白梅

主に熟年層に向けて、日本の古典芸能へのお誘いです。歌舞伎が中心となりますが。芸能に限らず、日本の古典を深掘りすることは、日本史の謎に迫ることでもあります。日本の古典芸能を深掘りすることで、「来し方」先人の思いを受け止めつつ、目指すべき「行く末」を考えていけたらと思います。

白梅

主に熟年層に向けて、日本の古典芸能へのお誘いです。歌舞伎が中心となりますが。芸能に限らず、日本の古典を深掘りすることは、日本史の謎に迫ることでもあります。日本の古典芸能を深掘りすることで、「来し方」先人の思いを受け止めつつ、目指すべき「行く末」を考えていけたらと思います。

マガジン

  • 白梅の芝居見物記 歌舞伎

    歌舞伎を観劇した感想を集めました。

  • 白梅の芝居よもやまばなし

    歌舞伎を見物した際に、いろいろ感じた思いや願い、考えていることを中心にまとめました。

  • 歌舞伎とは如何なる演劇か

    歌舞伎に関して、長年考えてきた私なりの捉え方をコンパクトにまとめてみました

  • 古典解読 清和源氏の謎に迫る

    日本の歴史を考える上で、清和源氏とは如何なる氏族であるか考えることは大変重要です。そこを捉えてはじめて日本の戦国時代から天下統一にかけての動きがわかるからです。古典解読の方法に目を向けながら、日本の古典芸能から、歴史の謎に迫っていきたいと思います。

  • 浄瑠璃姫物語 附 小野のお通

    近世演劇(歌舞伎・人形浄瑠璃・能の一部)には、観ても読んでも、解読できない部分がたくさんあります。そのわからない部分に、実は歴史の裏側につながる出来事が暗示されています。それを解き明かしていくこと、それは「日本の歴史の謎」に迫ることでもあります。『浄瑠璃姫物語』と「小野のお通」から、「本能寺の変」につながる謎を追っていきたいと思います。

最近の記事

辰 明治座 十月花形歌舞伎 昼 『車引』『一本刀土俵入』『藤娘』

<白梅の芝居見物記>  菅原伝授手習鑑 車引  坂東彦三郎丈の松王、中村橋之助丈の梅王、中村鶴松丈の桜丸。  私自身大好きな演目の一つであり様々な役者さんの素晴らしい舞台を拝見して来ているので、足りないな‥と感じてしまうところは確かにあるのですが‥。ただ、今回明治座というほどよい舞台空間で、肉弾戦のような荒事と荒事がぶつかり合うような舞台というのをはじめて拝見して、若手公演ならではの舞台といえるのかもしれませんが大変興味深く、面白く観ることが出来ました。  橋之助丈。筋書

    • 辰 十一月歌舞伎座特別公演「ようこそ歌舞伎座へ」<白梅の芝居見物記>

       十一月と言えば「顔見世大歌舞伎」というのが、江戸期の「芝居國」においても大変重要な位置を占めてきた年中行事であることを思えば、その伝統は受け継いでいただけたら‥と、思うものの‥。  舞台機構設備の工事が11月に行われるという、それが今の歌舞伎の置かれている状況なのでしょうから仕方ないことと言えるのかも知れません。  ただ、劇場正面に「櫓」をしっかりあげてくださったことに、松竹さんの心意気は感じられてなによりです。  今回の歌舞伎座の新しい試みですが、随所に工夫が見られたこ

      • 辰 松竹大歌舞伎巡業 『引窓』『身替座禅』 <白梅の芝居見物記>

         中村錦之助丈・中村隼人丈を中心に、決して大きな一座とは言えないながら、地方の方にも大歌舞伎の味わいを知って頂くのに十分なしっかりした芝居となっていて楽しませて頂きました。  ご挨拶の工夫   舞台の幕外で隼人丈の「挨拶」からはじまるのですが、大きな歓声が沸き起こったので何事かと思いきや、客席を通って隼人丈が登場。観客と握手をしたりコミュニケーションをとりながらですが、黄色い声が聞こえる程で、観客は大喜び。  すっかり観客の心をつかんだ上で、芝居の大筋を解説する間にお客様

        • 新橋演舞場『激走江戸鴉』―桜吹雪の散らせ方―

          <白梅の芝居見物記>  近代的任侠道の精神  横内謙介氏脚本・演出『江戸鴉』を新橋演舞場にて拝見。  熱気に溢れた舞台で、役者の皆さんの奮闘は見応え十分かと思います。にもかかわらず、芝居の内容として私にはどうしても受け入れ難く感じる部分があり、素直には楽しめなかったというのが正直なところです。今回見物記は書けないかなと思っていました。  ただ‥  横内氏は本作に「チャリンコ傾奇組」と副題を付けており、歌舞伎の一趣向ともなっている「雁金五人男」を題材にした作品だと作者自身がお

