ウクライナ民謡 沼(10)『泣きのギター』Плакуча гітара
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ウクライナ民謡 沼
12月は、なんとなく『シチェドリク(鐘のキャロル)』の気分だったけれど、それ以外に、底抜けに明るい踊り歌、謎のチチェリ・チチェリ歌、勇猛なコサック民謡など、相変わらずウクライナ民謡の沼にどっぷりと浸かっていた。
とりあげたい民謡がだいぶ渋滞しているが、少しずつ聴いていこう。
1.お勧め動画
今回は伝統的な演奏から。
Гурт Експрес - Плакуча гітара
エクスプレス・バンド『泣きのギター』
なんだかランディ・ローズとか、ジェフ・ベックとか、はたまたサンタナとか出て来そうな曲名だけれど、本当に『泣きのギター』という歌。
アコギが弾きたくなるなあ・・・と思っていたら、アコギ一本で歌い上げている動画があった。
Max Triss - Плакуча гітара
Max Triss『泣きのギター』
2.歌詞の読みかた(発音)
歌詞の発音のローマ字表記は、添付資料のとおり(画像 / PDF)。
2-1.歌詞(ローマ字発音表記)画像
2-2.歌詞(ローマ字発音表記)PDF
3.民謡のなりたち
『泣きのギター』は、ウクライナ・フォークロア(民俗学)の電子アーカイヴに登録されており、多くの民謡集にも収録されている愛唱歌なのに、その来歴についてウェブ上にほとんど情報がない。
(出典:ウクライナ民俗学電子アーカイヴ)
上記の電子アーカイヴは、イヴァン・フランコ記念リヴィウ国立大学のウクライナ・フォークロア講座が中心となって立ち上げたプロジェクトのようだ。
リンク先ページを最後までスクロールすると、左下に録音 Аудіозапис ファイルがアップされているので、再生アイコンをクリックするとフィールド調査で収録された歌声を聴くことができる。収録地は、ウクライナ西部リヴィウ州のトゥルカ地区ジュコティン村。
4.歌詞の意味
例によって、詩心も、ウクライナ語による読解力も不足しているが、訳出してみる。
切ない恋のメロディーかと思ったら、最後、「若い男の戯言を真に受けるなんて、騙されるほうが悪い。自業自得」的なオチで、かなり驚いた。
娘を騙す若者が悪いと思うのだけれど、わりと最後の教訓めいた文言はドライで、シビア。身も蓋もないと言うか、何と言うか。
若い娘を案じる親心や、周囲の老婆心を、民謡に託す形で歌い継いだのだろうか(あまり何度も言うと、けむたがられるだろうから)。
5.いろいろな演奏
まずは、現代風アレンジをいくつか。
Гурт Made In Ukraine - Плакуча гітара
Made In Ukraineバンド『泣きのギター』
Adam Vadym - Плакуча гітара
Adam Vadym『泣きのギター』
Зеновій Гучок - Плакуча гітара
ゼノヴィイ・グチョク『泣きのギター』
以下のように、バラード調(?)に歌い上げる演奏も人気のようだ。
Ірина Федишин - Плакуча гітара
イルィナ・フェディシン『泣きのギター』
Діана Бігун - Плакуча гітара
ジアナ・ビグン『泣きのギター』
男女デュオの演奏。
Українські Діаманти - Плакуча гітара
ウクライナ・ダイアモンド『泣きのギター』
最後は伝統的歌唱に戻ろう。
Гурт Сусіди - Плакуча гітара
スシディ・バンド『泣きのギター』
バンド名の「スシディ Сусіди」は、「ご近所さん、お隣さん」の意。
Гурт Зоряна ніч, Ілля Найда - Плакуча гітара
ゾリャナ・ニチ・バンド&イッリャ・ナイダ『泣きのギター』
バンド名「ゾリャナ・ニチ Зоряна ніч」は、「星降る夜」の意。
(おまけ)
このnoteでは、基本的にプロのミュージシャンの動画をとりあげる方針なのだけれども、この動画はついつい見入ってしまうので、ご紹介したい。
Сестри Ліна і Галина Кирилівни - Плакуча гітара с.Красна Балка
リナ&ハルィナ・クィルィリウヌィ姉妹(クラスナ・バルカ村)
『泣きのギター』
2020年7月の収録。
途中、カメラの前を女性が横切ったり、歌い手が腕時計で時間を確認したり、あまりにもナチュラルで、ウクライナの農村生活を垣間見ることができる。
クラスナ・バルカ Красна Балка 村は、ウクライナ東部、ドニプロペトロウシク州クルィヴィー・リフ地区の小村。
ウクライナ語ウィキペディアによると、2001年の統計で人口428人、ウクライナ語話者98.4%(ロシア語話者1.6%)。
2022年9月末にロシアが併合した4州に隣接しており、この老姉妹や、村の人々の消息が気がかりだ。どうか、無事でいて欲しい。
※ ヘッダー写真の出典は、YoutubeチャンネルUkraine folks songs。