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尤古立劇団(尤古立剧团)
2023年3月27日。
金世佳が主宰する尤古立劇団(Yóugǔlìjùtuán)の設立が正式に発表された。
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調べてみると、鴉は神の遣いから不吉の兆しまで幅広く用いられる象徴であり、また日常よく見るごく平凡な野鳥である。YUKKURIは日本語の「ゆっくり」。幅広く演じ、かつ、どこにでもいるような親しみをもち、ゆっくりと…。金世佳の劇団(という一大事業設立)に込めた想いが切々と伝わってくるようだ。
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尤古立の「尤」は「最も」と同じように使われてきた文字で「尤も(もっとも)」と表記される。現在は常用外。訳すと「特に」となるが、尤も至極(もっともしごく)とか、御尤も(ごもっとも)など。尤古立のピンインがYóu gǔ lìで、日本語の音読み?訓読み?も合わないので、ユウグリ、ヨウグリとでも、なんとなく読むしかない。ベースは日本語の「ゆっくり」らしい。
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公式ページで挨拶文に、「不惑(40歳)間近の男性俳優の心もとない夢想かもしれないけれど」と彼自身に念を押すような 1センテンスが、いかにも金世佳らしいように思う。もうすぐ40歳、自分は男。世間相場との葛藤。きっと何年も考え続けたのではないだろうか?「長期にわたり役者の身心を訓練して、演劇を本来の姿に回帰させる」夢かもしれないけど、そうしたい。そして「劇場空間に入った観衆が日常生活をしばし離れ、人と人とのエネルギーの交流を通して演劇の本来の効能を感じ取る」ことを願っているようだ。本来の効能とは何か?日談公園(ポットキャスト、対談番組)でのコメントでは、カタルシス・精神の浄化がそれだと考えているようだ。(程度問題に言及すると語弊が生じるので触れない。)
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その時ほんの少し紹介していた人物は彼・张宁浩 Zhāngnínghàoだろう。
鈴木忠志氏のもとでがっつり学び、scotの正式メンバーになっているらしい。
金世佳と同じ上海戯劇学院の出身で、師弟、後輩。
尤古立劇団のパフォーマンス指導に参加してるとは、、、。
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30歳を過ぎて7年になる役者。
歩みを止め、
振りかえり、いささかの不満と遺憾の念を覚える。
前を向くが、しばらくやるかたなし、自分と自分の和解の術。
この世界をカミュは不合理と不理解の共生体とみた。
人々と現実世界の関係は調整も統一もできない。
私たちはどこに行くのだろう?
どこに向かっているのか知らない、けど、私たちはそれに直面している。
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同じものを食べ、同じ空間で寝起きし、同じ訓練を重ね、煩わしい世間とはいったん自分を切り離し、全身全霊で作品世界に没入する、その世界の一部になる。そういう合宿らしい。
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