小山内 裕

児童書、絵本、純文学を読み散らかし、物語を書き散らかしています。小さい子へむけた物語から、大人の方へのお話まで。創作アカウント。あなたの暇つぶしにお役立ちできるなら、それほど嬉しいことはありません。

小山内 裕

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マガジン

  • 【小説】『星をたどるように』

    『星をたどるように』まとめておいてあります。 「七星の場合」はおそらく完了。 他の子の場合も、少しずつ追記できればと思っております。

  • 【2000字小説】

    だいたい2000字の、一瞬で読めるお話、おいてあります。「どんなの書くんだよ?」と作風をご覧になりたい方、暇つぶしをしてくださる方、まあ覗いてやるかという心優しい方は、こちらのマガジンからどうぞ。

  • 【小説】『うまれた』

    【小説】『うまれた』まとめてあります。完結済み。 28歳で待望の女の子、藍奈(あいな)を出産した波津子(はつこ)は、初めての育児で疲労困憊している。  藍奈はよく泣く子で、眠るときとおっぱいを飲むとき以外、いつも泣いているような日もあった。藍奈の泣き声は、次第に波津子を追いつめていき……。

  • 【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』

    【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』のまとめです。完結済み。 アサとユキはともに高校一年生。もうじき、幼馴染の二人にとって、高校生になって初めての夏休みがやってくる。アサにはユキしかいなくて、ユキにはアサしかいない。お互い唯一無二の存在だったはずなのに、時間は少しずつ二人の歯車を狂わせていき……。 夏休み、二人は豊駕島で最高の夏を過ごせるのか?無敵なアサユキコンビは行く末は?

  • 【小説】『さみしがりやの星たちに』

    中学生の女の子、深月と沙耶は、学校に忍び込んで天体観測をする計画を秘密裏に進めるが……。

最近の記事

『大事なものは』2000字 小説

じっとりと生ぬるい風がおでこと前髪の隙間を抜ける。秋なのに蒸し暑い。そんな曇り空の下、私は婚約者、陸のマンションの前にいる。合鍵を握ったまま、今にも降り出しそうな湿った空気の中で立っていた。  遠距離恋愛になって三年。陸は今ごろ何も知らず、職場で働いているはずだ。何事もなく今夜も21時を過ぎたころ、私に電話をくれるだろう。昨日は電話できずごめんと謝り、いつものように毒にも薬にもならないような話をするはずだ。  月に一度私に会いに来てくれるところも、ほぼ毎夜電話をくれるところも

    • 【2000字小説】『良い烏天狗』

       薫が今日買った指輪がないことに気づいたのは、ふてくされて布団に入ったときだ。  ライターのパパの仕事に付き合い日中は面白くもない観光地を回った。そのとき偶然入った土産屋さんで見つけた、色が変わる指輪。身に着けると、真ん中の丸い宝石の部分が、青緑をベースに、紫や青へとじわじわと変化した。不思議で、面白くて「指輪なんて女の子のものだ」というパパの反対を押し切り買ってもらった。  失くしたってバレたら、パパに怒られる。  慌てて薫は指輪がいつまで手元にあったか、思い出す。 「あ、

      • 【小説】『星をたどるように』(七星の場合)第5話最終話

         ひたすら黙って早足で歩き続けていると、頭の中が夜風と一緒に冷やされていった。それと同時に、自分がみじめでしょうがなくなる。 通りかかった公園の中に入り、ベンチに座りこんだ。ほう、とため息をつくと一緒に涙が転がり落ちた。 「……なさけな」  涙を追いかけるように言葉がこぼれた。灯理を、不登校で部屋でくすぶっている可哀想なお姉ちゃんだと思っていた。詩緒を、友だちがいないオタクだと思っていた。 あたしはマシだし、よほどうまくやっていると、思っていた。 「……はあ」  ぎゅっと両手

        • 【小説】『星をたどるように』(七星の場合)第4話

           夜、モヤモヤとする気持ちを振り払えないままベッドでごろごろしていると、突然家のインターフォンが鳴った。部屋の窓からちらっと様子をうかがうと、詩緒だった。  はっとしてカーテンの影に隠れた。二階にあがってきたママがノックしたのは灯理の部屋だった。  灯理とママが階段を降りた音がした。ドアに耳をぴったりと貼り付けて全神経を集中するが、灯理と詩緒がなんて言葉を交わしたのか、聞こえない。その後、ガサガサという音をさせながら灯理が二階にのぼってきた。 「ななちゃん、今いい?」 「え⁉

