ウチの子と楽しむラグビーW杯!トップレフリーだからわかる「カンタン観戦法」:文字起こし#001
発言者の略称を下記の通りとさせてもらっています。
「成」:成見氏 「川」:川原氏 「参」:参加者
■川原氏の紹介と、今回講演していただく理由
成:
皆さんこんにちは。SRUの成見と申します。今日も宜しくお願いいたします。
今日はこのような議題「ウチの子と楽しむラグビーW杯!トップレフリーだからわかる「カンタン観戦法」でレフリーである川原佑さんに来ていただいて、講演をしていただきます。という事で川原さんをご紹介いたします。
国内でもトップレフリーでいらっしゃいます。またワールドカップのリザーブアシスタントレフリーということで、2019年大会のオフィシャルレフリーの一員でいらっしゃいました。また国内ではリーグワン、大学選手権でも、笛を吹かれているという方にお越し頂いております。
どうしてSRUがレフリーの方をお呼びするのかというところなんですけども、SRUは品川区ラグビー協会なのですが、より多くの人にスポーツの接点を持っていただいて、みんながスポーツを楽しめる環境を作っていきたいなということを考えてます。
今はワールドカップの直前ですので、ワールドカップをより楽しんでいただく、またそのガイドになればいいなという思いがございまして、このような会を開催いたしました。
やはりレフリーはルールのマスターでいらっしゃるので、一般的には「すごく複雑だ!わかりにくい!」っていうふうに、ラグビーのルールは言われていますけど、彼はラグビーの芯の所がしっかり理解出来ていらっしゃるので、皆さんにはそこからヒントをいただいて、「こんなにシンプルなんだね。こんなにラグビーわかりやすいんだね!」っていうところがわかればいいな、皆さんにお伝え出来ればいいなというふうに思っております。
■本日のアジェンダ
今日のアジェンダです。3部構成で、
①見るラグビーは簡単だよっていうところ。
②ラグビーのレフリーは、他の競技と比べ、少し選手とのコミュニケーションの仕方が違うなというところがあると思っていて、その極意をお伝えいただく。
③2023ワールドカップの見所をレフリー目線で少しお話頂こうと。
1・2・3とあって、アンケート書いていただいて最後に、ここ重要なんですけども『アフターマッチファンクション』ということで、ネットワーキングっていうんでしょうか、皆さんでお話いただいたり、ここで出会った方々同士でお話しいただいいただいたりっていうことを、コーヒー飲みながらでお話いただければいいと思ってます。お願いします。
私、ラグビーマガジンの編集部に勤めております。川原さんとも取材で色々とお世話になったりしてるんですけども、その中でお話聞いていて、ラグビーに対する関わりだったりとかっていうところもすごく面白いところがありまして、そういうところもちょっと知ることできましたので、今日ルールのお話と共にそういったところも、どうしてレフリーになったんだろうみたいなお話も中学生とか聞いてもらったら面白いと思います。川原さんです、よろしくお願いします。
■みるラグビーは簡単。覚えるルールは3つだけ。
川:
改めまして皆さんこんにちは。レフリーの川原佑と申します。本日はよろしくお願いします。正直、レフリーをやってる時よりも緊張します。こういう時の方が。レフリーをやっている時の方が気が楽ですね(苦笑)。
今日はこういう機会いただきましてありがとうございます。ワールドカップもいよいよ開幕を目前にして、本日、私がラグビーの世界で働かさせていただいてるので、実際レフリーとしての知識だったりだとか、経験を皆さんに共有できたらなというふうに思ってます。
先程、ご紹介いただきましたけど、内容としてはまずルールの話。一応専門家ではあるので、ラグビーをあまり知らない方も、ラグビーをすごく知られている方も、皆さんに分かるような形で、覚えるルールは3つだけということで、3つの柱で話をしたいと思っています。
2つ目はレフリーのポジティブコミュニケーション術ということで、おそらくスポーツの中で一番コミュニケーションを取るスポーツがラグビーだと思っています。私達もゲームを良くするも悪くするも、1つはコミュニケーションがすごく大事だというふうに言われています。なので、どういう形で選手やコーチとコミュニケーションをとっているかということをお伝えさせていただきながら、おそらく皆さんの日常生活でも生かせることがあるんじゃないかなというふうに私自身思ってますので、共有させていただきたいというふうに思ってます。
