無題"School Festival Rhapsody"-学園祭狂騒曲- (Movement:5)
蛍「おはよう」
舞「おはよー」
蛍「ふわぁぁ……眠い」
舞「昨日は眠れなかったの?」
蛍「そうでもないと思うんだけど……あれ、俺のご飯は?」
舞「え? 無いよ」
蛍「……え?」
舞「今日は大事な大会だもん。できるだけお腹は空かせたほうがいいよ!」
蛍「あ、そ、そうだっけな……ありがとう、俺のために」
舞「えへへ、どういたしまして♪」
蛍「は、ははは……」
舞「ふふふ……」
蛍(くそ、可愛いから許しちまう……)
唯「さて、ついに学園祭が始まるね」
蛍「料理の準備よし。もう不安な点は無いよな……?」
唯「あとは衛生面だけじゃないかな」
蛍「そうだな。内装も綺麗にできたし、接客やら応対も結構練習したもんな」
唯「下半身のお世話の仕方もね。その衛生面も気にしないと」
蛍「話を勝手に下ネタにするな」
唯「はい、焼きそばが回ってきたよ」
蛍「ん、なんだ?」
唯「クラスの女の子から、味見に作ったのが余ったからって」
蛍「なるほどな……」
唯「でも君にはあげない」
蛍「え、なんでだよ」
唯「君には大事な戦いがあるだろう?」
蛍「…………そうだったな」
ピ ン ポ ン パ ン ポ ー ン
『学園祭を開始いたします』
パ チ パ チ パ チ パ チ
蛍「始まったな」
唯「そうだね。君はこれからどうするんだい?」
蛍「実行委員として、各教室の見回りをしないと」
唯「そうか。じゃあボクは作業をしてくるよ」
蛍「おう」
唯「大会は絶対に見に行くから」
蛍「了解」
蛍「始まってすぐに問題があるクラスはそれほどないよな……」
舞「お兄ちゃんっ」
蛍「ん? おお、舞」
舞「えへへ、朝から来ちゃった」
蛍「一人か?」
舞「お兄ちゃんに会うために早めに来たから、まだ一人だよ。あとで友達と合流するけど」
蛍「……舞ぃぃ!」(俺は幸せ者だっ!)
舞「で、お兄ちゃんは何してるの?」
蛍「実行委員として見回りだ」
舞「あ、お仕事中なの?」
蛍「おう。」
舞「てっきりクラスのお仕事させてもらえないから一人で回ってるのかと思ったよ」
蛍「評価低すぎだろ俺……これでも実行委員なんだぞ……」
舞「大会はいつやるんだっけ?」
蛍「昼過ぎだ。まだ少し時間があるぞ」
舞「そっかー、友達もまだ来ないし、どうしようかなぁ」
蛍「朝飯は食ったのか?」
舞「そうだ! まだ食べてなかった! じゃあお兄ちゃんのクラスで食べるね!」
蛍「おう、美味いぞ~」(俺も食べたいけど、多分怒られるからやめよう)
蛍「そういえば、舞」
舞「なあに?」
蛍「早食いと大食いは別大会ってわかってるよな?」
舞「うん」
蛍「俺は早食いに出ればいいんだよな?」
舞「え? 早食いのあと大食いがあるんでしょ?」
蛍「そ、そうだけど」
舞「じゃあ二つ出れるじゃない!」
蛍「ほ、ほほー……やっぱりそうだったか……」(とりあえず2つともエントリーしといて良かった)
舞「それじゃあ、お仕事頑張ってね、じっこーいいん」
蛍「おーう」
蛍(さて、一通り見回りをして連絡したら、次は店の手伝いだ)
蛍(大会のために午前中は働き詰めだ。頑張ろう)
蛍「それにしても……」
蛍(食事処の見回りは辛いな……腹が鳴ってしかたがない)
蛍「ふぅ……」
唯「おかえり」
蛍「おう。……って、なんだその格好」
唯「ん? これはボク達のお店の制服だろう?」
蛍「そ、そうだったっけか」(初めて見たから気づかなかった)
唯「ウェイトレスは、結構意外な感じだったみたいだね」
蛍「他のクラスはメイド服ばっかりだからな」
唯「下のご奉仕もせずにメイドを語るなんてイケないよ」
蛍「その考え方は理解しかねるけどな」
唯「メイドレイ……」
蛍「謎の造語を作るな」
唯「おっと、そろそろ時間だね」
蛍「あ、ほんとだ。悪い、先にあがるぞ」
唯「じゃあ、そろそろボクもあがろう」
蛍「ん、一緒に行くか?」
唯「流石にボクも、ウェイトレス姿でイクのは恥ずかしいかな……」
蛍「ツッコまないからな。……じゃあ、俺は先に行く」
唯「うん」
蛍(……というか、なんでコイツだけスカートが短いんだ。みんなロング丈なのに)
ワ イ ワ イ ガ ヤ ガ ヤ
「それでは出場者を発表します」
蛍(うわー、めちゃくちゃ人いるなぁ……)
蛍(大会の宣伝バッチリじゃねえか。もっと人少ないと思ってたけど……)
舞「お兄ちゃん頑張ってー」
蛍(お、舞……うわ、すっげーニコニコしてる……めちゃくちゃ可愛いな。周りにいるのは友達かな?)