        • 辰 明治座 十月花形歌舞伎 昼 『車引』『一本刀土俵入』『藤娘』

        • 辰 十一月歌舞伎座特別公演「ようこそ歌舞伎座へ」<白梅の芝居見物記>

        • 辰 松竹大歌舞伎巡業 『引窓』『身替座禅』 <白梅の芝居見物記>

        • 新橋演舞場『激走江戸鴉』―桜吹雪の散らせ方―

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        • 白梅の芝居見物記 歌舞伎
          53本
        • 白梅の芝居よもやまばなし
          13本
        • 歌舞伎とは如何なる演劇か
          7本
        • 古典解読 清和源氏の謎に迫る
          3本
        • 浄瑠璃姫物語 附 小野のお通
          1本

        記事

          『婦系図』『源氏物語』 辰 歌舞伎座 錦秋十月大歌舞伎

          <白梅の芝居見物記> 婦系図  泉鏡花の『婦系図』は元々、明治四十年(1907)「やまと新聞」に連載小説として発表された作品です。それが早くも翌年には新富座で初演され、以後新派の代表作として上演を重ねて来た名作です。本作の見せ場である「湯島境内」の場は小説にはなく、劇化されてから鏡花自身によって練り上げられた場面だとされます。  私は以前新派の公演で数回この『婦系図』を拝見しているのですが、この芝居はお蔦の芝居だとばかり思ってきました。おそらく初演時の喜多村緑郎以来代々の

          『婦系図』『源氏物語』 辰 歌舞伎座 錦秋十月大歌舞伎

          『俊寛』『音菊曽我彩』『権三と助十』 辰 歌舞伎座 錦秋十月大歌舞伎

          <白梅の芝居見物記> 平家女護島(ヘイケニョゴノシマ) 俊寛  『平家女護島』は、享保四年(1719)八月に大坂竹本座の人形芝居として初演されました。作者は近松門左衛門。全五段の時代物で二段目の「鬼界ヶ島の段」が通称「俊寛」として現代でも度々上演されます。  タイトルにある「女護島」とは、海上にある女性のみが暮らしている島とされる伝説上の地名です。こうした伝説は日本にだけあると考える向きもあるようですが、私はむしろ世界的広がりのある「人魚姫伝説」とも関連付けて考えるべきも

          『俊寛』『音菊曽我彩』『権三と助十』 辰 歌舞伎座 錦秋十月大歌舞伎

          高等教育授業料無償化 <白梅のちょっと立ち止まって考えてみたい>

           高等教育だけが重要なのでしょうか? 私たち自身も教育や政治を考えたい  兵庫県知事と議会のごたごたに関心をもつ中で、県立大学の授業料無償化を前知事が実現していたことを知りました。ご自分が苦労なされた経験を踏まえた上での政策のようで、そのこと自体は前知事の大きな功績であることに間違いはないのだと思います。  ただ、‥‥。  以前から一部の国政政党が高等教育の授業料無償化を目玉政策として掲げていることに対しては、私は非常に疑問を持っていました。そして、それは今も変わりません。

          高等教育授業料無償化 <白梅のちょっと立ち止まって考えてみたい>

          「演劇」という文化の重要性を少し考えてみました 1 <白梅の芝居よもやまばなし> 

          自治の力を養うために  情報を読み解く洞察力の必要性  今世界中で世の中が混乱を続けています。自由と民主主義という価値観を共有する国においてもそれは顕著です。一見平和なように見えますが、日本においても社会が変化していく中で、世の中の在り方を一人一人が考え直さなければならない時代になっているのだとつくづく思います。  今回、何故そんなことに考えをめぐらせてしまったのかというと、先日も少し触れましたが、兵庫県の知事と議会のゴタゴタを見ていて、驚くべき日本の現状を目の当たりにした

          「演劇」という文化の重要性を少し考えてみました 1 <白梅の芝居よもやまばなし> 

          辰 国立劇場『夏祭浪花鑑』 附リ 国立劇場に対する期待

           <白梅の芝居見物記> フレッシュな顔ぶれの舞台  一月同様、初台にある新国立劇場の中劇場での出張歌舞伎公演。  歌舞伎座ではなかなか上演しがたい配役での一座ですが、十分に歌舞伎の面白さを味わえるのは、時代を越えて洗い上げられてきた古典芸能の底力と言えるのではないでしょうか。  坂東彦三郎丈の団七、坂東亀蔵丈の徳兵衛、市川男女蔵丈の三婦、澤村宗之助丈のお梶、市川男寅丈の磯之丞、中村玉太郎丈の琴浦。フレッシュな顔ぶれで、お一人お一人の役者さんが今持っている力を出し切るように挑