3つ目は、今年ワールドカップありますので、あとは今日深夜1時、イタリア戦もありますので、そこの見どころというか私が注目しているポイントと、成見さんが注目しているポイントっていうところを、実際、いくつかの選手を挙げながら実際に私も接したことがある選手も何人か挙げさせていただいてますので、エピソード語らせていただきたいなというふうに思ってます。
Q&Aもありますのでどんどん質問いただければというふうに思いますよろしくお願いします。
ではパート1は『ルールはこの三つだけ覚えればいい』ということで、ラグビーのルールってすごく難しいって言われるんですけど、私自身もすごく難しいと思っています。
毎年ルールが変わったりだとか、密集があるので他のスポーツに比べてすごくわかりづらいっていう事が起きると思うんですけど、もっと大雑把にというか、大きく見ていただくっていうことと、今日私がいくつか話すことによってラグビーの見方が少しでも変わったらいいなというふうに思いますし、今日の夜1時からNHKでイタリア戦ありますので、ぜひ今日得た知識を生かしながらというそういうことを頭に入れながら試合を見ていただけると、より楽しめるのかなというふうに思ってます。
まずラグビーってどういうスポーツなのっていうと、僕は「陣取り合戦」だと思ってます。いかに時間内に相手の陣地に何回ボールを持っていけるか。もちろんゴールキックもあると思うんですけど、基本的にスコアはトライすること。相手の陣地にボールを持って地面につけることですので、いかに陣取りをするかっていうことが大事になってきます。
陣取りするために選択できるプレーをボールを前に投げてとかできればいいんですけど、ラグビーってそんな簡単なスポーツじゃないので、
①まずボールをパスする。
②ボールをキックする。
③もしくはボールを持って走る。
ラグビーの良いところで、パスが上手な選手もいれば、キックが上手な選手もいるし、走ってぶつかって飛ばしたりとか、すごく速く走る選手もいるってことで、色んな自分の特性を生かしたポジションがあるっていうのも、ラグビーが良いスポーツだというふうに思ってます。
ただ、パスする、キックする、走る。だけではなくて、規則を作ることで面白さを生み出しているっていうところが、ラグビーの面白さというか、スポーツ全体的に言えることかなというふうに思ってます。ラグビーのルール・規則に関してはこの三つを覚えて欲しいと思っています。
1、ボールを前に落としてはいけない、前に投げてもいけない
2、ボールや塊より前でプレーし始めてはいけない
3、ボールを獲得する為には厳しい規則をクリアしなければならない
なので、タックルが起きてボールを獲得したいんだけれども、ボールを獲得するためにはジャッカルをする必要がある。そのジャッカルをするためにも色んな規制があるので、その規制について今日はお話できればなというふうに思ってます。
成:
すいません、ちょっと口を挟まさせてください。さっきの「三つのルールを覚えればいい」というやつは、全部不効率な事とかがすごく多いって思ってて、僕今日ちょっと川原さんとのお話を聞くにあたって、もう一つちょっと陣取り合戦だっていう一つのキーワードと、もう一つ、何とかだっていうそのテーマをちょっと一つ共有したいなっていうふうに思いまして。
どうしてあんな不効率なことするんだろうっていうところのお話をちょっと後でさせていただければと思います。
川:
はい、ではまずは三つの非効率の話をして、美味しいところの話を成見さんにしてもらいます(笑)
■①ボールを「前には落としはいけない、前に投げてもいけない!」
1つ目ですね、ボールを前には落としはいけませんよぼ前に投げちゃいけませんよ。ということで、私今『浦安D-Rocks』というリーグワントップチームのレフリーとして仕事をしています。
実際に皆さんにラグビーのルールを知ってもらうために、今こういったビデオを作って、分かってもらえるように工夫をしてますので、ぜひこのビデオ見ていただければなというふうに思います。
(動画内の説明)
最初に紹介するのは1番多く登場する
①「ノックオン」です。
これはボールを前に落としてしまうプレーです。
②「スローフォワード」です。
これはボールを前に投げてしまうプレーです。
「ノックオン」や「スローフォワード」は故意ではない為軽めの反則として扱われます。これらの反則が起こった場合は、相手ボールのスクラムで試合が再開されます。
反則が起こったときは、どちらから再開されるのか。レフリーが再開される側に手を出します。そしてスクラムです。
せっかく今日ボール持ってきたので説明したいと思いますが、ちなみにノックオン、スローフォワードわかりますよ!っていう方は手挙げていただいていいですか?
