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SHIROが考える「コスメの旬」のはなし


インドに伝わる神聖なハーブ

今年も残暑厳しい日々が続きましたが、近頃は肌寒さを感じるようになり、すっかり秋らしくなってきました。化粧品も食べ物も旬が良い。そんな想いから、SHIROでは、季節の素材を味覚で楽しむように、旬の素材を肌や髪にも届けたいという想いから「旬シリーズ」を展開しています。
 
そのうちのひとつが、ホーリーバジルオイルインウォーター。
広島県東広島市で野菜づくりに取り組む、ひなた農園さんのホーリーバジルを使った製品です。ローションとオイルからなる二層式のフェイスミストで、季節の変わり目でゆらぎがちな肌に、水分とオイルの両方をバランスよく与えながら、しっとりと保湿してくれます。
 
ホーリーバジルは、インドの伝統美容においても重宝されているハーブの一種です。神聖な植物として、多くの場面で用いられていたそうです。日本では生産量の少ない希少なハーブで、私も数年前までは知りませんでした。
 
開発のきっかけは、ひなた農園さんとの関係性から。
ひなた農園さんから定期的に届けていただいていた野菜のセットに、ホーリーバジルが入っていたことでした。甘く芳醇な香りのバジルは、口に運ぶとピリッとスパイシーな味わいがしました。それまでは食べる機会がありませんでしたし、とても特徴的な味わいだったので、あのときの新鮮な感覚は今でも覚えています。

自分のあたまで考えてみる

私は20代の頃から、野菜をスーパーで買うことはほとんどありませんでした。北海道生まれということもあるのか、新鮮な野菜へのこだわりが強く、昔から定期宅配サービスを利用していました。ずっと地元・北海道のお野菜を購入していましたが、土地柄から冬は根菜が中心になってしまいます。
 
どこから野菜を購入しよう。
そう考えていたとき、SHIROの本社や店舗にお花を生けてくださっている「TSUBAKI」の山下郁子さんからご紹介いただいたのが、ひなた農園さんでした。ホーリーバジルに出会ったのは、かれこれ4年前のこと。ちょうどコロナ禍のステイホーム期間中に、いただいた野菜セットの中に入っていました。
 
日本ではあまり見慣れない植物です。
栽培している農家さんも、そう多くはありません。なぜ、ひなた農園さんはつくっているのだろう。疑問に思って尋ねたところ、思いもよらぬ理由を聞かせていただきました。
 
少し前のことに感じますが、2020年の世界はコロナ禍にありました。
当時は外出することさえ恐ろしい日々で、どこに行くにしてもアルコールで手指消毒をしていました。お店に入るときも、ご飯を食べるときも、家に帰るときも、ずっと消毒をしていました。ところが、アルコールによる過度な手指消毒は、ウイルスへの感染防御力を低下させる可能性があると言われています。混乱の渦中にあった当時は情報が錯綜し、正しい知識を持っている人は少なかったと思います。
 
ひなた農園さんは、そうした消毒ばかりの状況に危惧を抱いていたそうです。そういった背景から、栽培を始めたのがホーリーバジルだったといいます。アルコールで殺菌するのではなく、抗菌作用や抗ウイルス作用を持つホーリーバジルなら、より自然に近いかたちで感染予防ができるのではないか、と考えたそうです。
 
私はその問いかけにハッとしました。
みんなが「いい」と言うことが、必ずしも正しいとは限らない。もっと自分のあたまで考えないといけないと思いました。そうした経緯があり、SHIROもホーリーバジルからつくる手指消毒製品の開発を目指すことにしました。
 
とはいえ、植物は育てるのに時間がかかります。
製品をつくろうと決めてから実際に素材を購入させていただけるまで、どうやって開発しようかと準備を進めていました。試行錯誤の末に、手指消毒製品よりもいい使い道が見えてきて、ホーリーバジルオイルインウォーターにシフトしました。ホリーバジルが持つ抗酸化作用の効果からに目を付け、フェイスミストを開発したものです。