          辰 国立劇場『夏祭浪花鑑』 附リ 国立劇場に対する期待

          『摂州合邦辻』 辰 秀山祭・研の会 <白梅の芝居見物記>

           合邦庵室の場  二つの舞台を拝見して  この9月に、秀山祭と研の会で二つの「合邦庵室の場」を拝見して、大変多くを学ばせて頂きました。  まず、秀山祭において尾上菊之助丈の玉手を拝見しました。岳父中村吉右衛門丈を慕い、義太夫狂言に対して並々ならぬ思い入れを持って取り組んでいらっしゃる思いがひしひしと伝わる舞台でした。  音羽屋ならではの芸風が生きる芝居を、さらに進化させていこうとされており、大変見応えがある舞台でした。  ただ、一観客としての偽らざる感想を申し上げると、玉

          『摂州合邦辻』 辰 秀山祭・研の会 <白梅の芝居見物記>

          『妹背山婦女庭訓』『勧進帳』 辰 秀山祭 <白梅の芝居見物記>

          『妹背山婦女庭訓』太宰館、吉野川 平安な時代の吉野川  『妹背山婦女庭訓』三段目の太宰館と吉野川の劇評に関しては、昨年9月の国立劇場における上演時と今月の渡辺保氏の評が大変勉強になります。ご参考いただけたらと思います。  今回私が強く感じたのは、この『妹背山』は太平洋戦争後に長い平和が続いた時代だからこそ生まれ得た芝居なのだろうということです。  生身の人間が演じ生身の人間が見物することによってはじめて成立する舞台芸術。よく考えれば当たり前のことなのですが‥。  正直に言

          『妹背山婦女庭訓』『勧進帳』 辰 秀山祭 <白梅の芝居見物記>

          『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』

          辰 歌舞伎座 <白梅の芝居見物記> ベテラン役者の芸の見せ場と若き空海の夢  平成28年(2016)年、夢枕獏原作の小説を新作歌舞伎として上演した『幻想神空海』が再演されました。初演時は「高野山開創1200年記念」と銘打たれていましたが、今回は「弘法大師御生誕1250年記念」としての上演です。  大幅に改変が加えられていますが、脚本演出とも前回と同じで、かなり芝居としては面白く進化していたように私には思われました。  そう思われたのはなんと言っても、中村歌六丈、中村雀右衛

          『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』

          能『羽衣』に関する覚え書

          <白梅の芝居よもやまばなし>  流儀横断講座『羽衣』  7/24、国立能楽堂にて「流儀横断講座『羽衣』」が開催されました。シテ方全五流儀の若手・中堅能楽師が集まって催されており今回で10回目になるのだそうです。  私は今回で3回目ですが、能楽素人にとって、また能楽を概観したい者にとっては大変勉強になる講座です。よくわからない言葉や話の内容があるので、アーカイブ配信で調べながら何度も聞き直すことが出来るのが大変ありがたい企画です。  五流の方々の謡比べも聴き応えがありまあす。

          能『羽衣』に関する覚え書

          『藤娘』を考える 

          <白梅の芝居よもやまばなし> 大阪松竹座、菊之助丈の『藤娘』  辰七月、尾上菊之助丈による『藤娘』を久々に拝見し大いに楽しませて頂きました。  菊之助丈は大阪松竹座が小さく感じられるほどの存在感の大きさがありましたでした。が、それ以上に印象深かったのが、尾上菊五郎を八代目として襲名する自覚がはっきりとみてとれたことでした。  どんなところにそれを強く感じたのかと言えば‥。  その舞台の感想を述べる前に、六代目尾上菊五郎の『春興鏡獅子』に関してまず言及したいと思います。  

          『藤娘』を考える 

          辰 八月納涼歌舞伎『髪結新三』『狐花』

          <白梅の芝居見物記> 梅雨小袖昔八丈 髪結新三  私が『髪結新三』を初めて拝見したのは、初代尾上辰之助丈の新三でした。当時はまだ歌舞伎初心者で、芝居の中の新三と全く同じように大家さんの言っていることがわからず首をひねって見ていたのを思い出します。  辰之助丈の新三が魅力的で、中村吉右衛門丈の源七も喜劇味があったので、喜劇的要素の濃い芝居でカッコイイ役者さんを見て楽しむものだと当時の私は解釈していました。  十七代目中村勘三郎丈の新三を拝見するに及び、役者の芸うまさ、その妙

          辰 八月納涼歌舞伎『髪結新三』『狐花』

          辰 八月納涼歌舞伎『ゆうれい貸屋』『鵜の殿様』『紅翫』

          <白梅の芝居見物記>ゆうれい貸家  第一部の上演。山本周五郎原作。芝居としては「人情喜劇」になるのでしょうが。  例えば、本年5月歌舞伎町大歌舞伎で上演された『福叶神恋噺』のように歌舞伎初心者にも受入れられやすい軽いタッチの作品を楽しんだ者にとっては、残念ながら消化不良を起こしてしまいそうな作品であるのは否めないかと思います。  役者の味わいだけで見せるにしてもやはりまだ、坂東巳之助丈、中村児太郎丈には荷が重すぎる作品のようにも思われました。  辛うじて中村勘九郎丈演じる

          辰 八月納涼歌舞伎『ゆうれい貸屋』『鵜の殿様』『紅翫』