ほぼほぼ皆さん理解されてますね。何人かは分からない方もいらっしゃいますね。(参加者の9割方は分かる)
説明させていただいたように、ラグビーはボールをキャッチして、ボールを前に落としてしまうと、ノックオンという反則になってしまって、「相手ボールのスクラム」で再開されます。
もう1個の反則、スローフォワードも前に投げちゃいけないので、前に投げてしまうと、反則として判定されます。それも「相手ボールのスクラム」で再開されます。
ただ僕レフリーをしていて、「おい!ノックオン!!」ってコーチが、反応される事があるんです。ただ時々、ボールが胸に当たったりとか、ボールが頭に当たって前に転がっていきます。これはノックオンではないです。
あくまでもボールが、肩関節のラインから指までの間に当たって、前方に落ちた場合がノックオンになります。
なのでボールが来て、見ていなくてボールが前に転がっていっても、それはノックオンではないので、そのボールが継続されます。
あとは、触ってボールが後ろに落ちてしまった場合も、ノックオンではないので、そのままプレーが継続されます。
「スローフォワード」に関しては、走っていると、慣性の法則があるので、(ちょっと難しい話なんですけど。)ボールを後ろに投げたとしても、ボールが前に行ってしまうことあります。他にも例として、ボールを後ろに投げたとしても、ボールが風で前に行ってしまうこともあります。
それはスローフォワードにはなりません。
あくまでもボールが最初に出たときに、ボールの動き始めが前であれば、それはスローフォワードになってしまいます。
特にラインとかがあると、ボールを後ろに投げ始めたけれど、ボールをキャッチした位置が、ラインよりも前になって「あれこれスローフォワードじゃないのかな?」「なんでゲームが続けられてるのかな?」って思うことが、テレビを見られていて思うことがあると思うんです。
でも、それは最初のボール投げた軌道は後ろなんだけれども、最終的に取った位置がラインよりも前で取っていたっていうことがあるので、最初の動き始めを見ていただくといいのかなというふうに思います。
特にスローフォワードが、今後ワールドカップで起きやすい状況は、ロングパスです。長い距離10m、15m以上投げるときにすごく起こりやすいのでそこを注目して見ていただけるといいのかなというふうに思ってます。
なかなか短いパスでスローフォワードが起きるっていうことは、少ないでし、レフリーも結構見逃しがちというか、そのまま流されることが多いのかなというふうには思います。
●ノックオンとノックバックの違いって?
参:
質問良いでしょうか?
先日のフィジー戦でもノックオンになったケースがあったと思うのですが、後ろに落としたように見えて、ボールを体の間に落としていたからノックバックなのかなと思っていたんですが、判定はノックオンでした。ノックバックとノックオンの違いって何でしょうか?
