ウクライナ民謡 沼(5)シェウチェンコ詩『遺言』Заповіт その1
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ウクライナ民謡 沼
今回は、ウクライナ最大の詩人と称えられる、シェウチェンコの詩『遺言(私が死んだら…)』と音楽についてとりあげたい。
本稿では、「シェウチェンコ詩『遺言』その1」と題して、ロック、レゲエ、民謡、オペラなどの歌手による演奏をとりあげる。
シェウチェンコの詩『遺言』そのものについては、次回の「その2」で詳しく紹介する。
1.シェウチェンコの表記について
タラス・シェウチェンコ(Тарас Григорович Шевченко, 1814-1861)は、長らくロシア語読みの「シェフチェンコ」と表記されてきたが、ここでは、本来のウクライナ語の読みに近い「シェウチェンコ」の表記で統一したい。
祖国に誇りを持ち、母語であるウクライナ語による詩作にこだわり、苦難の生涯を終えた詩人に敬意を表して、シェウチェンコと表記する。
(出典:ウクライナ語ウィキペディア「タラス・シェウチェンコ」)
2.お勧め動画
まずは、現代のわれわれの耳になじみやすい、ロック調の『遺言』から。
Микола Осадчий - Заповіт
ムィコラ・オサッチイ『遺言』(シェウチェンコの詩より)
3.詩の読みかた(発音)
詩の発音のローマ字表記は、添付資料のとおり(画像 / PDF)。
3-1.詩(ローマ字発音表記)画像
3-2.詩(ローマ字発音表記)PDF
4.詩について
ウクライナの人なら知らない人はいないと言われる、シェウチェンコの『遺言(私が死んだら・・・)Заповіт (Як умру, то поховайте...)』(1845年)。
多くの人が暗唱し、第二の国歌のような位置づけだという。
『遺言』において、詩人は、いまだ独立を果たせずにいる祖国ウクライナの民に激烈に呼びかける。
自分の死後、必ずや蜂起してウクライナの自由を勝ち取って欲しい、自分を自由で偉大な新しい家族の一人にしてくれ、と民を鼓舞している。
5.楽曲のなりたち
これまで、多くの音楽家がシェウチェンコの『遺言』に曲を書いてきた。
古くは、1868年にルィセンコ(Микола Віталійович Лисенко, 1842-1912)が『遺言』に曲をつけたほか、ウクライナ国歌『いまだウクライナは滅びず(Ще не вмерла Україна)』を作曲したヴェルビツクィイ(Михайло Михайлович Вербицький, 1815-1870)も『遺言』に曲を書いた。
この当時から、聴衆全員が起立して『遺言』に耳を傾ける伝統が、ウクライナ全土に広まったという。
その2年後の1870年に、グラトクィイ(Гладкий Гордій Павлович, 1849-1894)が曲をつけた『遺言』が爆発的な人気を博し、伝統民謡として捉えられるほどに普及した。
グラトクィイ作曲の『遺言』は、多くの声楽家に歌い継がれ、現在でも頻繁に演奏される。
このほか、60を超える曲が『遺言』のために書かれたという。
詳しくは以下を参照されたい。
(出典:ウクライナ語ウィキペディア「私が死んだら、葬ってくれ・・・(遺言)」)
6.いろいろな演奏
なんと、レゲエで奏でる『遺言』。新しい。
ラガマフィンで、シェウチェンコの『遺言』。
Balsam - Заповіт
Balsam『遺言』(シェウチェンコの詩より)
レゲエの次はヒップホップで。
Mike Stazz & Week Mei - Як умру то поховайте
Mike Stazz & Week Mei『遺言』(シェウチェンコの詩より)
画家でもあったシェウチェンコの絵画を、アニメーション化して、音楽に合わせた動画。
Тарасова ніч "Заповіт". Анімовані картини Т.Г.Шевченка.Тарасова, музика Івана Нишпора
タラソヴァ・ニチ『遺言』(シェウチェンコの詩より)(曲:イヴァン・ヌィシュポル)
Сергій Бабкін – Заповіт
セルヒー・バプキン『遺言』(シェウチェンコの詩より)
E.K.A & Mr.BrodЯgos - ЗАПОВІТ (Т.Г.Шевченко)
E.K.A & Mr.BrodЯgos『遺言』(シェウチェンコの詩より)
さまざまな合唱団、管弦楽団などによる演奏。
Борис Гмиря та хорова капела Думка – Заповіт
ボリス・フムィリャ、ドゥムカ合唱団『遺言』(グラトクィイ作曲)
Сумська обласна філармонія - Заповіт (Як умру, то поховайте)
スームィ州フィルハーモニー管弦楽団『遺言(私が死んだら、葬ってくれ)』(グラトクィイ作曲)
Тарасова пісня. Пісні на вірші Т. Г. Шевченка у виконанні хору Київської духовної академії
キーウ神学アカデミー合唱団『遺言』
Хор та симфонічний оркестр нацональной радіокомпанії України, солісти: Олена Слободянюк та Святослав Інгульський, Людкевич - Шевченко - Заповіт
ウクライナ国立ラジオ放送局合唱団・交響楽団(独唱:オレナ・スロボヂャニュク、スヴャトスラウ・インフリシクィイ)『遺言』(リュトケヴィチ作曲)
作曲家リュトケヴィチ(Станіслав Пилипович Людкевич, 1879-1979)については、以下を参照されたい。
(出典:ウクライナ語ウィキペディア「リュトケヴィチ」)
ウクライナ民謡 沼(6)シェウチェンコ詩『遺言』その2につづく
※ ヘッダー写真の出典は、ムィコラ・オサッチイ公式Youtubeチャンネル。