
計画的に「計画を立てない」
ちゃんと生きるって、難しい
TABI SHIRO読者の皆さんは、2025年をいかがお過ごしでしょうか。
年初といえば、昨年を振り返ったり、今年の目標を立てたり、計画に時間を割く人が少なくないと思います。かくいう私も、20代の頃は、年初に立てた目標をひとつずつ達成していく、計画的な一年を過ごそうとしていた時期がありました。
でも、目標を立てるのはあまり好きではありません。
目標を立てると、進むべき道筋がクリアになって、目的地に最短距離で到達しやすくなります。一方で、「想像できなかった場所」に行くのが難しくなってしまいます。早く行くなら目標を立てた方が良いと思いますが、遠くへ行くなら流れに身を任せるのも悪くないなと思うのです。
昨年の春から始めたPodcastも、これほど継続する番組なるとは思っていませんでした。ゴールを明確に決めなかったからこそ、長く続く番組になっている気がしますし、ガチガチに計画を決めなかったからこそ、「森の中で収録してみる」「韓国の街で収録してみる」といった、いい意味での寄り道ができたと思います。
一年の計画を入念に立てすぎないことは、私の旅のスタイルと一緒です。
旅には「無計画な行動へのギフト」が付き物で、それは人生にも言えること。だから、年始は「無」の気持ちで過ごすようにしています。すぐに仕事のことを考えてしまうところがあるので、なるべく家族との時間に気持ちを向けて、丁寧にご飯をつくって、庭の手入れをして。
いつもバタバタと毎日を過ごしてしまうので、2025年は一年を通じて「ちゃんと生きる」ことに時間を使えたらなと思っています。
計画を立てないことが、旅らしさ
年始は「無」の感情で過ごしていたので、今年はまだ旅先を決めていません。ニュージーランドやデンマークなど、興味のある国はいくつかありますが、「旅モード」のスイッチが入っておらず、それほど心が躍っていないのです。
でも、それでいいと思っています。
年始に決めた旅先が、実際の渡航日に行きたい旅先だとは限りません。その時々に心が踊る場所を訪れるのが、旅の醍醐味です。このnoteで過去に、旅と旅行の違いについて話しました。
旅行は、あらかじめ決められた場所を決められた日程で回る、いわばツアーのようなもの。一方、旅では、気が赴くままに世界を歩きます。「その土地へ行くこと」を目的とする旅行に対し、旅の目的は「何かを掴んで帰ってくること」。ある意味、とても不確実です。
そもそも旅は不確実なものなので、お正月モードが抜けてくる2月頃になってから、少しずつ旅について考えていきたいと思います。
旅を愛する私が、旅の計画を立てないのには、もうひとつ理由があります。どこに行っても、旅を楽しむことができるようになったからです。
SHIROの企業理念でもありますが、私は「世の中をしあわせにする」ために人生を過ごしています。日本が今しあわせなのかを日夜考え、みんながしあわせになるための方法をいつも模索していて、そのヒントを探すために旅に出ています。
しあわせのヒントは世界中に散らばっているので、自分の心がけ次第で、いつでも、どこでも見つけられるものです。
だから、場所はどこだっていい。
もちろん好きな旅先はありますが、それこそ計画的な旅になってしまうので、偶然の巡り合わせに期待するほうが「旅らしい」と思っています。
健全な不安は、旅と人生のスパイス
個人的な意見かもしれませんが、想像できてしまう旅は、ドラマティックじゃない気がしています。想像力を働かせることは大切ですが、想像の範疇に収まるような旅ならば、わざわざ足を運ぶまでもありません。
だからこそ、あえて無計画なまま行きたい。
無計画だと、不安で、心配で、頭の中がぐるぐると活性化します。計画的に無計画だからこそ、現地に立った瞬間に自分の頭で考え、未知の体験に驚き、見たことのない景色に感動できる。
新規出店もあり、私の中では韓国がホットトピックですが、お隣の国でさえ知らないことだらけでした。教科書で勉強した歴史は頭に入っていますが、現地を歩き、そこに暮らす人たちに話を聞いてみると、イメージがガラリと変わるものです。
新しくお店を出させていただく聖水洞(ソンスドン)は、工場地帯から韓国トレンドの発祥地になった場所なのですが、「なぜそうなったのか」という背景までは知りませんでした。
現地に行き、聖水で長くカフェや文具屋さんを営んでいる人、そこに来ている若者たちと会話をする中で、場所の背景や特徴が理解でき始めました。
どんな国にも、どんな地域にも、現地で紡がれてきた物語があります。教科書で学んだ文化を確認しに行くのではなく、知識を頭に入れつつも、現地現物の精神で歩くことが大切です。
Podcastのサブタイトルに「足を運んで、見て、聴いて」とありますが、まさにその通りです。健全な不安と焦燥感を抱きながら、現地現物の精神で旅に出かけると、想像し得ない出会いと巡り会うことができます。
旅は社会をしあわせにする手段
ゆるく年始を過ごす予定でしたが、早速、旅について熱く語ってしまいました。でも、地域や人と直接ふれあい、文化や物語を受け取って、それを繋いでいくことは、とても豊かで幸せな行為です。
そうして地域の人と知り合いになり、またいつかどこかで再会できる。そうした旅先からつながる関係性は、人生をより豊かにしてくれるものだと思います。
SHIROは今年、韓国に出店しますが、海外でお店をつくることは、出店した地域やそこに暮らす人にギフトを届け、そして受け取る行為です。これらを繰り返していくことで、物語の繋ぎ手になり、社会にしあわせを届けていくことが目的です。
旅先で受け取った文化や物語などのギフトを、自分を通して具現化させて、何か別の形でお返ししていく。この循環を、今年も楽しめたらいいな。そんなことを考えていると、なんだか旅に出たくなってきました。
(編集サポート:泉秀一、小原光史、バナーデザイン:3KG 佐々木信)