川:
どちらかと言うと、人を基準にするというよりも、当たったときにボールの軌道が前なのか、後ろなのか、なのでこの間でいうと、もちろん、フィジーの選手は自分のチーム側を向いていたんですけれども、アタックしている方向が右側だったら、ボールを落とした位置は左側だけど、落ちた後にボールがアタックしている右側に向かった。
言ってることわかりますでしょうか?これが自分のチームが側だったら問題なかったんすけど、ボールがアタック側に転がってしまったので、テレビジョンマッチオフィシャルを使って、判定の取り消し隣の取り消しをしてノックオンですよね、っていう判定に持っていったっていうことですね。
手があった位置よりも、転がったのが「前」なのか「後ろ」なのかがポイントになります。質問ありがとうございます。
■②ボールや塊よりも「前でプレーしてはいけません!」
2つ目、ボールや塊よりも前でプレーしてはいけませんよという事です。なので、スローフォワードもそうですが、基本的にボールは後ろにしか投げれないので、前にいるプレーヤーはそもそもプレーできないので、後ろでプレーしてくださいねっていうことです。
キックする場合は、キックするプレーヤーよりも前にいてはいけません。
元々、ラグビーという効率の悪いスポーツなんですけど、それが面白さを見出しているので、そこのルールは守らなくてはいけません。
今から映像をお見せするのは一番起こる、タックルが起きた後の説明を、また映像で見ていただければと思います。
(動画内の説明)
このように、ラックが成立した場合、ラックに参加をしている最後尾の選手の足元にオフサイドラインが出来ます。
プレーする選手はこのオフサイドラインの後ろにいなければいけません。
そのラインよりも前に出ると「オフサイド」になります。
オフサイドやハイタックル等の重い反則は、相手にペナルティキックが与えられます。反則を受けた側はペナルティゴールやタッチキックなど、様々なオプションを選ぶ事が出来ます。
なので、わかりづらかったら「モールやラックは、塊」っていうふうに覚えていただいたらいいと思うんですけど、タックルが起きて、組み合ったら塊ができます。塊ができると基本的にアタックとディフェンスの最後尾(塊の1番後ろにいる選手の足の所)に1本ずつオフサイドラインができます。
プレーする選手は、必ずこの塊の最後尾よりも後ろに必ずいないといけない事になります。なので、塊のラインよりも少しでも前に出ていると、ペナルティとなります。
よく起きるのは、塊に近いところに、アタックしているチームの選手が来やすかったりするんです。そうなると、その選手は「いつボールが出てくるか!」っていうのを見たいので、ついつい前に行っちゃうんですね。
なのでレフリーは近くにいて、こういう形(ディフェンス側を向いて手を後ろから前に押し出すような仕草)で下がってね!ってやるんですけど、結構塊の近くにいるプレイヤーが前にいて、ペナルティを吹かれるケースっていうのはあるのかなとは思います。
1つ目のノックオンとかスローフォワードっていうのはどちらかと言うと、故意の反則ではないですね。スローフォワードしたくて、したわけでもないですし、ノックオンしたくてノックオンしたわけではないので、どちらかと言うとアクシデント的、またはスキル不足による反則なのでスクラムでスタートするんです。
オフサイドや、危険なハイタックルなどは、ずるいプレー(分かっててやってしまう)に分類をされます。そう言ったずるいプレーになるのでペナルティーキック(相手に有利な選択)で再開されます。
【ペナルティキックのオプション】
①ペナルティゴールを狙う
②タッチラインに蹴り出しマイボールラインアウトから再開
③マイボールスクラムで再開
④その場でタップキックして再開
なので、日本代表も接戦で勝つことっていうのが多い。どちらが強いチームと戦わないといけないので彼らは、いかにそのずるいプレーだったりだとか、危険なプレーをなくして、ペナルティゴールを狙わせないとか、ペナルティキックだとタッチラインに蹴り出してラインアウトでスタートされてしまうので、やっぱり大きい相手の選手にそういうスクラム、ラインアウトでモールを組まれたりとか、そういうことをされるとすごく嫌なので、規律を高めましょう、規律を高めましょうということを、ずっと日本代表は言い続けています。