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        • 【小説】『星をたどるように』
          5本
        • 【2000字小説】
          9本
        • 【小説】『うまれた』
          11本
        • 【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』
          30本
        • 【小説】『さみしがりやの星たちに』
          4本

        記事

          【小説】『星をたどるように(七星の場合)』第3話

           玄関の前で何度も深呼吸をして、呼吸を整えた。詩緒のびっくりした顔を頭の奥に押し込み、蓋をする。気持ちが落ち着いてから、玄関の扉をあけた。パパの靴が揃えてある。台所からカレーの匂いがしている。 「……ただいま」  リビングのドアをあけると、パパがテーブルの上を片付け、食事のセッティングをしていた。 「お、七星おかえり。ママたちまだなんだ。先に食べるよな?」  黙ってうなずき、洗面所にいく。と、手を洗っているところでちょうと玄関ドアががちゃっと開く音がした。 「ただいまぁ」  

          【小説】『星をたどるように(七星の場合)』第3話

          【2000字小説】【童話】『凛のとっておきの浴衣』

           どうみても、こっちのゆかたのほうが、かわいい。   凛はさっきから難しい顔で浴衣を見比べていた。右にあるのは白をベースとした浴衣。朱や黄の金魚が涼しげに泳ぎ、紺色の線を残して白い水の中をゆらりと漂っている。  左にあるのが、ピンクをベースとした浴衣。白や赤、黄色やオレンジの撫子や石楠花が咲き乱れ、銀色の粒が散って花を輝かせている。花の隙間にはこっそり猫が描かれ、左右の襟と袖口には白いレースがたっぷりだ。 「ぜったい、おねえちゃんのゆかたのほうがかわいい」  凛は頬をふくらま

          【2000字小説】【童話】『凛のとっておきの浴衣』

          【2000字小説】『琥珀の在りか』

           だから戻りたくなかったんだよ。  俺がぐっとラムネをあおると、ビー玉がカランと頭の悪そうな音をだした。  さっきまで俺の周りにいた同級生はみな、盆踊りの輪に入っている。俺は簡易椅子で、音楽に合わせて笑いながら踊る同級生たちを眺める。  蛾、みたいだな。  暗闇の中、明るさに引き寄せられる蛾にそっくりだと思ったら、余計に自分が異物そのものに感じられた。  そろそろ顔を見せろ、と両親のしつこさに負けて地元に顔だしたが、ここは相変わらず息苦しい、大嫌いな場所だ。  同級生に進路に

          【2000字小説】『琥珀の在りか』

          【小説】『星をたどるように(七星の場合)』第2話

          「へえ! じゃ、ななちゃんは夏合宿にこないし、9月からから新体操やめるんだね」  新体操レッスン後、詩緒はいつもの定位置(幼稚園横にあるコンビニの、イートインスペースの一番壁側)に座り、カフェオレをコクっと飲み、チョコボールをガラガラと口に流し込んだ。(詩緒は今、推しのアニメキャラのグッズを手に入れるためにチョコボールばかり購入している。)あたしはひたすらサイダーを飲んでいた。 「そんな簡単に……」  あたしはうらめしそうに詩緒を見る。詩緒は推しのヘアアクセをつけた髪の毛を片

          【小説】『星をたどるように(七星の場合)』第2話

          【小説】『星をたどるように(七星の場合)』第1話

           青天の霹靂という言葉は知っていた。でもまさか、本当に真っ青な空が広がる日に、この言葉にぴったり当てはまる出来事が自分の身に起こるとは、思ってなかった。 今日は終業式の前日。ときめきであたしの心はいっぱいだった。小学校においてある重たい荷物は何日もかけて少しずつ持ち帰った。教室の中にある自分のものが減れば減るほど、心まで軽くなった。相変わらず、クラスのみんなは誰も用事がない限りあたしに話しかけないし、あたしは中休みも昼休みもずっと図書室で本を読んで過ごしていたけれど、へっちゃ

