ドラマ 1話-5(試訳)
●某所
四人+察察で麻雀をしている
ホールスタッフ:程さん、お電話です。
程鳳台:わかった。手駒を盗み見るなよ!
范涟:これを打ってみないか?これ、この牌をちょっとさ。
察察:見ちゃダメ!
程鳳台:もしもし
范涟:ちょっとだけ、ちょっとだけ見せてよ。
察察:だ~め
程鳳台:規定通りに処理して、全額支払う、そう、いいよ、そのように。
范涟:どうしたんですか?何があったんですか?
察察:兄さん、帰ってきた~
范涟:兄さんどうしたんですか?こんなところまで電話で追いかけてくるなんて何事?
程鳳台:貨物の事だ。
范涟:なにか厄介事でも?
程鳳台:問題なしさ。用件の主は商細蕊さ。彼は私の店で蘇州刺繍の衣装を注文した。が、糸の端が出ていた。それで注文をキャンセルさ。ご立派な気位だな。
同席者・男:凝り過ぎだよ
同席者・女:程さん、どうするの?
程鳳台:どうするもないさ。もちろん彼には満足してもらわなくては。高価な衣装だからね。1800大洋もする、ビーズを一面に散りばめた逸品だ。贅を極めている。この世界で彼はまじめに働きながら充分に食べられなくても、パフォーマーとしてはとても裕福だね。
范涟:僕としては皆に言いたいね、商細蕊は別に気取っているわけじゃないってこと。そりゃ、彼は衣装にかける費用を惜しまないよ。衣装が素晴らしければ値札を気にもせずに注ぎ込むよ。
同席者・女:范さん、あなた商細蕊に詳しいって聞いたわよ。
范涟:そうさ。
同席者・女:最近の彼は信じられないほどの大人気じゃない?!ね、どうなの?
同席者・男:知ってる知ってる。聞くところによれば、曹司令が平陽を攻撃した時、商細蕊が城楼の上に立って歌ったって。
●戦場(平陽、城門)
兵士:進めー!進めー!
商細蕊:(*)漢軍わが楚の地を奪い、四面に響く楚の歌~
曹司令:銃撃やめい!撃つな!撃ってはならん!
商細蕊:(*)王の意気ももはや尽き果てた、卑しい側女(わたし)がなぜ生きながらえる~
曹司令:彼を傷つけるな!虞美人を死なせたくない!
*中国電影的中国語「さらば、わが愛 覇王別姫」対訳シナリオ集 水野衛子訳 キネマ旬報刊 より翻訳文借用
●某所(麻雀)
同席者・男:両軍ともその歌声に聞き入って、戦闘が止んだという話ですよ。
同席者・女:そうなの?
同席者・男:うん
同席者・女:嘘じゃないの?
同席者・男:本当さ。
程鳳台:たかが歌にそんな大きな魅力があるとは、私は信じないね。
范涟:これは醜聞を広めるようだけれど、もともとは蒋梦萍と常之新が、うちの従兄なんだけれど、彼らと商細蕊の訳ありなんだ。
同席者・男:どんな?
范涟:彼ら二人が平陽を離れたことで商細蕊は強いショックを受けて、それで彼は城門の屋根に上がって、狂ったように昼夜通して歌い続けたのさ。それが君の言った、曹司令が攻撃の際に云々っていう話になっているわけ。
同席者・女:その人、ここ(頭)がおかしいの?せっかくいい喉を持っているのに。
范涟:芝居のために歌うのが、人生と芝居は分かちにくいってね。でも、我らの商細蕊は本当に素晴らしく歌うんだ。そうさ!君たち聴いたことがある?彼の圧倒的な素晴らしさったらないよ。普通の人は到底かなわないね。
程鳳台:あ、忘れていた、やめ、やめ。
范涟:あ?
程鳳台:(私が受け取る)掛け金を集めておいて。
范涟:どうしたの?兄さん。何を慌てて、どうしたの?兄さん、どうしたの?
程鳳台:芝居を聞きに行くんだ。
范涟:は?芝居?
●汇宾楼
車から降りる程鳳台と察察
程鳳台:行こう、兄さんが目新しいものを見せてあげる。(垂れ幕を見上げる)商細蕊?今日はなんだ?どうした?どこもかしこも彼ばかりだ。
(劇場内、客入りも上々で賑やか)
劇場スタッフ:ようこそ、程さん
客が口々に舞台にむかって声をかける。舞台では前座が始まっている。
「良い役者だ!」「きれいだ!」「いいね!」「楽団も良い」「いいね、素晴らしい」
劇場スタッフ、二階席に向かい手布を見事に投げる「受けとって~!」
程鳳台、察察、二階席にむかう。
程鳳台:鄭会長
鄭原木:程さん
程鳳台:お待たせしましたね。
鄭原木:ちょうどいいところにいらした。目玉の芝居はまだ始まっていませんよ。こちらはもしや、噂に聞く程家の三番目のお嬢さんかな?
