知床ガイドの落語・・・五湖徳
道楽が元で親から勘当されて、知床のガイド会社・雪乃屋の二階に居候の身の徳兵衛。ある日ふとガイドになりたいと言い出します。
親方:若旦那、ガイドは朝が早いんですよ。あなたみたいに朝に弱い人はガイドなんぞになれやしません。
徳兵衛:なれやしねえったって、やってみなきゃわからねぇじゃねえか。
親方はガイドの大変さを一生懸命に説くのですが、
徳:そうかい、そうかい、親方のとこが駄目だって言うなら、よそへ行ってガイドになるよ。SOT!っていう会社は親方もおかみも優しいっていうからそっちで世話になる。
となんともききません。
親:若旦那、雨も風でも大雪でもガイドの仕事がありますが、本当に辛抱できますか?
徳:ああ、まかせとけ。
そんなにまで言うならと親方はしぶしぶ承知してガイドたちを集め、徳兵衞をガイド仲間へお披露目します。親方はガイドに”若旦那”と呼ぶのはおかしいので、これからは「徳」と呼び捨てにすると言って徳兵衞をガイドの仲間入りをさせます。
今日は二校の修学旅行の対応で大忙し。ガイドたちは出払ってしまい、事務所には徳さん一人。そこへなじみの客が友達を連れてやって来て、知床五湖をガイドしてほしいと言いました。
おかみは今日はガイドは出払ってしまっていないと断るのですが、客は麦茶を運んできた後に柱に寄りかかって居眠りを始める徳兵衞を見つけます。おかみさんはどうにも断り切れずに、徳兵衞がガイドをすることになりました。
久しぶりの客に張り切る徳兵衞。客を待たせてひげをあたり、サイドブレーキを引いたまま送迎車を出そうとしたり、知床五湖とは反対の方向に車を走らせようとしたりして、「ここからバックで行った方がガソリンが節約できまして・・・」なんて言いながらも、なんとか知床五湖に着いた徳兵衞。フィールドハウスのスタッフに、
徳:ちょっと大ループを回ってくるよ。
スタッフ:徳さん一人で大丈夫ですか?
なんてやりとりするもんだから、お客は急に不安になります。
徳:この間、途中で子連れのお客とはぐれたけど大丈夫です。
歩き始めてみると、声は小さいは解説はデタラメだわ。全く話になりません。
そんなことをしていると目の前に小さなヒグマが現れます。一番驚いたのはなんとガイドの徳兵衞。熊はすぐに行ってしまいましたが、腰が抜けてしまって動けません。客は仕方ないので、徳兵衞を置いて引き返すことにします。
客:おーい、若い衆、大丈夫か?
徳:お客さーん、帰りましたらね、ガイドをひとり連れてきてくださいな。