女神さまの焦燥

＃９「ベティ・デイビスの瞳」

美しい女性に関するウソや勘違いは無数にあります。「男は痩せた女が好きだ」これは正しくは「女は痩せた女が好きだ」であります。豊満な肉体を持っていることが美しい女性の条件であった時代もあり、痩せてすらりとした体形がもてはやされる時代もあります。もちろん個人の好みの問題でありますが、大抵の男は、骨の浮き出た筋張った身体よりも、ふっくらぽっちゃり体型に惹かれます。六つに割れた女性の腹筋が好きな男は、偏執狂と思って間違いないでしょう。

「女は三十過ぎるとおばさんだ」こんなことを言っているのは日本人だけでしょう。性的に未熟な、経験値と知性の低いガキどものたわごとであります。ガブリエル・シャネルはこう言っています。「四十歳から女は本当の女になり、本物のエレガンスを身につける」と。

「一番綺麗な子が一番モテル」騙されやすいトリックであります。心理学的にも、確率論的にも、男は女性グループの中の二番目か三番目あたりに狙いを定めます。もちろんすべては主観でありますから、ランキング上位に入れないあなたも決して悲観することはありません。あなたは厳しい生物界の淘汰を勝ち抜いて存在しているのです。見た目が少しばかり綺麗だからというだけでチヤホヤされ、人間性を磨く努力を怠ってきた中身が空っぽな偶像などにはない魅力があなたにはあるはずです。

あなたの恋人や夫になる人は、あなたと過ごす時間が宝石であることに気づくでしょう。心が安らぎ、癒され、下品なジョークで笑い、豪華なレストランに行くよりもあなたの素朴な手料理が好きで、あなたと旅行に行くためにひそかに貯金しています。あなたに会えない日々が続くと、彼の胸は苦しみに耐えきれず夜の雨の中を歩きます。クリスマスでもバレンタインでも誕生日でもないのに、あなたに届いたプレゼントは、ずぶ濡れの子犬のような神様のご褒美であります。

あなたは彼を抱きしめ、泣きながら笑います。そうです、男が心から愛するものは「ベティ・デイビスの瞳」ではなく、「ジーン・ハーロウの黄金の髪」でもなく、「グレタ・ガルボの孤独な唇」でもなく、あなたのその無垢な笑顔なのであります。