入院のつらさの中にひそむユーモア
先日、なぜ私はnoteのアカウントを消して、そしてまた復活したのかということを記事にした。
せっかく復活したのに、アカウント名が同じだとなんかおもしろくないので「しろ」から「くろ」に変えてみた。それは、そう「安室奈美恵withスーパーモンキーズ」が「MAX」になったように。もう「TRY ME」は卒業である。残念ながら「恋してマスカット」どころではなくなってしまった。
ところで、先日の文章の中で、私は血を吐いて倒れ入院したことに少し触れた。たくさんの方々にご心配をいただき、温かいそしてコメントももらい、大変申し訳ないと同時に嬉しい気持ちでいっぱいである。
大きな病気をしたことがないということのみが人生の唯一の自慢の私にとって、今回の入院はかなりの衝撃であった。
その中でいろいろな体験や経験をした。ただただ辛かったこと、恥ずかしかったこと、とても痛かったこと、入院というシリアスな状況でありつつおかしみのあることなどである。
いろんなタイプの経験をして、たくさんのことを考えたので一回の記事で全てまとまりそうにはない。そこで数回に分けて、入院記事は書いていきたいなと思っている。
そんな中で、今回はつらい中でも面白みがあったことを書きたいなと思う。
まだ私は入院中であり、シリアスなことを書くと気持ちが沈みそうだからである。
なんとか今のつらい状況の中にユーモアを見出して生きる力としたい。
私が最初に入った病棟の患者さんには、すてきなおじいさんやおばあさんが多かった。今回はその人たちのことを書きたい。
もちろん、プライバシーのことを考慮して、フィクションもいれつつ、本人が特定されないように表現していく。ただ病院のことは話題として繊細なので、気になる方はここでページを閉じて下さい。
私は病院には全く詳しくないのだが、入院病棟にはいくつか種類があることはなんとなく知っていた。まず、ICUである。これはかなり重篤な症状な患者さんが入るのだろう。
また4人部屋などの一般病棟がなんとなく普通の入院のイメージである。
そんなくらいの知識であったが、私は今回の入院でHCUという病棟があることを知った。
これは、ICUと一般病棟の中間くらいの症状の患者さんが行くところらしい。
そしてなぜ私が、HCUという存在を認知したかというと私がそこに運ばれたからである。
救急車から降ろしてもらって、病院内の救急救命室のようなところで、病院のスタッフさんたちがやけに「この人はHかな?Iかな?」とか「Hで様子を見てもらおうか」などと話していたのを、朦朧とした意識で聞いていた。
なんの略語か分からないが私は心の中で「とりあえず痛くなさそうな方でお願いします」と考えていたのだが、今こうして冷静に考えるとICUかHCUに運ぶか相談してくれていたのだと思う。
そして私が運ばれてたのはHCUであった。私は今はもうとっくに一般病棟に移っているが、HCUにいたおじいさん、おばあさんたちはなかなかユーモアの持ち主であった。
一人目は、前向きで人に優しいであろう性格が滲みでまくってしまうおじいさんである。HCUは大部屋ではあるがカーテンがひかれていて、どんな人がそこにいるか声で想像するしかない。声を聞くとだいぶ歳はいってそうだ。
そのおじいさんはわりとウトウトしていることが多かったのだが、寝言がとにかくポジティブなのである。
「グコー、いいよ!いいよ!その調子!みんな頑張ってるね!グコー、いけるよ!いける!」と明らかに寝言ではあるが、前向き発言を繰り返すのだ。
「グコー、良くやったー!」と眠りながらも達成感たっぷりである。
きっと周りの部下をやる気にさせることができるタイプの人なのだろう。典型的な褒めて伸ばす上司である。理想の上司、ナンバーワンである。
入院してHCUに入り、まだまだ身体がつらかった私もこの寝言を聞いて、病に負けずに頑張らなければと気持ちを強くもつことができた。
ポジティブ寝言は病気にも良い影響をもたらす。
二人目は高貴なおばあちゃんである。
おばあちゃんは育ちがおそらくいい。
それは言動にあらわれる。
例えば「わらわはトイレに行きたいのじゃ」と医療スタッフに要求する。一人称が高貴だ。
この病院の医療スタッフはかなり優しいので「はい、分かりました」、「はい、かしこまりました」と丁寧にそれに対して接している。
おばあちゃんが「わらわは寒い、どうにかせよ」と言うと、医療スタッフはすぐに毛布を持ってくる。
おばあちゃんはHCU内でダントツのナースコール使用率を誇り、喋り方は高貴すぎるのではあるが、なんだかかわいらしい雰囲気をもっているので病棟の雰囲気も悪くならず、医療スタッフもちゃんとそれに対応してすごいなと思った。
おばあちゃんも何かをしてもらうと「たいぎであったな」と感謝の言葉を忘れない。
このおばあちゃんの様子を見て(やりとりを聞いて)医療スタッフと患者の信頼関係があってこその医療だということが、HCUに入ってみて分かった。
ただ病を治すだけでなく人に寄り添うのも医療であることに気付いた。
そう言う私も一番大変だった時は時は「痛い」とか「つらい」をベッドの上でうわ言のように連呼していたが、医療スタッフさんたちは「そうだよね、痛いよね。今は一番つらいよね」と優しく言葉をかけて下さり大変助かった。
おかげで私の体調もよくなり、明日の検査結果が良好ならそろそろ退院できそうである。
この病院の医療スタッフさん全員に感謝である。あと少しの入院生活、医療スタッフさんに支えてもらいながら頑張りたい。
おわり