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私のお気に入り#1〜7

「私のお気に入り」をテーマに某所で書いてる文章。エッセイ風です。


1

小学校の図書室が好きだった。

4階南向き。学校内で1番日当たりが良い場所。
カーペット敷きの床に、防音用の穿孔ボードが張り巡らされた壁。ドアも分厚くて重くて、他の教室とは違う特別感があった。

いつも静かで、しん…としていて、少し甘ったるいような古い紙のにおいがしていて。
空中を舞うほこりが陽の光を反射して、キラキラ光っていた光景を、今でもよく覚えている。

小学6年生からいじめにあっていた私は、毎日昼休み図書室に通っていた。図書室ならひとりぼっちで居ても浮かないからだ。それに本の世界に没頭して、つらいことを考えなくて済む。

いろんな本を読んだ。ハリー・ポッターにダレン・シャン、サークル・オブ・マジック、星新一のショートショート。私を本好きにしてくれたのも、あの図書室だ。

小学校は早く卒業したいと思っていたけど、図書室とお別れするのは寂しかった。
大人になった今でも、もしあの図書室へ行ける機会があるなら行きたいと思う。あそこは私にとって、安全で、平穏で、そう、サンクチュアリだった。

ああ、図書室が恋しい。


2

ピアノの音が好きだ。

とはいっても、クラッシックとか難しい曲を聴いてるわけではない。J-POPやゲーム音楽のカバーを聴いてるだけなのだけれど。
ピアノカバーになるとシックでカッコいい雰囲気になって、これがまたいいんだ。

原曲をいかに再現するか、奏者によって色々工夫していてそれもまた面白い。

ピアノの音って、DNAに訴えかける良さがあると思う。こんなの人類ならみんな好きでしょ(クソデカ主語)。ピアノの音、嫌いな人なんているの?まあ、多分いるんだろうな、世界は広いので。

こんなにたくさんの音を同時に出せる楽器ってなかなかないよね。たった1台の楽器でここまで世界を広げられるものかと感心する。さすが楽器の王様と言われるだけある。

私はペダル(ダンパーペダルというらしい)踏んだときに音が伸びるのが好き。響きが豊かになって一気に華やかになるよね。

音域も広くて、地を這うような低音から、煌びやかな高音まで出るのも魅力。

演奏する姿も、鍵盤の上で指が踊ってるかのようで美しい。

もしも、ピアノが、弾けたなら。カッコいいだろうな〜。


3

名も無い草花が好きだ。

というより、正確に言うと、「名も無い草花が名前を持った瞬間」が好きだ。


私は登録販売者という、市販薬を売るのに必要な資格を取るため勉強をしている。

試験範囲には、漢方や生薬も含まれている。

ある日、「アカメガシワ」という生薬について勉強した。

アカメガシワは、胃の粘膜を保護する作用がある生薬だ。その大きな葉は、昔、食べ物を盛る皿代わりにも使われたそうだ。若芽が赤く色づくため、その名がついた。

翌日、家の周辺を散歩していると、赤く色づいた葉っぱを見つけた。

「わあ、昨日勉強したアカメガシワみたいだなァ」などど思いながら眺めていたが、…んん?これ、まさしくアカメガシワそのものではないか?

15-20cmほどの大きな葉に、赤く色づいた若芽。葉の形も、昨日ググって見た画像とそっくりだ。

これ、アカメガシワじゃん!!

今まで気にも留めなかった、名もなき雑草だと思っていた草が、胃粘膜保護作用を持つ生薬である、アカメガシワと認識されるようになった。

すごい!!世界の解像度が上がったぞ!!

その瞬間、脳内でドーパミンがほとばしった気がした。

それまで何の意味も持たなかったものが、意味を持つものに変わる瞬間。その時がたまらなく好きなのである。

アカメガシワの葉

4

漂白剤の匂いが好きだ。

一人暮らししてた頃は、土曜日の午前中は決まって掃除をしていた。

台所のシンクを洗う。
トイレ、ユニットバスの浴槽と床をスポンジと洗剤で洗って流す。
排水溝もきれいにする。
部屋の床に掃除機とクイックルワイパーを掛ける。
布団を干す。
テーブルを拭く。
余力があれば冷蔵庫の中と外を拭き上げる。