唯「……」
蛍(ん、その横にアイツもいるのか)
唯「……」
蛍(遠くでアへ顔してんじゃねえ!!!)
蛍(それにしても……)
蛍(これ、勝てるわけないよな……周り体育会系の先輩ばっかりじゃねえか)
蛍(というか、一年生俺しかいねえし!)
「早食い大会を始めます。ルールは簡単です。五分間、とにかく出てきたものを食べてください」
蛍(シンプルなルールだな……)
「それでは、スタート」
蛍(って、いきなり始まった!? しかたない、食べるしかねえな!)
蛍「あむっ……んん!?」
蛍(……美味い! めちゃくちゃ美味しいぞ!)
蛍(五分しかないし、休まずにどんどん入れないと……)
舞「お兄ちゃんガンバレー!!」
唯「ふふっ、あんなに大口で食べちゃって……いやらしいなぁ」
舞「?」
蛍「……」
「そこまで。終わりです」
蛍(終わっちまった……)
蛍(ダメだ。思ってたより腹に入らなかったな……)
「ただいま集計中です」
「集計終了です。早食い大会、優勝は……1年B組の宮澤選手です」
蛍「え!?」
舞「お、お兄ちゃん……! やったー!!」
唯「ふふっ……凄いなぁ」
「おめでとうございます。こちらが優勝トロフィーです」
蛍(た、淡々としてるな、司会の人……てかトロフィーデカいな!?)
「一言コメントをどうぞ」
蛍「あー……美味しかったので、食べられました」
「それでは続いて大食い大会を開催します」
蛍(か、間髪入れず大食いか……)
蛍(俺の腹、大丈夫だろうか……)
唯「あ、連続出場、彼だけなんだね
舞「そうですね……お兄ちゃんお兄ちゃん大丈夫かな」
唯「こういう時こそ、大きな声で応援してあげないとね」
舞「そ、そうですよね! お兄ちゃんファイトー!」
「ルールは簡単。とにかく出てきたものを食べてください」
蛍(こっちもシンプルなルール……って、うお!?)
「それでは開始します」
蛍(ちょ、ちょっと待て……なんだこの量!? これで一皿なのか!?)
「スタート」
蛍(くそ、とにかく食うしかない!!)
蛍(うぐっ……吐きそうだ……でも美味い!)
蛍(さっきの早食いのせいで大分腹の中が……!)
舞「頑張ってお兄ちゃん!」
蛍「!!」
唯「おや、目の色が……ふふっ」
蛍(まだまだいけるぜえええええ!!)
「宮澤選手以外、22皿でギブアップしています。現在蛍選手は23皿、これを食べきれば優勝です」
蛍「!」(マジか?!)
舞「最後だよお兄ちゃん!」
蛍(よーっし、一気に入れよう!)
「宮澤選手、二十三皿目を完食。優勝決定です」
蛍(か、勝ったのか俺……)
「こちらに来てください。コメントをいただきます」
蛍「は、はい」(動くと吐きそうだ……)
唯「立派なトロフィーだね」
蛍「そうだな」
唯「ふふ、おめでとう二連覇」
蛍「おう」
唯「さて、これからどうするんだい?」
蛍「食い過ぎた。ちょっと休みたい。腹がはちきれそうだ」
唯「そっか。じゃあ、休憩教室に行く?」
蛍「ん、ああ」
蛍(……なんかいつものコイツらしくないな)
唯「お腹、大丈夫かな?」
蛍「ああ。……お前はどこか行かなくていいのか?」
唯「うん。特に行きたいところもないし」
蛍「ふーん」
唯「……」
蛍(なんでそわそわして……)
蛍(まさか、コイツ、昨日のこと……)
『じゃあ、ボクと一緒に回ろうよ、午後』
唯「……」
蛍「よし、腹も大分良くなったし、回るか」
唯「え、まだそんなに経ってないよ?」
蛍「大丈夫だから、行こうぜ。早くしないと学園祭終わっちまうぞ。それに……」
唯「それに?」
蛍「……一人で行っても、つまんないしな」
唯「……そっか。わかったっ」
唯「面白かったね。何もかも」
蛍「そうだな。あの大会優勝できるとは正直思ってなかったぜ」
唯「君のペースは他の人とは比べ物にならなかったよ」
蛍「そんなに早かったか?」
唯「うん。サカりのついた犬みたいな……」
蛍「その表現最悪だな」
唯「ふふっ、あとさ」
蛍「ん?」
唯「来年が、楽しみになったよ」
蛍「……まあ、大会はこりごりだけどな」
唯「ふふっ、目指せ四連覇」
蛍「は!? む、無理だっつーの!」
唯「ふふっ……ありがとう」
蛍「え?」
唯「君のおかげで、最高の学園祭になったよ」
蛍「……お、おう」
唯「責任、取ってくれるかい?」
蛍「なんのだ」
蛍「ただいま……ん?」
舞「おかえりお兄ちゃん!」
蛍「舞、なんですぐに帰ったんだよ。一言くらいおめでとうって言ってくれても良かっただろ」
舞「ごめん。でもいてもたってもいられなくてさ……」
蛍「どういう……な、なんだこの匂いは?」
舞「ふふっ、お祝いの料理作ったの! だからいーっぱい食べてね?」
蛍(ま、マジかよぉ!?)
End.