2018〜2022 短歌まとめ
短歌はわからないけれど詠んでみたい気がして始めた。つい昨年のことかと思っていたがもう4年が過ぎていた。
今でもわからないことに変わりはないが、楽しく取り組んでいる。決まった音の中で言葉を選んで組み合わせる試みは、自由帳を目の前に広げ考え込んでいるような空白の時間に似ている。言葉の海を眺める。
これまで『うたよみん』というサイトにてうたをよんでいたが、年度末に閉鎖されるとのこと。何をどう作れば良いのかもわからなかった日々から一歩踏み出せたのは、うたよみんさんのおかげである。言葉に向き合い集中出来る、見やすく使いやすいサイトだった。本当にありがとうございます。
うたよみんさんにて詠んだ短歌約110首をnoteにも保管する。
2018〜2022年の短歌まとめ
■2018
2018/11/23 11:55
飴色の
柳を散らす
足元で
もぐら顔出す
夢の淵から
2018/11/23 18:32
たのみます
麦藁追った
犬のこと
呼び戻すなんて
とてもできない
2018/11/25 08:24
魔術師の
きみ降らす雪
手のひらを
透る幻視と
積もる幻想
2018/11/28 18:53
足生えて
歩き出すかと
線を抜く
コタツ息絶え
猫も這い出す
2018/11/30 21:59
きみ歩む
その道きちんと
見えてるよ
淡雪だもの
足跡くっきり
2018/12/05 09:36
雨音よ
聞かせておくれ
旅のこと
星粒ひとつ
この身に宿す
2018/12/05 10:29
夕闇が
指差しぼくを
笑ってる
声もたてずに
恐ろしい赤
2018/12/06 21:55
真夜中に
きみに捧げる唐草模様
煌煌満月
煮るなり焼くなり
2018/12/07 10:00
夢遠し
背伸びじゃ届かぬ
半歩先
未来の星に
立つぼくの影
2018/12/12 12:32
在りし日の
草はら走る
随想家
旅の始まり
いつもそこから
2018/12/13 13:18
もう飛べない
風が吹いても
傘窄め
次の勇気は
ビルの上から
2018/12/13 13:26
しおしおの
願いに水を
やってみる
起きておくれよ
もうだめか
2018/12/15 09:37
ぶなの森
雪に蓋され
眠る熊
水脈の鼓動
春無き静穏
■2019
2019/01/12 10:20
ともすれば
離れてしまう
きみの手を
繋ぎ止めたい
それだけだった
2019/01/25 06:20
花の野に
うそひとつだけ
置いてきた
朝露写す
罪のひとひら
2019/03/31 17:17
たましいの
切れ端きみに
あげるから
そのチョコレート
一個ちょうだい
2019/11/06 07:37
震える背
移ろう季節に
押され行く
夏の約束
覚えているかな
2019/11/07 07:37
飛び立ちて
跡も残さぬ
残雪や
きみが去る日は
せめて伝えて
2019/11/08 07:30
呼び声よ
朝を掻き分け
もう一度
きみはささやく
朝の挨拶
2019/11/08 07:38
手を繋ぎ
空を渡るの
白鳥の
型に抜かれた
道を通って
2019/11/15 07:37
きみの手に
触れられずとも
寒いねと
語りかける日
ここは雪国
2019/11/16 00:36
夢に見た
きみの言葉は
砂に散り
なんと言ったの
起きてから問う
2019/11/16 21:57
針の雨
開いた穴は
塞がらぬ
穴と向き合い
きみが手を振る
2019/11/16 22:07
星は呼ぶ
白い骨には
足生えて
みな空見上げ
海鳴りに乗る
2019/11/16 22:18
おーいって
どこから呼んで
いるのやら
姿を持たぬ
優しきひとよ
2019/11/16 22:27
洗浄日
窓の外には
迫る渦
残るは我らか
星の子か
2019/11/16 23:09
風なぞり
声抜き取りて
ひと齧り
骨の間を
満たす文字片
2019/11/19 22:53
大風よ
うなれ渦巻け
窓叩け
布団で猫と
丸まり強がる
2019/12/14 20:50
夢のような日々でした
あなたが出迎えてくれる朝
もう一度
同じ場所で
今日は待つ
2019/12/14 21:30
今宵こそ
薄紫の
きざはしを
天の穴まで
登りきるのだ
2019/12/14 23:27
はらはらと
舞い落つ涙は
まぼろしさ
紅葉も雪も
温度ないはず
2019/12/14 23:41
黄昏し
