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合同誌『北と南の夏と冬』振り返り
氷砂糖さんとの一次創作小説合同誌『北と南の夏と冬』が11月に発行されました。北と南の住む著者二人による夏と冬の物語です。
ネットプリント配信期間は現在のところ配信は終了しております。読んでくださった方々、ありがとうございました。
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合同誌発行までの経緯
氷砂糖さんとは長いこと交流がありまして、ちょうどタイミングが合ったようで合同本を作りましょうということになりました。
本の著者二人はけっこう南とけっこう北の方に住んでいます。初めは漠然と夏は暑く冬は寒いくらいの解像度でしたが、月日が経つごとに違う点が多いことが見えてきました。あたりまえの季節が異国の話のように聞こえます。距離の遠さから発生した企画です。
物語という形で夏と冬を綴りまして、本当の異国が出来上がりました。不思議だなあという気持ちが詰まっております。
日本は南北に長いので、環境も文化もだいぶ違います。当人にとっては日常でも見ている方が感動していたりします。植物の分布も大きく異なり、北限・南限という言葉を肌で感じました。
桜前線などもわかりやすいです。南で花が咲いたという知らせを雪の中で聞いたりします。また、私は彼岸花や金木犀を物語の中で知ったものの実物を見たことがなく、さぞ幻想的な花なのだろうと咲き乱れる風景に憧れていました。そうしたら金木犀や彼岸花が街のそこらへんに当たり前のようにわんさか生えているというお話が聞こえてきます。なんということでしょう。空想のものに近い感覚で見ていたものが生活と地続きだったという衝撃。
この衝撃はきっと雪に馴染みがない方が雪景色を想う気持ちに似ているはずです。雪国に住んでいるので、私からは雪が溢れる日常をお届けできます。
海を見たことがない人物の心情を書きたいけれども私を見て生きる私には書くことが出来ないだろうと思っていましたが、見たことがないものを目にした気持ちは同じでしょう。
そんな日常の中での驚きがあって季節を意識するようになりました。
9月に「北と南の夏と冬で作りましょう」ということで始まり、11月に発行となりました。
夏と冬の話ができるまで
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『夏の話』
それは人の形をしていたが、熊や猿だって人に見えることがある。目は雑なものだ。光が眩しい。太陽は天頂にある。アスファルトが熱を放つ。葉の隙間から見え隠れするのは間違いなく人で安心するも、顔に深く陰がかかっている。音が吸い込まれる。蝉が音を立てて飛び立ち、ぎょっとする。
『冬の話』
そうして俺は今日のところ会社に行くのを諦めた。空は分厚い雲に覆われている。日中だというのに部屋は暗い。天気予報はずっと雪。
「おまえはなんだ」
見回しても誰もいないから、暗い部屋に向かって聞いた。部屋の冷気がヒヤっと笑った。"
宣伝用画像にて冒頭を紹介しています。それぞれ約2000字の物語。
「地元の景色は異界になり得る」という気付きから、書こう書こうと思っていた現代ものに挑むことに。
氷砂糖さんが童話で書くならばとびきりかわいく優しく棘もある物語が来るかもしれない、現代ファンタジーならば都市と煙草の匂いがしそうなハードボイルドなのが来るかもしれないと予想しました。
せっかくなので雰囲気が遠すぎず近すぎないものにしようという気持ちで街を舞台に。街に渦巻く気だるさや諦念を書きたかったのでそこらへんも取り込みつつ形にしました。行き詰まってその先どこへ、というテーマでこの先もう少し書いてみたいところです。内容としては北と南の違いが際立つようなお話にしようという意気込みはありました。素直に自分の見た景色を書きました。
共通テーマとして設定した「『氷』を文章中に含める」「『花』を作中に登場させる」を組み込んでいます。作中どんな形で登場するか、南北で比べてみてください。良い感じに違う色合いの世界が広がっております。
表紙作成
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本文の編集周りをまるっと氷砂糖さんにお任せし、こちらは表紙とロゴを担当させてもらいました。
表紙画像は月の満ち欠け・花がテーマ。円形を配置して月と花びらを表現。夏と冬の季節の移り変わり、時間の経過をイメージしています。
別案紹介
①図での構成
夏の眩しい空と花畑/冬の曇り空と雪を表現。夏と冬、北と南と二分されていたり、お題のもう一つ「氷」の硬質な輝きのイメージから、画面とタイトル文字を白黒で分割。タイトル背景もなんとなく日本列島を感じてもらいたい斜めライン。
南北・夏冬の対極である部分が直感的にわかるかもしれない図。
②絵的な構成
上記①を絵的に表現。また、こおりさんの冬の作品に登場した「桜に雪」の景色。視覚的に「花」を伝えられるのでお題を印象付ける狙い。
③線での構成
北・南・夏・冬と四種類の要素を四分割で表現しています。夏の鋭い日差しや冬の輝きなどキラキラしている感じです。いろいろメモを書き込んでいます。
ロゴ作成
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日本列島の形や、南北・夏冬の距離の遠さを表現。花の立ち姿もイメージしています。
別案紹介
1.花や植物をイメージさせる有機的なロゴ。童話らしい柔らかさ、のびやかさを出す場合に良さそう。
2.南北・夏冬の文字に焦点をあてたロゴ。四文字それぞれ力がある単語なので、目を引きそうな配置に。
出来上がり
氷砂糖さんの柔らかな童話世界と私の不思議世界が共存しております。夏と冬という題材で温度がこれほど違うとは。絵に滲み出る湿度みたいなものがあるという話はよく聞きます。文章にも気候が現れるんだなあ。南と北、夏と冬を旅した気分になれるご機嫌な本となりました。
氷砂糖さんのお話は童話ですがSF要素もあり世界設定が熱いです。SF童話ってかっこいいな! そして文体が整っているので安心して読めます。基礎がしっかりした建物みたいな文章ですので、私が何を書いても受け止めてくれたことでしょう。こちらにバトンを繋げてくれているような部分があり感嘆。合同誌経験が豊富なので投球の力加減がほどよいのかもしれません。お互い相手が何を書くか知らない状態で始まりましたが、私の書くものはもしや見透かされていたなという気がします。私も予想しながらの投球でしたが見事に受け取ってもらったというところです。
完成までの期間が約2ヶ月で、私としては短時間で仕上がった方です。達成感がはんぱないです。こんなスピード感で書き続けたら楽しいしきちんと本が出るのだなあと、見たことのない世界を見られました。
南北に長い日本を感じてください。
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