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物語で勝手に経済学その1

はじめに

この物語は現代社会で働くサラリーマン達が苦しんでいる原因を明らかにするために、労働とは何か、働く意義とは何かについて物語形式で考察する目的で記述します。登場する固有名詞は実在するものとは一切関係なく、登場する経済用語は経済学で使われている用語とは別に新たに定義し直していることから正確性に欠けることについてご了承ください。それでは物語を始める前に早速本稿で出てくる重要な用語についてまず定義いたします。

資源 : 人間が労働力を行使せずに入手することができる価値ある物品
労働 : 資源に付加価値を付ける行為、消費できるように変形すること
商品 : 労働によって付加価値をつけられた後の資源のこと
消費 : 商品の価値を無価値に変換し自然に返すこと
自然 : 資源を生み出すもの
価値 : 貨幣に換算して評価した数値

すでに受け入れられない人もいるかもしれませんが、具体的な性質については物語の途中で都度解説していくことにいたします。

それでは物語のはじまりはじまり〜

狩猟採集社会

むかしむかし、あるところにリンゴの木と梨の木がありました。どちらの木も毎日一つづつ実をつけるので、毎日リンゴと梨を食べることができます。

ある時、人間が二人やってきました。人間はどちらかの実を毎日一つ食べれば生きていけます。なので、一人はリンゴの木をもう一人は梨の木から毎日実を得ることで暮らしていくことにしました。

*解説1
これが狩猟採集生活です。自然界で発生する資源を採集することによって生活を営みます。人間の労働は採集することに使用され、その結果として食料を得てそれを消費することになります。したがって、最初に定義した各項目は次のようになります。

資源 : リンゴ1個、梨1個(木に実っている状態)
労働 : 人間二人がリンゴ1個と梨1個を取る行為
商品 : リンゴ1個、梨1個(食べられる状態)
消費 : リンゴと梨を食べること
自然 : リンゴの木1本、梨の木1本

物語は続きます。リンゴの木を持ってる人は思いました。「たまには梨も食べてみたい。」梨の人もリンゴが食べたかったので二人は時々、リンゴと梨を交換し食べる事にしました。

*解説2
これが物々交換です。このとき、先ほどの資源~価値の項目を確認してみて下さい。すべての項目が何も変わっていないことがわかると思います。商品同士を交換しても市場全体では何も変化を伴わないのです。

リンゴの人はある時思いました。「もっとお腹いっぱい食べたい」そこでリンゴの人はいろんな森に出かけて行き、遠くの森にもう一つリンゴの木を見つけます。リンゴの人は遠くの森まで毎日行って、毎日リンゴを2つ食べるようになりました。

*解説3
これが消費の拡大による経済成長です。市場(消費量)は実が2つから3つに拡大しました。市場規模を測るには消費量を測れば良く、商品の供給が無ければ消費ができないので市場は拡大しない事が分かります。

資源 : リンゴ2個、梨1個(木に実っている状態)
労働 : 人間二人がリンゴ2個と梨1個を探して取る行為
商品 : リンゴ2個、梨1個(食べられる状態)
消費 : リンゴ2個、梨1個
自然 : リンゴの木2本、梨の木1本

しばらくすると生活に余裕ができ来たリンゴの人は子供を産んで養うことにしました。自分の食べるリンゴの数はもとに戻りましたが、将来が楽しみです。

*解説4
こちらは人口増加による経済成長です。市場(消費量)は実が3つのままで、解説3の状態から変化はありません。人口が増加することによっても市場は拡大するのです。


農耕社会

リンゴの木の家族を見ていた梨の人は自分も梨の木を探そうと頑張り、遠くの森で新しい梨の木を見つけます。そしてリンゴの木の人と同じように子供産んで養うことにしました。

*解説5
状況を整理しましょう。また項目を一つ追加します。市場規模において人口はとても大切です。
人口 : 消費行動をする人間の数

資源 : リンゴ2個、梨2個(木に実っている状態)
労働 : リンゴ2個と梨2個を探して取る行為
商品 : リンゴ2個、梨2個(食べられる状態)
消費 : リンゴ2個、梨2個
自然 : リンゴの木2本、梨の木2本
人口 : リンゴ家族2人、梨家族2人 合計4人