          【小説】『星をたどるように(七星の場合)』第1話

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第30話

           アサは痛む下駄で足を必死に無視して丘を下っていた。どこをどう走ったのかもうよく覚えてない。ただ、浴衣じゃ走りにくくて、足の痛みはどんどんまして、胸も息が続かないほど苦しくて、それでも止まってしまうわけにはいかなかったのを覚えている。  もっと遠くに行かないと。もっとユキから離れないと。どうしてユキにはアサの他にも横にいてくれる人がいるって考えなかったんだろう。ユキはアサを必要としてくれているなんて、思い上がりだったのかも。  そんなアサの足を止まらせたのは花火だった。足元を

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第30話

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第29話

           暗くてここがちゃんとした道なのかもよく分からない。ただ、ユキはひたすら丘の上を目指して足を止めないで進んでいた。たくさんの木々の梢がユキの頭上を覆っていて、さっきまで見えていた月の居場所も、どこだかわからなくなっていた。ひたすらに暗い道を下駄で痛い足を引きずりながら進んでいく。  足場が見えないから、手探りで前に進む。両手を前にだし、幹を見つけたらそこをつかみ、足を一歩踏み出す……ということを繰り返していくと、何とか頂上までたどりつくことができた。  ここの丘は、島の人には

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第29話

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第28話

           諒とアサは誰もいない公園にいた。静寂した公園はひっそりと虫の鳴き声だけ響かせており、遠くからお祭り特有の音が響いてくるだけだ。お祭り特有の人のざわめきの声がまるで別世界から聞こえてきているみたいだった。ここだけ、魔法のようにお祭りの雰囲気を感じさせない。  アサはブランコに座りながらリンゴ飴をかじった。しゃりっと音がなる。リンゴはだいぶ古いようで瑞々しいとはとても言えなかったが、それでも甘いベッコウ飴の味がして、アサは満足だった。ブランコをゆっくり揺らしながら、リンゴ飴をか

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第28話

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第27話

           人通りが多いところから離れて、ユキと颯は神社にいた。神社の中は露店こそ多く並ぶが、それゆえに人も集まりため、座れるような簡易なイスとテーブルが準備されている。そこに一人でぼんやりと座りながら、ユキはため息をついた。  あたしとしたことが。いろいろ考えているのはあたしだけじゃないって思いついてもよかったのに。  諒がアサの背に追いついて、それを自信に変えようとしていたことも知っていた。アサの今日の浴衣姿に、諒がどきどきしていたこともわかっていた。そして、直樹が咲姫に今日なんら

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第27話

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第26話

           諒の後を歩きながら、いろいろと目移りしてしまう。右手にはピンクの色をしたわたあめ。左手には紅く輝くリンゴ飴を持って、手首には金魚がぶら下がっている。赤いデメキンだ。ついさっき、一緒にいたはずのユキがいなくなっていたから、慌てて諒に言ったのだが、諒が言うには後で待ち合わせをしたから大丈夫らしい。諒はどんどん先に歩いていってしまうから、たまに見失いそうになる。 「あっ! あー、諒! ストップストップ!」   どうしても入りたい露店を見つけて、先を行っている諒を呼び止めた。諒は

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第26話

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第25話

           赤いちょうちんがほのかに照らし、たくさんの露店がひしめき合う。右手をお母さん、左手をお父さんに握ってもらい、両親の間で笑いながら楽しそうに歩いている子どももいれば、小学生くらいの男の子たちが、くじ引きでゲームを当てようと真剣に見定めている。お好み焼きや焼きそば、たこ焼きのソースの匂いが空気をほんのりと包み、露店では威勢のいいおじさんたちが、大声で客引きをしている。一歩前へ出るごとに自分の足元は人の多さで見えなくなる。 「ねえ、作戦って何ー?」  みんなでたこ焼きや焼きそばを

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第25話

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第24話

          「あーっ無理! もう無理!」 「あーあ。だからお昼食べ過ぎるなって言ったじゃない」 「そんな今さら言ってもさあ……あーっちょっと本当に無理! 良子おばさんっ」  ユキから冷ややかな視線を投げかけられながら、必死で近くの柱にしがみついた。手でどこか握ってないと、この苦しさにとてもじゃないけれど耐えられない。良子さんはものすごい力で帯を締め付けている。お昼に食べた、たらこのおにぎりでしっかり膨らんだアサのお腹をこれでもかというぐらい締め付け、圧迫する。今は苦しいだけだけれど、その

          【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第24話