SHIRO、韓国へ。今、ソウルに出店する理由
韓国出店を決めました
「TABI SHIRO」読者の皆さんに、お知らせがあります。
まだ会社として公式にリリースを出していませんが、SHIROは韓国に出店することになりました。お店の場所は、ソウルの東部に位置する聖水洞(ソンスドン)。かつては工場地帯でしたが、現在は再開発によってオシャレなお店が立ち並ぶエリアになり、韓国トレンドの発祥地になっています。2025年4月末のオープンを目指して、まさに今、準備をしているとことです。
韓国への出店は、私の目標のひとつでした。
何度も訪れていますが、とてもいい人たちばかりですし、ごはんも美味しい。買い物だって楽しいし、音楽などのカルチャーも絶好調。大好きな国にSHIROを出店できることになり、とてもワクワクしています。
ただ、海外への出店は一筋縄ではいかないもの(笑)。
すでに物件を契約していて、家賃も発生中ですが、無数のやるべきことに追われていて、バタバタとした毎日を過ごしています。
海外出店というと、聞こえがいいかもしれません。
でも実際は、クリアしなければいけない課題がいくつもあります。今日は皆さんに、韓国出店プロジェクトが「どれだけうまくいっていないないのか」を実際にお話ししながら、ブランド経営の本当のところをお伝えしたいと思います。
答えのない「異文化との馴染み方」
韓国といえば、今や世界の流行の発信地です。
K-POPやコスメが大人気ですし、ドラマも世界的なヒットを記録しています。観光地としても人気で、これまで何度も進出を考えていました。それでも出店できずにいたのは、SHIROの考えを貫き通すのが難しいと感じていたからです。
トレンドの発信地であることは、「つくっては壊す」ことの裏返しでもあります。聖水ではポップアップストアがたくさん並び、一気にものが売れ、気付いた頃には飽きられている…。そんな光景が、日常茶飯事の街なのです。かつてのSHIROと同じように、OEM事業で成長した韓国の会社の社長さんともお話ししましたが、「同じ製品をつくる機会はほとんどない」とおっしゃっていました。トレンドが目まぐるしく変化するので、飽きられないようにどんどん新しいものをつくるそうで。
そのため、環境問題に真摯に取り組むパートナーになかなか出会えませんでした。できる限り環境に配慮したお店づくりをしたいのですが、森林業者さんにも出会えないし、産業廃棄のプロにも出会えない。相談に行っても、話を聞いてもらえずに終わってしまうことばかりでした。
今やSHIROのお店づくりの特徴になっている「森林」と「産業廃棄物」が使えず、どうしたものかと頭を抱えていました。…というよりも、今も現在進行形で悩んでいます。長く愛していただけるブランドになるために、韓国の皆さんにも喜んでいただけて、なおかつSHIROの世界観を伝えられる方法を考え続けていたら、出店を決意するだけで長い時間がかかってしまいました。
知れば知るほど、わからない
ようやく出店を決められたとはいえ、最適解を見つけられたわけではありません。韓国の空気感を掴むために、現地の皆さんとお話をしているのですが、やはり日本とは文化も考え方も異なります。
日本語が堪能な韓国人女性とタッグを組んでいるのですが、過酷な受験戦争が存在することもあり、「どんなことをしてでも上を目指す」というハングリー精神を持つ人が多いそうです。そうした気持ちは経済成長を後押しするものですし、創意工夫へのあくなき情熱がトレンドをつくっているとは思います。でも、それを続けていると地球が 壊れてしまいます。
SHIROの製品を手に取っていただくための取り組みはすでに検討済みで、きっと多くの方がお店に訪れてくれると確信しているのですが、「製品が売れればそれでいい」わけではありません。素晴らしい製品やトレンドが生まれる韓国の特徴をリスペクトしながら、それでいてSHIROの考えをお伝えしていくには、どうすればいいのか…。
まだ、答えにたどり着けていないのです。
リサーチをするのはいいものの、韓国を知れば知るほど、どうすればいいのかわからなくなっています。とはいえ、目標とする「4月オープン」へのタイムリミットは刻々と迫っています。絶対に間に合わせなければいけないというわけではありませんが、家賃をお支払いしているので、ダラダラすることも許されない。
残された時間は、環境問題に真摯に取り組んでいる若手の皆さんと出会うために使おうと思っています。廃材をベースにした資材づくりをしている方もいるにはいるそうなので、なんとかして「韓国でしかできないSHIRO」をお見せできるように頑張ります。
海外にお店を出すということ
こうして本気で悩めることは幸せでもあります。
絶賛苦悩中の韓国出店は、これまでの海外進出を省みる機会になりました。ロンドンやニューヨーク、台湾にお店を出してきましたが、本当にその国を知る努力をしてきたかといえば、そんなことはなかった気がします。毎月のように足を運ぶことはなかったし、現地の人と会話を重ねる機会も少なかった。
海外にお店を出すということは、現地の皆さんに「はじめまして」の挨拶をするということです。届けたい想いがあるのであれば、相手のこともしっかり知るべき。今までに増して、その重要性を痛感できているのは、苦悩が伴うとはいえ、とてもありがたいことだと感じています。
先のことはわかりませんが、もし韓国以外の国に出店することがあるならば、この経験は財産になるはずです。韓国進出を成功させられるかは、SHIROの未来を占う試金石だと思っています。そのためにも、残された時間でできる限りのことをする。そして、SHIROの想いを、韓国の皆さんにしっかりと届ける。絶対に成功させます。
答え合わせは、数ヶ月後。
無事にお店をオープンできたら、皆さんにもお伝えする予定です。韓国を訪れた際には、足を運びたいと思っていただけるお店をつくるので、楽しみにしていてください。
(編集サポート:泉秀一、小原光史、バナーデザイン:3KG 佐々木信)