今宵の月に
23:00 デジタルの腕時計が示した
深いため息は今日1日を物語っていた
何も上手くいかない日はとことん上手くいかない
仕事で小さなミスをした、動揺して立て続けにまた
「君には部下の手本になってもらいたい!しっかりしてもらわないと困るよ!」
上司の言葉にぐうの音も出なかった
今年で26歳後輩も増えていき、高卒で就職したわりにはちゃくちゃくと仕事をこなしていった
なんの希望も持たずに就職したけども向いていた、ラッキーだ
でも今日は単純に体調が悪かった
37.5 朝起きてこの体温
行くか迷うギリギリだが行った
無理はするものじゃない
自分のミスのカバーにこんなに時間を使ったのは初めてだった
熱があるんです なんてミスしてから言えなかった、なんか負けたような気がして
気付けば23:00明日休みでよかった
そう思って空を見ると綺麗な満月がこっちを優しくみていた
いや目なんかついてないから見てないと思うけど、そう感じた
風邪で弱っているせいだ。月にも構ってほしいなんて笑える
駅のホームにはまばらな人たち
皆スマートフォンに夢中だ
優しいあなたに気付いているのは私だけで
あなたを独り占めにしてる気がした
やっぱり弱っている
でも、久しぶりにみた満月は優しかった
時折かかる雲も私からの視線に照れているのを隠すようだった
落ち着いた、なんだか
油断すると大きなあくびがでた
年頃の女子らしからぬ大きなあくびが
満月だけがそれをみていた
「なに見てんだよ…」
照れて満月にツッコミをいれた
やっぱり風邪で弱っている
全部風邪のせいだ
でも悪くないと思えたのは23:00出会えたあなたのおかげ 「ありがとう」
また雲がかかっていた
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