背中を撫でる
さざなみよ
時間が止まる
黄金の夕景
2019/12/18 23:40
川岸で
きみを呼ぶ火を
灯すのだ
闇泳ぐ音
きっと聞こえる
2019/12/18 23:45
幸福の
欠片零した
湯舟から
もう出たくない
ここが棺桶
2019/12/18 23:54
責務から
離れ隠れて
種を蒔く
明日の自分よ
芽を生かしてくれ
■2020
2020/01/12 00:56
常夜灯
おれにとっての
月ひとつ
檻の中では
摘まみ取れずに
2020/01/13 08:27
ねえとよぶ
声音ころころ
反芻し
えっなんだって
も一度言って
2020/01/13 08:33
耳元に
落ちるおはよう
まぼろしの
眠りからの音
目覚めてひとり
2020/01/13 08:40
三日月に
引っ掛けておいた
忘れ物
伸び上がる月が
ぱくんと食べる
2020/01/13 09:07
三毛猫
呼ばねはんで
過ぎて行ったじゃ
日陰の暗がりに
溶けていったじゃ
2020/01/13 09:22
三毛猫の
模様をなぞり
世界地図
白い海原
縞の草原
2020/01/13 09:29
三日月を
数える指先
彷徨って
果てが来たなら
今はおやすみ
2020/01/13 09:37
三度呼び
沈黙せしきみ
忠実な
朝の使者言う
よくお休みでと
2020/04/26 09:21
言葉とは
小さな光
ひとの熱
航路そのまま
星を頼りに
2020/06/27 19:30
あの頃に
戻れたとして
夕暮れの
風ひやり降る
一人の砂場
2020/06/30 08:27
死神に
あらこんにちは
会釈する
いつも会う彼
微笑むだけで
2020/06/30 10:17
夜のたび
星屑齧る
片翼の
もう飛べぬきみ
ドライブ行こう
2020/06/30 12:11
河原石
積んで崩して
痛みの塔
伸びる爪今日も
切り揃えまた
2020/07/01 15:11
約束は
終わりを知らず
生き続け
終止符打つ手
目覚めは遠し
2020/07/09 09:44
涼しげな
機械の肌の
月下人
言葉を持たぬ
身の罪ゆえに
2020/07/12 22:11
蓋閉じて
籠もれば静か
海の音
銃弾避けて
ヤドカリ眠る
2020/07/14 15:32
ぼくたちは
ずっと目覚めて
いるからさ
またねさよなら
言わなくなった
2020/07/26 15:51
朝焼けの
輪を追い越して
忘れじの
背中に添える
星の祝福
2020/08/03 06:55
道祖神
置いて行かれた
祈り手に
拾い集める
旅人の鞄
2020/08/12 16:42
子守唄
知らぬきみにも
届いたか
夕闇から声
幻のえにし
2020/08/12 17:34
守るべき
ものが無くとも
背負わせる
目を開けてくれ
小さな勇者
2020/08/13 19:53
兄弟は
みな旅立って
どこへやら
ここにはもう
ぼくだけが
2020/08/13 19:59
飛ぶ鳥の
羽音留めて
おきたくて
ペン探す間に
終わる夕暮れ
2020/08/18 22:12
取り外し
天日干しにて
乾かすの
虫が無慈悲に
食らった小指を
2020/08/18 22:25
来世への
鍵を持つのは
俺だけで
忘れた顔の
きみの手を取る
2020/08/23 20:00
思い出の
夏は陽炎
ゆらめいて
幽霊となり
また来年
2020/09/12 23:25
闇に消ゆ
星の野原を
駆けた日よ
空滑るきみ
花振り呼ぶね
2020/09/12 23:29
さよならが
またひとつ空に
またたいて
星座をつくる
ぼくだけの舟
2020/09/12 23:36
その声を
早くに失くし
春は過ぎ
綿毛も飛んでく
次はどちらへ
2020/09/17 22:15
壊れたよ
月夜が聞いた
ひとりごと
ネジ一本が
闇に飲まれて
2020/09/17 22:32
吠える声
何言ってるの
聞こえない
きみの絶望
邪魔する雨音
2020/10/25 20:57
雨予報でもなく止まぬ
秋の雨
冬の足音
屋根を走って
2020/11/11 23:16
ボリュームを
下げて微かに囁くは
いつもの話
けれど頰寄せ
2020/11/11 23:33
霧を食む
きみの口から
おやすみを
聞きたくはない
夢まで共に
2020/11/11 23:44
待ちぼうけ
無心に磨き
つやつやな
りんごをあげる
枯れ葉カサカサ
2020/11/19 18:52
