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圧巻のロングカウンターで深まる土佐の夜、『ムーンライト』(全国バー行脚⑳高知)

 入店して、あっと驚きました。入口から奥に向かって伸びる、磨き上げられた一直線の長いカウンター。一目見て美しいと感じたそのバーは、高知県高知市の『MOON LIGHT(ムーンライト)』です。

■アワードカクテル「レッド カトレア」

「ロングカウンターは、地方ならではかもしれませんね」

 そう話すオーナーバーテンダーのKさんによると、カウンターの席数は14席。バックバーも同じくらいの長さがあります。東京都内で、こうした造りの店もあるにはありますが、割合は低いでしょう。この長さの直線を作るハードルは、都内では相当に高いと推察できます。

 ここムーンライトは、高知駅から徒歩10分ほどの場所にあり、2020年に現在の場所に移転したとのこと。チャームで出された、かぼちゃのスープをいただきながらそんな話を伺います。

チャーム

 そしてKさんは、2015年のサントリーカクテルアワードの受賞者。アワードカクテルは「レッド カトレア」で、メーカーズマークをベースに、ルジェ クレームドストロベリー、アマレットリキュールなどを使っています。

 柔らかなバーボンの口当たりに、芳醇で品の良い甘味が絶妙に絡む。健康的だけど色っぽい。そんな印象を受けたカクテルでした。

レッド カトレア

■土地の素材でカクテルを

 ご当地の素材を使ったカクテルもお手のもの。いただいたのは、高知のジンである「マキノジン」を使用した、文旦(ブンタン)のホワイトレディ。

ホワイトレディ

 マキノジンは、高知県の佐川町出身で、世界的な植物学者である牧野富太郎博士にちなんで命名されたジンだそうです。文旦は主に高知で生産されている柑橘ですね。

 こうした、ご当地に関するカクテルを飲めるのは、バー行脚の最大の楽しみのひとつ。マキノジンによるジントニックも飲みました。不思議なボタニカルです。

■情報はバーにある

 そうそう。ムーンライトにお邪魔して思い出したのは、街の情報はバーに聞け、ということ。お勧めのバーに居酒屋、昼から飲める店、ジャンル別の飲食店情報、観光スポット―。

 翌日、香川に移動する予定だったので、あと1日あれば教えてもらった場所に行けたのにと悔しがりました。

 そんな私を見て、今度は香川の情報までくれたんですよね。ほかのお客さんにも話を振ってくれ、香川や、四国全体のあれこれを知ることができた次第です。

 圧巻のロングカウンターで深まる土佐の夜。ゆったりと貴重な時間を過ごしました。高知に行く機会があれば、外せないバーです。

■ムーンライトから独立『Ushiro』

 ムーンライトから、20メートルくらいの場所にあるバー『Ushiro』にも言及します。

 こちらは、ムーンライトに9年間勤めた方が独立し、昨年7月にオープンしたバーです。

 季節のフルーツカクテルや、四国の素材を使ったカクテルがお勧め。私が好きになったのは、四万十市産のトマトを使ったブラッディメアリー。おいしくいただきました。

ブラッディメアリー

 ムーンライトとUshiro。ごく近い場所に二軒の美しいバーが建つ路地が、高知にはある。それを知れたことは僥倖でした。(了)

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