ある時、二人の子供は思います。
「遠くの森まで行かなくても実を手に入れることはできないだろうか?」
二人は家のお手伝いをやめ、リンゴと梨を手に入れる方法を研究し始めました。リンゴの人は自分の子供に言いました。好きなだけ研究をしなさい。その間私がリンゴを取ってこよう。上手くいったらリンゴを分けてね。
梨の人も自分の子供に言いました。研究をしてもいいが、その間の梨は貸しにしとくからな。将来ちゃんと返せよ。
二人とも親からのプレッシャーを抱えながら必死で研究を続けるのでした。

*解説6
はい、出てくるのが早いですがこの時のリンゴの人のやり方を投資、梨の人のやり方を融資といいます。まあこれは本筋とはそれるので置いておいて、
ここで新しい概念を導入しましょう。
一人の人間が一日頑張って仕事をした場合、1人工かかるとします。この世界の4人はだれもさぼらないので、毎日4人工かかって市場を維持しています。つまり、研究にそれぞれ1人工かけているわけです。
ただし、この活動はまだ市場に何も影響を与えていません。活動の成果がないからです。穀潰しなんて言われますが、まさに人工を無駄に失っているように見えます。つまり、状況はこのようになります。

資源 : リンゴ2個、梨2個(木に実っている状態)
労働 : 2人工(つまり実1つ当り0.5人工)
商品 : リンゴ2個、梨2個(食べられる状態)
消費 : リンゴ2個、梨2個
自然 : リンゴの木2本、梨の木2本
人口 : 4人

物語は続きます。子供は二人とも無事に挿し木という方法を発見します。農業革命です!!
これで、遠くまで取りに行かなくてもよくなったので採取は実1つ当たり0.5→0.1まで楽になりました。しかし、挿し木の木は育成が弱く、毎日の世話に0.5人工かかります。なので、それぞれの家族は木を3つ増すことで、それぞれ合計4つの木を所持し、毎日4つの実を消費するようになりました。(挿し木の木3つの維持に1.5人工、採取に0.4人工で合計1.9人工)

*解説7
状況が変わったので整理します。
資源 : リンゴ4個、梨4個(木に実っている)
労働 : 3.8人工(実の採取0.8人工、挿し木の世話3.0人工)
商品 : リンゴ4個、梨4個(食べられる状態)
消費 : リンゴ4個、梨4個
自然 : リンゴの木4本、梨の木4本
人口 : 4人


物語に戻りましょう。農業革命によって、資源の採集効率が上がり人々はそれぞれリンゴ2個と梨2個を消費するようになりました。個人消費が2倍になったのです。
ただし、その分忙しくなっています。研究に掛っていた2人工を除くと、人間4人は2人工で生きることができたはずです。なのに、世界全体では3.8人工の労働が必要となったのです。

*解説8
こうなってしまう理由はなぜなのでしょうか?確かに、個人消費が上がっているのが原因だとも言えますし、無駄な労働をしているとも言えますが、目指すべき目標が変わっているのが大きく異なります。
狩猟採集社会では生きることが目標です。なので消費は生きる上での最低限度で維持され、労働はそれに見合うものとなります。本稿では生存主義と命名しましょう。一方で、農耕社会は挿し木の本数を決めるときに最大労働を基準に決めております。最大で4.0人工の世界なので維持できる最大の本数が6本の3.6(+最初の木2本採取分0.2)人工になってしまうわけです。これはつまり最大の生産量を求めているということでもあります。なので、本稿では生産主義と命名しましょう。この主義の違いは今なお続く共産主義と資本主義の違いにも深く根付いてしまっていると思います。
ただし、農耕社会では無限に生産を拡大することはできません。作付け面積や単位面積当たりの取れ高などの資源による規定によって人口が規定され、最大の労働力が規定されたものと思われます。そのため、狩猟採集社会よりも個人消費は拡大したかもしれませんが、労働としては厳しくなったものと推測されます。

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