語が三つだった笑
どちらも秋の季語になる。
さて、実は俳句にはいくつか有段者の技があって😏その一つが、この季語を一つの句に二つ以上入れる季重なりという技だ。
あまりの難易度に素人では禁じ手になっているため、おいそれと手を出してはいけない笑
俳句も一つの表現活動だから、そこにタブーなど本来はないのだが、あまりに成功例がすくないので、禁じ手にしておくのが無難だ。
前の記事で季語は主役だと言ったが、ダブル主演でお送りするには17音は短すぎるのである。
そうなると、どちらかの季語を諦めなければならない。この句の場合、灯籠があかあかとともっている時間帯として夜は想像し得るので、俺だったら灯籠を残すが、これは好みでよい。
(五音の季語でない言葉)赤灯籠や音を帯びて
強いて言えば、音が、虫の音と読みとってもらうにはもうひと工夫いりそうだけど、ここは読み手の想像に任せちゃっていいかもね。
リリリリリ仕事帰りの赤灯籠 白月
二種類の月見バーガーふたり暮らし
季語は月見。言わずと知れた仲秋の季語である。が、ここはあえて、季語「月見バーガー」と言おう。今年は「濃厚とろーり月見」が参戦した。ノーマル月見バーガーと二種類買って、2人でお月見しながら談笑している姿が目に浮かぶ。
良い点
正直なところ、直しが特にないんだよな。
二種類と二人暮らしが響き合っていて美味いし、月見バーガーという新しい風物詩をさりげなく入れ込んでいる。
下五「二人暮らし」は、音数が6音の字余りであるが、個人的には、この字余りが効いているように思う。二人暮らしは今だけでなくこれからも続いていく。そんな余情が感じられるのだ。
仲の良い二人の姿を垣間見せてもらったようである。付句を返そう。
二種類の月見バーガーふたり暮らし
お互いの味くらべたりして 白月
閉鎖街随所に山や燕帰す
閉鎖街、このフレーズの持つパワーがすごい。昔は活気のあった場所も、今は人気もなく寂れるままに残されているイメージが浮かんでくる。同時に社会に対するメッセージ性も併せもつ、まさに経済効率の良い言葉選びだ。
良い点
閉鎖街と燕帰すという季語との取り合わせが絶妙。記事を見ると、通勤の道すがらにみた営巣の跡から発想を飛ばしているようだが、寂寥感、人の営みの儚さと時の移り変わりを感じさせる、素晴らしい発見だった。
杜甫の春望を思い出した。
国破れて山河あり 城春にして草木深し
アドバイス
中七の「随所に山や」について、俺は、かつてビルなどがあって遠くが見えなかったけれど、廃墟になってビル等が取り壊され、遠くの山がいたるところに遠望できるようになった、そんなふうに読んだ。
ところが、たまちゃんはどうやら燕の巣の下にある糞の山を詠んだっぽい😏
そうであれば、コメント欄で紫乃ちゃんも言っているが、もう糞山と詠むしかない笑
閉鎖街糞山残し燕帰す
これだと漢字が多くて重々しいので、
閉鎖街帰るつばめのくその山
つばめ去り糞山残る閉鎖街
どれも句の雰囲気が変わってくるので、こんな感じで、イメージに沿ったフレーズを見つけるといい。
日短や帰路によこたふ閉鎖街 白月
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