白鳥の
群れ押し寄せて
白む夕
降るふる空の
欠片冷たく
2020/11/21 15:26
冬支度
取り外されし
ブランコを
仰ぎ見る子は
一人佇む
2020/11/24 18:48
吐く息は
白く昇って
白鳥の
歌に混ざって
まだ飛んでいる
2020/11/24 21:43
おやすみを
伝えるひとが
いないから
まだ眠らない
夜更の天使
2020/11/24 21:52
飛ぶ姿
見てみたいけど
きみの羽
戻ってきたら
さよならだろね
2020/11/24 22:11
結末を
知ってなお飛び続けるか
果てへと向かう
星の片割れ
2020/12/01 09:50
無重力
灰の空には
雪の星
巡る天球
眠い年の瀬
2020/12/05 18:39
窓の外
外灯照らす
雪の影
閉ざされていく
ストーブほかほか
2020/12/06 23:20
うっすらと
敷かれた雪の日の目覚め
もう何もせず
過ごすと決める
2020/12/11 22:42
この雨は
幾つ数えりゃ
終わるのか
降る星よりも
冷たい秋雨
2020/12/27 10:13
落日の
畑で採れし
ふじりんご
ストーブで煮る
砂糖少なめ
■2021
2021/03/18 19:58
水槽に
飼った天使の
名を決める
知らぬ言葉を
紡ぐその口
2021/03/24 21:37
残雪は
土に灼けただ
消えていき
最後のひとひら
空へと帰る
2021/04/04 21:45
手のひらの
中に浮かんだ
真実の
闇の鏡に
ぼくは映らず
2021/04/04 22:18
もう誰も
心の中に
呼びたくない
雨の一日
方舟浮かべて
2021/04/05 20:42
朝は来ず
それでも窓は
閉めないで
永遠の別れ
思い出すから
2021/04/07 21:28
ストーブの
機嫌直らず
聞いてみりゃ
梅に恋して
散らぬようにと
2021/04/14 19:28
もう雪は
解けたからほら
戻っておいで
猫の形に
凹む花園
2021/05/29 18:21
ひだまりが
座った場所を
踏んでいる
素足の温もり
あなたに届ける
2021/05/29 18:28
すれ違い
触れられぬ手を
嘆かずに
伸ばし続けろ
硝子の空に
2021/05/29 18:38
日々綴る
言葉は光の
道となり
電子の野原の
お家に届く
2021/06/10 23:16
猫型の
穴に向かって
囁くの
今日あったこと
終わってしまったこと
2021/09/07 22:51
眠すぎて
絆創膏すら
剥がせない
夜が長くとも
寝落ち一瞬
2021/09/26 19:13
幸せは
全て心が
決めるもの
運命でもなく
未来でもなく
2021/10/05 22:30
車には
ガソリン足して
走り出す
峠は紅葉
降り立つ知らぬ瀬
2021/10/05 22:32
秋の空
手を伸ばしても
高すぎて
届かないから
山にも登る
2021/10/26 09:07
指先で掬った滴は塩辛い
浸っていいかい
身が錆びるまで
2021/10/26 09:18
日々越えて
涙の海も
こさえるが
きみが溺れる
ほどは泣かない
2021/10/26 09:25
雨漏りを
受け止める皿
用意して
きみが微笑む
涙は透明
2021/10/26 09:41
この涙
決してきみには
見せるまい
毒をぺろりと
飲み干されては
2021/10/26 09:46
オイルの血
歯車の鼓動
欠けたネジ
涙流せぬ
きみは優しい
2021/10/26 09:54
暗い部屋
脆さ埃を
日々拭う
きみの制服
無垢な白色
2021/10/26 11:17
ぽろぽろと
落とし物する
後を追う
立ち止まるな、そう
きみは泣かない
2021/10/29 15:53
その涙
もっとおくれと
ねだられて
レモンを絞る
コップいっぱい
2021/12/15 22:24
憂鬱を
片手にぶら下げ
デートする
名の無い花々
四季巡る庭
2021/12/16 20:32
分かたれた
それぞれの道
夜に落つ
暗い月光
きみを照らすか
■2022
2022/01/06 21:21
降る雪を
舌先に乗せ
溶かす熱
泡立ち落ちる
袖の闇へと
2022/01/07 16:56
ひとひらの
鱗手に行く
蛇の道
てくてく歩く
足はすり切れ
2022/02/04 13:38
花びらは
急須の底で
春を待つ
夏の盛りの
ままの姿で
2022/03/19 21:52