■③ボールを獲得するためには「厳しい規則をクリアしろ!」
では3つ目ですね。3つ目は、ボールを獲得するためには厳しい規則をクリアしろ!!っていうことで1番ラグビーで起こるプレーとしては、タックルがあるので、タックルが成立した後にどうやってボールを獲得しますかっていうと、「姫野選手」が得意な『ジャッカル』ですよね。
ジャッカルするためには、相手よりも早くたどり着くことが大事です。
なので、アタックのカバーをする選手が、先にたどり着いてしまうと、ジャッカルしようとしても排除されてしまう。1回コンタクトをされると、もうジャッカルすることは出来ないので早く到達するっていうことが、大事です。
もしくは、力で圧倒しちゃう。相手がカバーに入ってきたものを、ぶつかって、相手の方に押し込んで、自分たちの方にボールを出すっていう、主に二つの選択肢があります。
ただ、早くたどり着いたって、そこにはいくつか厳しい規則があるので、その厳しい規則を守らないといけないです。
なので、結構言われるのは早くたどり着いてジャッカルしてるのに「なんで日本ボールにならないの?」とか「なんで、ボール獲得させてもらえないの?」っていう質問があるんですけど、その理由には、厳しい規則が「タックルゾーン」にはあるので、その厳しい規則について、いくつか今日僕の方で説明をしたいと思います。
まずはタックルをしたら「すぐに立ち上がって、自分のチーム側に戻らないといけない」です。
なので、「よっしゃ、タックル成功した!」で、そのままそこに止まるっていうことは許されません。
ちょっと映像を見てください。青チームのプレイヤーがタックル成立して、他の選手が相手より先にボールにたどり着いたんですけど、先にタックルを成立させてた選手が立ち上げるのが遅かったんですね。
何でタックルした人がすぐにどかなければいけないかっていうと、アタック側の方にとどまり続けてしまうと、ボールを出したいプレーヤーが来たのにその人が邪魔になって次のプレーに行くことができなくなってしまいます。なのでレフリーは、「タックルが成立したらタックルしたプレーヤーを見る」ようにしています。その後、ジャッカル成功した良かったね!という事よりも、タックルした人が、しっかりと自分のチームに戻ろうとしているかどうかっていうのを見ています。
なので、今の映像でいうと、タックルした人が倒れたまま戻れていなかったので、せっかくもう1人のプレイヤーがジャッカル成功してたのに、タックルしたプレーヤーのせいで、ボール獲得できなかったよねっていう映像です。
では、2つ目いきます。タックル成立して、お互い両方のチーム、タックルが成立すると、お互い「玄関」ができます。
なので決められた玄関から入らないといけないんですけど、決められた玄関っていうのは、タックルが成立して、自分のチーム側からゴールラインに向かって、垂直に入ってくる必要がありますよ。なので、タックルが成立しました。ゴールライン側からまっすぐ入っていくのはOKですと。
ただ、タックルが成立しました。玄関じゃない横から入ってしまうと、この人はペナルティとして笛を吹かれてしまいます。なのでちゃんと入口を守ってるかどうかっていうのを、レフリーは見ています。
ちょっと映像を見てください。
この丸がついたところが、この5番のプレイヤーが横から入ってきました。後ろからまっすぐではなくて、玄関ではないところから入ってしまったので、彼はペナルティになってしまいます。
ではなぜかと言うと、せっかく赤のプレーヤーが正しく、玄関から入ってジャッカルしてるのに、相手のプレイヤーがずるして、玄関じゃないとこが入ってきたら、せっかく正しいく玄関から入ったのに損しますよね。
なのでしっかりとお互いが損をしないように、正しく両方玄関から入ってくるかっていうのをレフリーは見ています。
最後3つ目ですね。はい見てもらいましょう。
玄関の入り方を守ってジャッカルに行ったんですけど、彼は反則になってしまいました。何でかっていうと、ジャッカルしたプレイヤーが地面に手をついちゃってるんですね。
なので、ジャッカルするプレイヤー(ボールを獲得しようとしているプレイヤー)は、
①必ずボールに直接行かないといけない
②しっかりと二本足で立って行かないといけない
と決まっています。
結構いるんですけど、バーンって勢いで倒れて、そのままボールを持っていくっていうことは許されませんよ。なので必ず両方の手で持って、しっかりリフトしてくださいね、っていうのが今のトレンドです。
