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【読書感想】温泉と黄泉の国
今日も一日お疲れさまでした。
ゆるーり鳥獣戯画で一服どうぞ。
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人が生きていく上で避けて通れぬもの。できれば見てみぬふりをしたいこと。命のさいごを迎えること。直視するのはタブーのような、隠しておくべきことのような。でも、悲しいことだけじゃないとこの本が教えてくれた。谷川俊太郎さんがたびたび「死んだらどうなるか楽しみだ」ということをおっしゃっていた。谷川さんも温泉につかっているのかなと想像した。
ちょうど臨終の瞬間に、わたしは居合わせた。(中略)
温泉に肩まで浸かって思わず口にした「あー(いい湯だなあ)」、それとそっくりに聞こえたのである。そしてわたしは、あの世というものがあったとしたら、もしかするとそれは温泉みたいなものかもしれないと想像した。死んだ者は皆、巨大な温泉に浸かっている。薄明の湯であり、死者は湯でのぼせたりはしない。永遠に、まさに極楽の湯で気持ちよく過ごすのである。したがって、死の瞬間というのは、ちょうど浴槽を跨ぎ越えて湯の中に入る瞬間となる。馬鹿げた想像だけれど、たった今亡くなった人があの世で温泉に浸かっていると思うと、自分としても気が楽になる。いずれ自分も極楽湯に入るのかと思うと嬉しくなってくるではないか。
♨️♨️
いつか終わりが来たとしても。温泉につかって、ポカポカと。愛おしい人と語り合う時間が永遠に続くなら、彼方の世界もわるくないかもしれない。
でもまだわたしは、明日を夫と迎えたい。だから、健康第一。冷えは万秒の元。心も体も冷えぬように、しっかり湯船に浸かりながら。
鳥獣戯画の世界へどうぞ🍵
おわり