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なぜSHIROは、「広告宣伝」をしないのか?


「もう宣伝はしない」と決めた日

恋人や家族、長い付き合いのおともだち。

大切な誰かに贈るプレゼントを選ぶとき、相手が大好きなブランドや、自分が誰かにあげたいと思えるブランドの製品を能動的に手に取るものです。本当に大切な相手であれば、「電車広告で見たから」「インスタで流れてきたから」といった受動的な理由では決めません。

そうであれば、自分へのお買い物も、本当に好きなものを選んで欲しい。広告を見て、なんとなく「買わされる」のではなく、自分の意思で手に取って欲しい。

そんな想いから、SHIROは「お金を払って広告宣伝をする」ことをしていません。

私の信念のひとつが「良いものは自然と売れる」というもの。良い製品と出会えば、人はそれを大好きな誰かに伝えたくなって、どんどん輪が広がっていく。だから、誠実にものづくりに向き合えば、いずれSHIROの製品も使ってもらえると信じています。

過去に一度だけ、インフルエンサーさんにお願いをして製品を宣伝してもらったことがありました。SHIROを立ち上げたばかりの2014年、まだなにも分かっていなかった、ひよっこ経営者だったときのことです。

まさに、これからブランドを広げていこうと意気込んでいた時、化粧品業界の常識として、インフルエンサーさんにお金を支払い、製品をSNSやブログで紹介してもらう手法を教えてもらいました。当時、右も左も分からなかった私は「業界の主流だから」という理由で依頼をしました。

ところが、蓋を開けてみると、3日後には半分以上の方が、製品を紹介してくれたSNSの投稿を削除していました。そういう商売だと言ってしまえばそれまでですが、自分たちが大切につくった製品が、そうした扱いを受けてしまうことに、とても悲しい気持ちになりました。

ちょっとだけ使ってみたか、もしくはまったく使っていない状態で、「SHIROの製品は素晴らしいです」と投稿されていました。消されずに残っている投稿もありましたが、私たちが書いた製品紹介のテキストが、ほとんどコピペで使われているだけ。

ビジネスとしてお願いしているので、インフルエンサーさんにはSHIROの製品に愛着はないし、スタッフが心を込めてつくった開発背景にも興味はなかったのです。

そうした苦い経験をしてから、「もう宣伝はしない」と心に決めました

「SNS炎上」の背景

ある時、その想いをSNSに投稿したことがあります。私の投稿は炎上してしまいました。

私の投稿が炎上してしまった理由は、言い回しが失礼だったからだと振り返っています。インフルエンサー“とやら”という棘のある言葉を使ってしまったために、「あまりにキツすぎる」と多くの方から叱責をいただきました。

思い返せば、わざわざそうした言い方をする必要はなかったなと思います。私にとって、そうした宣伝手法は悲しい記憶ですが、すべてのインフルエンサーさんがそうであるとは限りません。自分の意見を表明するにしても、誰も傷つけない言い回しがあったと思います。

それでも、発言の背景にある「宣伝をしない」というスタンスは、今でも変わりません。お金を払って製品を宣伝し、消費者の購買を煽ることは、能動的に製品を手に取ってくださるブランドを目指す企業が選択すべき行為だとは思えないのです。

わざわざSNSに投稿したのには理由があります。「私たちって誠実でしょ?」と発信したかったわけではなく、社会に対して疑問を投げることが目的でした。

今でこそステルスマーケティングに対する規制ができ、お金をもらって宣伝をする場合は、PR表記をつけるなどして、それが広告であることを明示しなければいけなくなりました。

しかし、かつては、あたかもお金をもらっていないかのような投稿をする事例がたくさんありました。PR会社に依頼して、多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーさんにお金を支払い、使っていない製品を「愛用しています」と紹介してもらっていたのです。

広告宣伝費が存在するということは、突き詰めると、消費者がその費用を支払っているということになります。一般的な広告宣伝費の割合は、販売価格の25%。1,000円の化粧水の場合、そのうち250円程度が広告宣伝費として計算されています。

であれば、もっと良い素材を使うなど、製品の本質的な価値を高めることに費用を使いたい。だから、宣伝をする・しないの以前に、SHIROの製品には「広告宣伝費」という項目が存在しません。

消費者はお見通し

SHIROは宣伝をしないと言いましたが、もちろんメディアの方とのお付き合いはあります。私たちの活動や製品を取り上げてくださることは、とても嬉しいことです。

純粋にSHIROを応援してくださる方たちが紡ぐ言葉は、SHIROの価値を正しく伝えてくれます。時には厳しいご指摘も含めて、ありがたい発信です。

消費者の方々は、想いのこもっていない宣伝を簡単に見透かします。逆をいえば、お金を払ってたくさんの方に内容の薄い宣伝をするより、たった一人の熱のこもった想いの方が、多くの人を動かすものです。

SHIROがまだ「LAUREL」だった頃、女優の田丸麻紀さんが、ご自身のブログでボディコロンを紹介してくださったことがありました。お願いしたわけではなく、純粋に製品を愛してくださり、日々愛用しているということを書いてくださったのです。

ブログが公開されてから、店頭でも、オンラインストアでも欠品が続くほど、製品が売れ続けました。田丸さんはご自身のインスタグラムでも、SHIROの製品をご紹介してくださいました。

田丸さんのように、SHIROを本当に愛してくださる方の言葉は、正しく届くのだなと確信した瞬間でした。

オウンドメディアの価値

会社としての想いや、製品の魅力を誤解なく届けたいなら、自分の言葉で伝えるのが大切だと思います。お金を払ってメディアに掲載してもらうことを真正面から否定したいわけではありませんが、そこに生活者が動くほどの熱量が宿るとは思えません。

それに、広告宣伝はお客様に対して、誤ったイメージを植え付けがちです。例えばテレビで体大的にコマーシャルを放送すると、どうしても出演いただいた俳優さんの印象になってしまいます。その方の肌が白ければ、「あのブランドは、肌が白いことが美しいと考えている」と思誤った認識をされてしまうリスクがあるのです。

そういった誤解を招かないためにも、SHIROは自分の言葉を届けられる、オウンドメディアを大切にしています。このnoteやPodcast番組「TABI SHIRO」もそのひとつです。

オウンドメディアは、ブランドとお客様の関係性を構築するだけでなく、ブランドとスタッフの信頼関係を深める役割も担ってくれます。

社内で研修は行いますが、誰かから聞いた情報は、少しずつ正確性を失ってしまうこともあるものです。すべてのスタッフに直接会うことは難しい中で、「TABI SHIRO」によって、音声を通して会話ができているのでは、と思っています。

そうして会話がつながり、想いがより正しく届いてくれたら、一生懸命にお話しさせていることにも意味があるのかな、と励みになります。

 (編集サポート:泉秀一、小原光史、バナーデザイン:3KG 佐々木信)


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