逆にディフェンス側も、しっかりとジャッカルしてるプレーヤーに対してボールを守るためにバーンて倒れるっていうことも、この人が逆に言えば反則になります。なのでお互いに立ってコンテストをしましょうというのが、そのタックルした後の規則になります。
なので、3つですね。
①タックルしたプレイヤーは、すぐにどいて自分のチーム側に戻りましょう
②お互いしっかり玄関を守りましょう
③手をつかずに倒れずにボールにしっかりプレーする、もしくは倒れずに相手を剥がしていきましょう
っていうのが、主にブレイクダウンの3つのルールになるので、笛が吹かれるところ、ペナルティになるとこって大体この3つです。他にもいくつかありますが、7割~8割はこの反則が取られます。
ペナルティで笛が吹かれた時に、
①タックルしたプレーヤーがどかなかった・どけれなかった反則は「ノット ロール アウェイ」となります。
これが出たら「タックルしたプレイヤーがちゃんと自分のチームに戻らなかったんだな」と思ってください。
②玄関を守らなかったら「オフ ザ ゲート」っていう反則になるので、ゲートは「門」。オフは外。門の外を通って入ったと言う意味で、オフ ザ ゲートと言ってます。
③地面に足をついている「オフ フィート」と言う反則。これは、海外や今回のワールドカップでは「オフ フィート」の言い方で統一されると思うんですけどフィートは「足」、が「足がオフ」してる。なので、しっかり立ててない。なのでオフ フィートっていう形で説明が出るんじゃないかなというふうに思ってます。
今はテレビで見ていても結構親切に、反則した後にこういう反則ですよっていうのが出てくると思うので、今日の説明を考慮しながら見ていただけると、よりわかりやすく見えるんじゃないかなというふうに思います。
●「ノット ロール アウェイ」を狙って相手を押さえつける事はルール的にどうなの?どこうとしていれば反則にはならない?
参:
子供が小学生の高学年で、そのレベルでも「ノットロールアウェイ」のルールを知っていて、わざと相手をどけさせないようにしているのはルール的にどうなのでしょうか?
また、逆にどこうとしていれば反則にはならないのでしょうか?
川:
シチュエーションにもよるかとは思いますが、どこうとしているのに、どかさないようにしているのは、ズルいですよね。
なので、僕たち(レフリー)はどこうとしている相手ではなく、どけさせないようにしているプレーヤーに対して、アプローチする必要があると思うんです。
例えば笛を吹かずにコミュニケーションを取るようにします。押さえているプレーヤーは、「この人は邪魔になりませんか?」って聞いてくると思いますが、「あなたが押さえているよね」っていう伝え方を僕達(レフリー)はします。
なので、僕は笛を吹かないよ。早くボールを出したいんだったら、押さえつけないでね。と言う風に「おさえないプレー」を促していきます。
もう1個のケースは、例えば相手にビッグゲインされて、タックルしました。相手が早く「バババババ!」って入ってくるとどけなくなっちゃうんですけど、それはビックゲインされた人のせいですよね。
なので、その人がどけれなかったら、責任を取らないといけないですよね。「相手がたくさん来てどけなかったから許してくださいよ」っていう言い分もわかるんですけど、逆にアタック側からすると、「せっかくそこまで持っていって、早くボール出してプレーしたいのに立てないじゃないですか!」ってなっちゃうじゃないですか。なのでそこは、結果責任だよね、スキルが足りませんでしたよね、とか。そうなってしまった原因は、残念ながらあなたにありますよね。っていうことで笛を吹かないといけない。とは思うんです。
だけど、カテゴリーによっては、どれだけ時間を与えてあげるかとか、スキルがあんまり高くない子たちに対しては、ある程度実行できるような時間をお互いにあげるっていうことは大事だと思うので、例えば、Aチームには時間を与えたけど、Bチームにはバンってなってピッてすぐ笛を吹いたら、「さっきは相手チームを許してくれたのに!」ってなってしまうので、そこは一貫性を持って、そのカテゴリーの中でやる必要があるかなとは思いますね。
●攻撃側が「ノット ロール アウェイ」を狙いすぎるとディフェンスが有利になる?