「引き算」で考えることの重要性

ホーリーバジルオイルインウォーターは、発売当初と現在の製品では、見た目がかなり違っています。あることがきっかけで製法を変えたからです。以前は、ホーリーバジルを蒸留した蒸留水に精油や他のオイルを加えたり、乾燥させたものから抽出された茶色のエキスを加えたりして製品化していました。乾燥させたホーリーバジルのエキスを加える方が濃縮して効果が最大化されるのではないかとの狙いからです。乾燥させた茶色のエキスを透明な蒸留水に加えると、製品そのものも赤茶色になります。
 
ところが昨年9月、ひなた農園さんを訪れた時に、発見がありました。
きっかけは、製品を手に取ったひなた農園さんの子どもたち、奏太くんとこころちゃんです。

「蒸留水は透明なのに、製品はどうして色が付いてるん?」

ひなた農園さんとは毎年、収穫したホーリーバジルを持って、ご家族と一緒に淡路島にある蒸留所で蒸留をしています。子どもたちはそこで、透明な蒸留水を目にします。でも、自宅に送られてくるSHIROの製品には色がついている。この単純な違いを不思議に思い、率直に質問を投げかけてくれたのです。
 
私にとっては新しい発見でした。
というより、それまで全く疑問に思ったことがありませんでした。でも、考えてみると奏太くんとこころちゃんの言う通りです。乾燥させたホーリーバジルのエキスを使うということは、乾燥させる期間分だけ、旬から遠くなってしまいます。実際、フレッシュな状態のまま製品化した方が素材の香りが強く残り、より気持ちよく使っていただけます。
 
この気づきを得てから、より旬な製品をつくろうと改良を重ね、2023年から新処方へと生まれ変わりました。2023年以降の製品は、ホーリーバジルの蒸留水と精油を活かしたシンプルな透明のミストで、よりフレッシュな香りを楽しんでいただけます。
 
スーパーで売っている野菜と、産地から直接送っていただいた旬の野菜は、食べてみるとしっかり違いが感じられます。味や食感はもちろん、活力が違うのです。私が大好きなひなた農園さんのトマトは、包丁を入れても弾けるくらいの張りがあります。
 
同じように、製品も無農薬で旬の素材からつくられているほうが、やっぱり嬉しい。肌に付けるものですから、からだに入れる食べ物と同じように、フレッシュなほうがいいはずです。SHIROがものづくりの上で大事にしている、シンプルであることと、引き算することは、ひなた農園さんの子どもたちが教えてくれたものでもあるのです。

あの震災で人生をシフト

ひなた農園さんは、もともと東京のフラワーショップに勤めるご夫婦でした。いずれはご夫婦でフラワーショップをつくり、東京で独立する予定だったそうです。ところが、2011年の東日本大震災を経験し、人生の計画をシフトしました。自分たちの手が届く範囲で、大切な人の暮らしを守っていく人生です。故郷の東広島に戻ったおふたりは、無農薬・無化学肥料で野菜をつくる、ひなた農園を開業されました。
 
私はおふたりの考え方が大好きです。
自分が好きなことをやるだけではなく、社会のことや、未来のことも考えていらっしゃいます。無農薬・無化学肥料で野菜づくりをしているのは、「子どもたちや後の世代に残したいものをつくる」という想いからだといいます。
 
SHIROとひなた農園さんは、とても近い考えを持っています。
私たちも、後世に美しい地球を残したいと考えているからです。今年の製品も、自然の都合に合わせて栽培させていただきました。猛暑のせいか、ホーリーバジルの成長はゆっくり。本来なら2週間ごとに収穫するのですが、予定通りにいかないこともありました。でも、植物が自分たちのペースで育つのをじっくり待ちました。
 
すると、時間をかけて成長したぶん栄養もぎゅっと凝縮されたのか、蒸留所に溢れかえる芳香は、いつもよりも甘く感じられました。人間の都合に合わせていたら、これだけ素敵な仕上がりにはなっていなかったはずです。
 
ホーリーバジルオイルインウォーターは数量限定ですが、興味を持っていただけたら、ぜひお手に取ってみてください。ミストを浴び、胸いっぱいに深呼吸をすると、朝日を浴びてキラキラと輝くホーリーバジル畑の中に立っているような、心地よい香りに包まれます。

(編集サポート:泉秀一、小原光史、バナーデザイン:3KG 佐々木信)

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