佐賀は楽しい。巨石パークと『YAMAZAKI』がある(全国バー行脚⑥佐賀)
佐賀はよいところですよ。
何もないとか揶揄されますが、佐賀駅から少し歩くと、旧家や旧銀行など佐賀市の重要文化財が点在する一画があって、すごく雰囲気がよい。ほかにも「巨石パーク」という、バカでかい石がごろごろしている場所があって楽しい。10年前、石好きが高じて巨石パーク目当てで佐賀まで行きました。名前の通り公園かと思っていたら、割とハードな登山道だったのでびっくり。ほかにも有明海の珍味は美味いし、吉野ヶ里遺跡もありますね。
そして、バーは『YAMAZAKI』です。
■佐賀の夜更けにバンク祭り
佐賀駅からタクシーで5分くらいでしょうか、「白山エリア」と呼ばれる飲食店の集まった一画があります。その小道にある小さな神社の横に佇んでいるのがYAMAZAKI。東京でバーを営んでいる佐賀出身のバーテンダーに「佐賀ならここ」と教えてもらい、2020年に訪れました。
入るとそこには、ウイスキーがどっさり。そう、ここがどんなバーかと言えば「佐賀で一番ウイスキーのあるバー」です。ざっと1000本はあるとのこと。店名のYAMAZAKIは「山崎」とも表記されますが、ウイスキーの銘柄の山崎とは無関係だそうです。
最初はおとなしくデュワーズのソーダ割りを飲んでいたのですが、生唾もののウイスキーが目の前に山積みです。少しずつ探索を始めます。何しろバックバーの9割がウイスキーということですから、何を求めるか…。
で、結局やってしまうのはスプリングバンク祭り。グレンガイル! QE2! 21年! etc、etc! 特に、昔のグレンガイルのボトルに入った「実はバンク」はもう見ることができないんじゃなかろうか(キルケランではないですよ)。
■「フィディック50年」「ブラックボウモア」
私は、いわゆる“レア物”のウイスキーを捜し歩く趣向は持っていないのですが、このお店にいると、そんな私でも興奮します。お店には、どちらもUMA(未確認動物)レベルの幻の存在「グレンフィディック50年」や「ブラックボウモア」の空瓶がありました。全部、飲んじゃったそうです。「フィディックを飲む会」「ボウモアを飲む会」などをお客さんとやって飲んだと。「飲まなきゃ意味ないじゃん」というマスターは格好いい。もし今、市場に出たら、どちらも最低数百万、最近のウイスキー情勢を考えれば、さらに一桁上にいってもおかしくないよな…。
そうそう、マスターは渋いおやっさんです。寡黙な職人肌に見えますが、とても優しくユーモアもあります。 「巨石パーク目当てに初めて佐賀へ行った2012年に、ふらりと入ったバーがすごく良かった。調べたらもうなくなってしまったようだ。アブサンが豊富でよかった」。そんな話をしたら、それがどこの店かはわからないけどと言いつつ、アブサンをたくさん出してくれました。アブサンも20種類くらいあるそうです。
飲んでいるうちに、栃木県は宇都宮の名店「S」のオーナー夫妻がいらっしゃって、和気あいあいになったのも忘れられない思い出です。ああ、佐賀は楽しい。YAMAZAKIがある。
あと巨石パークね。(了)