参:
息子がラグビーをやっていて、先日も「ノットロールアウェイ」の話をしていたのですが、レフリーから見えない所で相手をどかせないよう押さえつけてその反則を誘うようにすると。そこは見ていてそうしているのが分かるものなのでしょうか?
川:
ほぼほぼ分かりますね。恐らく半分以上は分かるんですけども、分かるケースの場合、僕は笛を吹かないです。放置です。
何故かと言うと、ディフェンスは良いですよね。タックルして、動けなくて、相手からボールが出てくるのが遅くなるので、ディフェンスラインが揃う。だからディフェンスがしっかりできるじゃないですか。
アタック側は押さえつけることによって、自分たちのアタックをもう1回やり直ししないといけない時に、相手のディフェンスラインが揃っちゃった段階でやらないといけないので、損するのはその押さえつけたプレーヤーになるように持っていきます。
レフリーとしては「押さえつけてるから駄目なんだよ」と教えてあげると、そういった事をやらなくなるのかなって思います。
もう1個根本的な原因は「指導者の問題」だと思います。
そういうことをさせてることに対して、指導者がどういうふうに思うか。ラグビーってそもそもそういうスポーツじゃないよねっていうことを、僕は伝えてあげるべきだなと思います。
少し話がズレてしまいますが、ラグビーというスポーツをみんなで作っていくために、そういう議論を、レフリーと指導者と選手とみんなでやっていく必要があるのかなとは思います。
●押さえつける行為は、ルールの追加でペナルティになっていたと思うのですが・・・?
参:
ちょうど今年の夏ぐらいに出てきた追加のレフリング情報で、どこうとしてる人を押さえつけるのはペナルティって追加されていたかと思うのですが・・・。
川:
一応そういうふうには書いてるんですけど、それが本当にわざとやっているかどうかってレフリーが判断するのはかなり難しくないですか?
なので、そういったプレーが続くようであれば、それはルールブックの中にある、『あたかも相手を反則させてるように見せる行為』に対するペナルティーなので、「ペナルティーキック」が与えられます。なのでそれを適用してるんですけど、あまり今までそういうことはなかったんです。
でも、そういう押さえつけるプレーが出てきたので、日本協会のガイドラインとしても、もしもそういう行為が起きたら、笛を吹きましょうねっていうのは確かに出てきてるんです。
それを吹くかどうかというのは、レフリーが本当にそれが100%確証があって笛をつけるかどうかってのも1つです。
また先ほどの話の中の方法は、ステップとしてはステップ1なので、どちらかと言うと「伝えてあげる」。まずは、笛を吹かない。笛を吹かずに、その選手に伝える。
ステップ2としては、それでも続けるようであれば、それはもう駄目だよねって笛を吹くっていうステップ2かなと思うんです。でも、基本ステップ1をしっかりやれば、ステップ2にはいかないです。
いきなりピーッって笛を吹いて、「押さえつけてる!」って言われた時に、本当に押さえつけているどうかが難しくないですか?っていうのはあるので、そうした中で100%笛を吹くのか?っていうところでいうと、1つ目のステップとして、そういうふうに伝えてあげるっていう事の方が良いのかなと思います。
それで押さえつけられても、あまりディフェンスは損をしないので。もちろんレフリーが笛を吹かなかったらですけどね。
成:
この話って結構入り組んでくるので、アフターマッチファンクションぐらいで花が咲きそうですね (笑)
-----第2部に続く-----
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