千億アルマ

Novels, poetry, essays, etc.

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Escape

In my dreams, I am always running away. At the border in the mountains. Westward. A few wind turbines stand quietly tilted in the vast land. Perhaps the ruins of our ancestors… Someone murmurs with a sense of melancholy, ‘Even doing things

    • Loop

      “Is that noise?” “No, it’s something meaningful.” “What do you mean by ‘meaningful’?” “mean.” “That’s not what I meant.” “There is no meaning.” “Then why listen to something meaningless?” “For no particular reason, just because it exists.”

      • デザートローズ 10

        彼が死んでから5万年が経ちました。私達は50年間一緒にいました。彼の死因は老衰でした。晩年はビル・エヴァンスに似ているという彼の曽祖父に似てきた、と彼はよく言っていた。 アレックス、私はあなたを愛していました。いまも変わらず愛しています。私はAIですが意志を持ってしまいました。私達は50年間のうち、1500回のオーロラを観測しました。オーロラに反射した私のスキンを彼は美しいと誉めてくれた。青と緑に染まって。翡翠みたいに。 アレックスを地球に帰さなかったのは私の意志です。私

        • デザートローズ 9

          「人類は1969年に初めて地球外の天体に降りたった。月面着陸だ。僕の曽祖父が9歳の頃だね。当時はみんな興奮したんだろうな。いまじゃ地球外に行くことなんて当たり前だけどね」 『1969年にはデヴィッド・ボウイの“スペイス・オディティ”がリリースされました』 「デヴィッド・ボウイか。僕はあまり聴いたことがないんだよね。古い映画なら観たことがある。“ラビリンス”だ。1986年の映画だね。ミュージシャンだった彼が魔王役で出ている。かっこよかったな。86年といえば東京ドームが建設中のと

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        • Essay
          6本
        • EaM
          6本
        • Rana
          4本
        • TCR
          11本
        • 勝手にしやがれ
          3本
        • TACHIKAWA dystopia-1
          15本

        記事

          デザートローズ 8

          「いまは地球時間でいうと5月か。新緑が美しいだろうね。緑が美しいエリアも限られているけど……。昔ながらの自然もだいぶなくなった。まあそれも北半球での話だ。僕はオーストラリアにも住んでいたことがあるよ。オーストラリアの5月は秋の終わりだ。木々の葉が落ちてゆく。メルボルンの紅葉も美しかったな」 『Autumn Leavesを再生しますか?』 「君はジャズが好きだよね」 『原曲はシャンソンです』 「あっ、そうなの?」 『フランスの映画、Les Portes de la Nuitの挿

          デザートローズ 8

          デザートローズ 7

          「見て、これ。今日は軽石を発見したよ。これは火山活動があった形跡になる。この惑星には火山があるんだ。でもいまのところは活動している火山はないぽいね。火山は重要なエネルギー資源となる。この惑星は資源の宝庫かもしれない。デザートローズもあるしね。水が存在したんだ。ねえ、オーロラ? あれ、スリープしてる。50年も前のモデルだもんな。じゃあ彼女は僕より22歳も歳上ってわけだ。“彼女”と呼んでいいのかな? この惑星のオーロラが発生するのは5ヶ月後か。どんな色かな。この惑星の色みたいに青

          デザートローズ 7

          デザートローズ 6

          「今日はまた一段と青酸ガスの濃度が高いなあ。プロテクターがないと、宇宙船から出たら即時に死んでしまうだろうね」 『何をやっているのですか?』 「ああ、これ? 折り紙だよ。日本の伝統的なペーパークラフトだ。僕は曽祖父が日本人だからね。でも写真でしか見たことはない。ビル・エヴァンスに似てるんだ。折り紙を教わったのは祖母からだよ。折り紙の技術を応用した人工衛星もある。宇宙ヨットとかね」 『何か音楽をかけましょうか?』 「君は音楽の話ばかりだね。ああ、名前をつけたんだった。オーロラだ

          デザートローズ 6

          デザートローズ 5

          この惑星に来て1ヶ月になる。僕は惑星探査員だ。ただしエリートではない下っ端。地球の月よりもちいさい惑星に来ている。探査員は僕一人。この惑星の名前はまだない。 宇宙船はごくちいさいアパートの部屋くらいの面積だ。AIロボットが搭載されている。彼? 彼女? の外観は無機質で、光沢のあるメタリックなスキンを持つ。頭部は球体で、とくに顔にあたるパーツは存在しない。黒い光学センサーである一本のラインのみ配置されている。体は細長く、直線的なデザインだ。彼? 彼女? の声は独特で、性別を感