すべてを終わらせて、ベットに横たわって一休み。
ピカピカになった部屋は気持ちがいいものだ。
達成感に浸っていると、ほのかに漂白剤の匂いが漂ってくる。
台所とお風呂を掃除するときに使ったハイターの匂いだ。

私にとって漂白剤の匂いは、清潔さの象徴。
さわやかな気持ちで、胸いっぱいに息を吸い込む。

さあ、これから買い物に行って、午後は何をしようかなあ。


5

桜が好きだ。

全身全霊をかけて、力いっぱい咲いている。
満開の桜はそんな風に見える。

いいなあ。人間の人生のうち、そんな風に輝けることって何度あるだろう。
すごいなあ。こんなに美しい花を毎年咲かせられるなんて。うらやましいなあ。

私は今まで生きてきて、こんな風に輝けたことが一度でもあったかなあ?

でも、こんなに全力で咲いてるのに、桜はすぐ散ってしまう。潔い。儚い。
短い期間だからこそ、命を懸けるみたいにあんなに全力で咲けるのかな。そんな桜を人はみんな健気に思って、愛でたくなってしまうのだろうな。

桜に見飽きる人っていなさそうだな、と思う。「桜?去年見たから今年はいいや」って話はあまり聞かない。

季節はまだ秋に差し掛かったばかりだけど、来年も桜を見に行こう。

そうそう、花に注目しがちだけど、幹も素敵だと思う。幹の暗い褐色が、花の明るい色を引き立てていて、コントラストが美しいなあと思う。

今度花見に行くときは、幹にも注目してみよう。


6

安い菓子パンが好きだ。

栄養バランスを気にしなくていいなら、3食菓子パンでもいいくらい私は菓子パンを愛している。大の甘党で、脂っぽいものも好きなので、菓子パンがないと生きていけない。

たぶん、おそらく、いつか、絶対に糖尿病になるに違いない。こわい。

菓子パン好きな理由は他にもある。

私の中で、どうも美味しさと価格は密接に関わっているようなのだ。
ケチの貧乏性なので、「この値段にしてはおいしいね」と思えるかが、かなり重要なのである。

日本は食の水準が高い。
だから、100円前後でかなり美味しい菓子パンが食べられる。

さらに私は「美味しさの解像度」がかなり低い。
どれくらいかというと、「まずい」「普通」「おいしい」くらいしかない。
つまり、一万円のコース料理も100円の菓子パンも同じ「おいしい」になってしまうのだ。

…それはさすがにちょっと盛り過ぎか。

でも正直、得られる満足度にそれほど大きな差は感じないのだ。

自分のバカ舌具合にちょっと悲しくなるが、安く自分を満足させられるっておトクじゃん、と自分を慰めつつ、メロンパンをほおばる。

うーん。バターの香り、ちょっとしっとりしたクッキー生地、ふわふわのパン生地。

幸せだ〜。


7

猫の足が好きだ。


猫足バスタブという言葉を聞いたことがあると思う。アンティーク調の家具なんかも猫足のデザインになってることがある。

猫の足。

うちには現在3匹の猫がいるが、それぞれ足にも個性があって、みんな形や大きさが微妙に違っている。大きくてふっくら丸々とした、ちたろうの足。
ちょこんと小さくて可愛らしい、ちゃたろうの足。

中でも、私はにょいしょ様の足が一番好きだ。
大きさは小さめ。なんだかごつごつして、不格好な形をしている。でもそれがなんともかわいい。
ぎゅっと握りしめた赤ちゃんのこぶしみたいなのだ。いじらしさが感じられる。

猫の足は、なぜこんなにかわいいのか。
ちょこんと揃えたお手々。だっこすると、ぎうっとしがみついてくるお手々。横たわりながら伸びをしたときに全力でパーになるお手々。
どんなシーンでも、いつでもかわいい。


ところで猫足のバスタブの話に戻るが、なぜ「猫足」なんだろう?
昔の人々も、やはり猫の足に魅了されたのかしら、と思い調べてみると

"四足動物哺乳類の脚、特に有蹄動物の脚をまねたデザインを元としている"[Wikipediaより抜粋]とのことで、猫に限ったものではなかったらしい。

な〜んだ。


にょいしょ様のお御足

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