程鳳台:妹はまだ芝居を見たことがないので、一緒に観ようと思って連れてきました。
鄭原木:美人さんだ。商細蕊の舞台に間に合ったんだから、お二人、無駄足にはなりませんよ。さ、さ、いらっしゃい。
程鳳台:察察、そこに座りなさい。近いところに(察察を舞台寄りの席へ)
鄭原木:ま、よくいらしてくれた。お茶をどうぞ。
《舞台》皇宮に久しく住まう 庭には百花が咲く 後宮の奥深くで 帝王の館で一生を過ごす 私は裴力士 私は高力士
鄭原木:程さん、この芝居は退屈ですか
程鳳台:実を言うと聞いてもわかりません
鄭原木:あなたは上海人だから、紹興劇が好きなのでは?
《舞台》高さん、よろしくお願いします。裴さん、よろしくお願いします。
程鳳台:それもお手上げですよ、私は留学から帰ってきて映画をよく見るようになりました。それに比べると…
《舞台》今日は貴妃さまが百花亭で宴を開かれる。心して勤めよう。
程鳳台:まったくわからん。
《舞台》良い香が漂ってきた、貴妃さまのお成りだ、我らはご挨拶に伺おう
鄭原木:わからないのならば北平の年寄に学べばよろしいので。劇場には詳しいのがいますよ。あなたが言う映画館派は少ないですな。どなたかに映画の話題をの持ち掛ける 这玩意儿曲高和寡 関係ありません。私たちの商会の何人かの年寄は芝居がわかるので、あなたの都合のいい時にお宅に伺って教えて差し上げる人を紹介できますよ。
程鳳台:それなら近々セッティングしましょう。それと・・・東ルートの件もあなたのために考えるとしましょう。
鄭原木:いやいや。とんでもない。あなたは聡明な方だ。私たちの面子を立ててくれる。莫大なメリットをいただいています。昨日の献金の件ですが、そう、わかっています、あなたの言い分は理解できます。まあ相談ですが、20%でいかがですか?今の時代は混乱しています。誰も生活が大変だ。あなたが承服してくれるなら、私たちの大事なメンバーになります。あなたはこの20%にうなづくだけです。すぐにあなたの家にお送りしますよ。このことは、あなたと私の了解を私たちの・・・。
程鳳台:始まります。芝居を観ましょう
《舞台》お成り~ (楊貴妃・商細蕊、登場)
鄭原木:おお、まずは芝居を、芝居を観ましょう。
(程鳳台、母の記憶。母・春萱が楊貴妃に扮し歌っている)
察察:兄さん、彼らは何を投げているの?
鄭原木:これは、銀元を紙に包んだもので、彩头(彩頭)と言います。
程鳳台:面白い。察察、君もひとつ舞台に投げてごらん。
《舞台》海に浮かぶ島々 月が昇り始める 玉兎と呼ばれる月が(*1)
身を転じて東に昇る(*2)
程鳳台:よく見て、狙いを定めて、思いっきり
(察察、指輪を投げる。商細蕊の額にあたる)
察察:私・・・
鄭原木:この指輪はかなり重さがある。当たったところは青痣ができるだろう。お嬢さん、たくましいね。頭は小さくないが狙いは正確だ。大丈夫。彼らはこういうことに慣れていますよ。それに彼はあなたの本物の金に宝石のついた指輪を手に入れたんですから、お嬢さんからのご褒美に感謝するでしょう。
程鳳台:心配するな。わざとやったわけじゃない。後で私と一緒に彼のところに謝りに行こう。
《舞台》月は島より遠ざかり(*1)
男女のことが露呈して(*2)
煌煌たる月が空に輝く(*1)
客:何を歌っているんだ、これは何の芝居だ?!何の芝居なんだよ!降りろ!金返せ!何を歌っているんだよ!金返せ、払い戻せ!降りろよ!
鄭原木:行って見てみましょう。
~1話終わり
字幕および構成は、1話の前半は独播庫公開版に、後半は爱奇艺・国际版による。
*1 中国語で歌おう!まるごと京劇編、山下輝彦著、アルク刊より翻訳文をお借りした。
*2 商細蕊の替え歌部分
●身を転じて東に昇る→ 原文=又早東昇(早くも東の空に昇り)を又転東昇に変えている。
●男女のことが露呈して→原文=乾坤分外明(天地はさらに明るくなり)を乾坤陰陽分外明と変えている。陰陽と加えたことで男女を表わしていると推測して訳してみた。