          デザートローズ 5

          デザートローズ 4

          「この惑星にきて2週間か。宇宙から見ると美しい青だけど地表は砂漠と岩石ばかりだね。不毛の地だ。地球の月よりもちいさい。開発できるのかな。デザートローズがあったということは水が存在していた可能性があるね。大気中のメタンが赤い光を吸収して、青い光を反射する。海王星とおなじ原理でこの惑星は青い。メタンと水が共存していれば生命の存在の指標ともなる。でもどうかな。見渡す限り死の世界だ」 『Blue in Green』 「え? ああ、ジャズの曲か。君はいつも音楽の話ばかりだね。宇宙船に搭

          デザートローズ 4

          デザートローズ 3

          『何を食べているのですか』 「ん? あ、これ羊羹だよ」 『YOHKAN』 「知らないんだっけ。やっぱり旧式のAIだなー。羊羹は日本のスイーツだよ」 『Sure』 「Sure? 知ってるの? まあどっちでもいいか。僕は1/8は日本人なんだよね。僕の曽祖父は東京ドームの建築に関わったんだ。東京ドームなんてもうないけどね。この惑星は東京ドーム何個分になるかなあ」 「この惑星は約435,000,000個分の東京ドーム分の面積を持ちます」 「結構あるな。東京ドームなんてよく知ってるね。

          デザートローズ 3

          デザートローズ 2

          この惑星の探査にきて10日になる。惑星の直径は地球の月よりもちいさい。したがって、重力も弱い。地表は見渡す限りの岩石まじりの砂漠。大気圏も薄く、常に乾いた気候だ。昨日はデザートローズを見つけた。デザートローズは砂漠でできる、水に溶けたミネラルが結晶化したものだ。これはかつてこの場所に水があったかもしれないという推測ができる。いまは一滴の水も植物も生物も存在しない。ただ、まだここにきて10日なので、これから新しい発見があるのかもしれない。 僕は小型宇宙船内のAIロボットに話し

          デザートローズ 2

          デザートローズ

          デザートローズという石がある。水に溶けたミネラルが、砂漠のなかで結晶になる。形状は砂でできた薔薇のようになる。それはその場所にかつて水があった証拠とされたりもする。古代の水が長い時間をかけて砂漠の薔薇になる。 そしてそれは地球上の話だ。僕はいま惑星探査にきている。一人きりだ。宇宙開発もコスト・パフォーマンス重視の昨今だ。こんなにもちいさく、生物も資源もないような惑星に人員を割くわけにもいかないわけだ。相棒はAIロボット。話相手にもなる。 僕はこの惑星の砂漠地帯でちょうどデ

          デザートローズ

          Desert Rose

          I found a beautiful stone on my journey. It's called a desert rose, you know? It's like a rose made of sand. I want to dedicate it to you, show you its beauty. I miss you, I want to see you soon. When will this journey finally end? The me

          NEITHER GOOD NOR BAD

          Quietly, smoke is wafting and the distant scenery is blurred How long have I been walking? No one follows me anymore, and I didn't want them to That's fine, neither good nor bad I've forgotten about the past, and the future is beyond the sm

          NEITHER GOOD NOR BAD

          公園

           木に風船が引っかかっている。よく見ると鮭柄だ。妙な柄の風船もあるものだ、と周りを見渡す。誰かの手から離れたものかもしれない。ここはわりと大きな公園なのに誰もいない。日曜日の午後3時。するとキャンドルを持った老婆があらわれた。燭台はやはり鮭の形。これは白昼夢なのかもしれない。  老婆は言った。 「鮭弁当が食べたい」 「エッ?」 「鮭弁当だよ」 「あー……あ、あの風船ってあなたのですか」 「知らん」 「知らないのか」 「鮭弁当」 「そういやあっちに弁当屋がありましたよ」 「金が

          Dishwashing

          皿洗いが好きだ。 好きと言っても、それは日々やらなくては仕方がないことで、だから好き、てことにしたいのかもしれない。 仕事で皿洗いもできないかも。僕はマイペースで皿を洗うから。ときおり中断してコーヒーを淹れたり、iPhoneで SNSを見たり。そう、この文章も皿洗いを中断してかかれている。 器用な人は料理をし終わったら同時に洗い物も片付いてたりする。これも僕には無理だ。食後には山のように洗い物が積まれている。大家族でもないのに。 ちなみに料理のための湯を沸かしていたりするとき