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韓国の若者は、自国を「発展途上国」と表現した


旅のきっかけは「わからない」から

韓国への出店をお知らせしてから、もう2ヶ月以上が経過しました。
このnoteやPodcastで、期待と焦燥感が入り混じった「ぜんぜん順調じゃないんです」という本音を、皆さんに共有してきました。
 
韓国は、東京から飛行機で2時間ちょっとで行ける「お隣の国」。
韓国の食事は日本人にも馴染み深く、K-POPやドラマを始めとするエンタメカルチャーも身近なものです。
 
でも、実際に足を運んでみると、そこには「知っているようで知らなかった文化や空気」がありました。知れば知るほど、韓国がわからなくなっていました。迷路に入り込みなかなか「これが韓国で表現したいSHIROです」と胸を張って言える形をイメージできずにいました。
 
すると、探究心に火が付いたのか、Podcastで一緒にMCを務める泉さんが、収録終わりに韓国行きのチケットを購入。「僕も本当の韓国を知りたい」と、現地で一緒にリサーチをすることになりました。
 
予想もしていなかった展開で始まった韓国リサーチの旅ですが、幸いなことに、出会いと発見が連続する旅に。今日は、泉さんと一緒に旅した韓国で見つけた、私たちの知らない韓国についてのお話です。

私たちが知らない、発展途上の韓国

今回の旅の目的は、「韓国の若者の感覚を掴むこと」。
 私たちは、韓国で生まれたわけでもなければ、育ったわけでもありません。K-POPはよく聞きますし、サムギョプサルが大好きですが、その土地に生きる人々の感覚や空気を真に理解しできていません。
 
それでも、少しでも現地の人の感覚に近づくことで、韓国への出店を素敵なイベントにしたい——。その想いから、現地を歩き、直接会話を交わしてみることにしました。
 
私は旅の後半に合流したのですが、泉さんは“ほぼノープラン”で韓国へ。
旅の前半はたった一人で、これといった計画もないまま、偶然のつながりだけを頼りにヒアリングをしていたそうです。泉さんと現地に暮らす人々をつなぐ“旅のしおり”になったのは、学生を中心に若い世代が集う「日韓交流会」 。現地に到着した翌朝にアポを取り、交流会を主催する日本人の女性に、若い韓国人を紹介してもらったのだとか。
 
現地に暮らす人がハブになり、数珠つなぎ的に人を紹介してもらいながら、韓国に生まれ育った人たちに話を聞いていく。およそ10日間のフィールドワークで、泉さんが「最も印象に残った」と言っていたのは、韓国第五の都市・大田(テジョン)で出会った大学4年生のパクさんだったそうです。
 
パクさんは、生まれ育った韓国を“精神的発展途上国”だと言っていたそう。
「経済的には先進国といえるかもしれないけれど、そこに暮らす人々の心は発展途上だ」と。
 
韓国は受験戦争が厳しく、世界的にも比較主義が強い国だと言われています。
パクさん自身も、幼少期から学力で優劣を比較されて、いわゆる「いい会社」に入れなければ親戚から嫌味を言われ、わかりやすいステータスを手にすることが成功者の証とされる社会を生きてきたそう。
 
しかし、「自分の子どもには、そうした風潮を押し付けたくない」と言います。これはパクさんが特殊な感情を抱いているわけではなく、若者の多くに話を聞くと、同じような感覚を持っているそうです。
 
韓国は現在、価値観が多様化していく過渡期にあります。
パクさんはこれを、“精神的発展途上国”という言葉を使って表現しました。パクさんが教えてくれた韓国は、現地を歩き、現地に暮らす人の声を聞かなければ、知り得なかったものです。

韓国で「未来のお客様」に出会う

今回の旅を通じて、「現地に暮らす人々の声を直接聞くこと」の大切さを痛感しました。
 
これまで私が参加したフィールドワークといえば、その道のパイオニアや、仕事に精通したビジネスマンたちに話を聞くことがほとんど。消費者の傾向や現地の空気を、データをベースに紐解くのが基本的なスタイルでした。
 
しかし、今回のフィールドワークには、あらかじめ用意されたデータは存在しません。いわゆる“市井の人”に、自分たちが聞きたいことを、直接聞いてみました。街ゆく人に声をかけるフィールドワークは、効率的だとはいえません。どこに答えがあるのか、そもそも答えというものが存在するのか、誰にも分からないからです。
 
ただ、話を聞かせてくれる人たちは、これからSHIROの製品を使ってくださるかもしれない「未来のお客様」である可能性があります。
 
ものづくりをするうえで、お客様の声ほど重要なものはありません。
お客様がいなければ、ブランドは成立しませんから。そういう意味では、これからお客様になっていただけるかもしれない皆さんに直接話を聞かせもらうというのは、本当に貴重な経験でした。
 
あたりまえですが、人間にはグラデーションがあります。
同じ「日本人」でも、考え方に違いがあれば、価値観もさまざまです。それは当たり前として認識していますが、実際に話を聞くことで、解像度が高まりました。自分の足で韓国を歩き、自分から声をかけてみたら、データが教えてくれない情報や感情をたくさん集めることができました。

物質的な豊かさより、人間としての強さを

韓国の若者たちに話を聞いてみたら、10年後、20年後の韓国は、今とは大きく変化していくような気がしました。
 
22歳のパクさんは、自分の子どもが「周囲の人を愛せる人になってほしい」と言っていたそうです。韓国語で「情が深くて思いやりがある」を意味する「多情(タジョン)」な人間になってほしいと。
 
一概には言えませんが、韓国の若者たちの多くは、物質的に豊かな社会を目指すことよりも、人に優しく、弱いものを守れる人間になることに重きを置き始めているように思います。彼らが子どもを持つ親になる頃には、きっと、韓国の価値観は多様になっていくはずです。教育に対する考え方も、教育の仕方も変わっていくでしょう。
 
韓国でのフィールドワークを通じて、いくつもの“生の声”に出会い、データでは拾いきれなかったかもしれない本音を拾うこともできました。フィールドワークを通じて再認識したのは、私の根底にあるのは、やはり“現地現物”が大切だということ。

今回の収穫を学びに変え、遅々として進まない韓国出店も、必ず納得できる形にします。

(編集サポート:泉秀一、小原光史、バナーデザイン:3KG 佐々木信)

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