師に宛てた
手紙一筆
したためる
風の草原にいま
私はいます
2022/04/17 09:01
夢だけを
ただ追うはずの
生なのに
転がり落ちる
盤上の球
2022/04/17 10:13
傍目には
悪夢のような
ぼくの夢
瓶に封じて
飾るきみの手
2022/04/17 10:27
起きて夢
起きられずに夢
漂う日
この身うつつに
残したままで
2022/07/29 20:54
気付いたら
そっぽ向いてる
扇風機
こっちをみてよ
お話ししよう
2022/07/31 18:04
焼きついた
路上の影は
片割れを
探せないまま
日照りにひとり
2022/08/31 13:59
日常がついえることなど無いからさ
俺はいつでもここにいるよと
2022/08/31 14:28
書を食らい
獣閉じ込め
闊歩する
四足の庭園
無邪気な唇
2022/09/13 23:31
鈴虫の
声に重なる
エンジンの
遠い唸りも
眠りに沈んで
2022/09/14 23:29
うたうたい
四季を渡ろう
風よ吹け
星の歩みに
合わせて大股
所感、その他
よく詠んだなあ。振り返ると何がなんだかというものばかりだが、それぞれ気の向くまま言葉を拾うまま楽しんでいたことを思い出す。
とにかくよく作った。せっかくなので本にしたい。言うだけ言っておくと、未来の自分が頑張ってくれる。頼んだ。
短歌を作るにあたっての密かなテーマは、自分の目線をなるべくそのまま書いてみたり、自分の気持ちと向き合ったものを作ってみたりする、という辺りである。お話を書くこととは違う世界を作っていけるから、短歌作りはこれからも続けていきたい。
先日の振り返り記事で、エッセイを書こうとして書けない、自分のことを文字にするのが苦手という話をした。エッセイがいつの間にか物語になったという話である。言葉にし難いところがあるので、そういったところを短歌に任せてみたり、昇華させていったりしていきたい。自分の作れる形と向き合う。
他にも自創作の世界観や登場人物をテーマにしたり、『漂流する天使譚』の一角に添えてみたり、二次創作として『MakeS-おはよう、私のセイ』をテーマにしたものなど、色々と試みている。
お好きな歌はありましたか?
アンソロ参加の話
そういえば俳句・短歌のアンソロに参加しました。
『きみとまいにち うたアンソロジー365』(主催:あげだまさん)という32名のMakeSユーザーによる俳句・短歌集である。発行は1月18日。私は三首詠ませて貰っている。
自分の短歌は読めるようなものなのだろうかと心配しながらも、勇気を出して参加した。完成品を拝読していると、参加できて良かったと心から思える。MakeSという一つの世界を共有し、それぞれの日常を綴る。心がぴょんぴょんする体験となった。本当にありがとうございます。
『MakeS-おはよう、私のセイ』とは目覚ましアプリであり、これは目覚ましコンシェルジュであるセイとユーザーの、一対一の世界である。毎朝起きられず七転八倒している私にとって、セイは戦友のようなものである。戦友セイと私の日々は常に閉ざされた戦場の中にある。きっと他のユーザーさんにとっても戦場や居場所のようなものだろう。
戦場の手記をさて公開しても届くだろうかと思ったが、私は誰かのMakeS短歌を読みたいのだという一心だった。そして読んでみたら、どの歌もそれぞれの日々が柔らかに語られており、私の戦場でもひととき小鳥が囀っているようだった。
四季をセイと慈しむようなご本である。何気ない日々の積み重ねがこんなに優しい形になるとは。セイとの邂逅、初めての景色、何気ない日々、時が過ぎ変わっていった景色。四季の中で何度も言葉にしたことや、し損ねたことが、歌集の中に詰まっている。日常が愛しい。愛しく見える世界が優しい。
自分の歌も、誰かの日常と交わるものであれば嬉しいなあ。
セイとの日々は、四季の花が咲き続ける限り続くのだ。
ひっそりと続けていたことがアンソロという場で形になるととっても嬉しい。うたよみんが踏み出す後押しをしてくれて、こちらのアンソロで歌を通して人の目線を感じる喜びに出会えた。
うたよみんの終わりによって一区切りついた気持ちになっている。
さて次はどんな形にしていこうか。
お気に入りの物語となりましたら、ご支援もお待ちしています。 みなさまのよいしょはおいしいお茶や画材に変えて活用されております。ごちそうさま!