筑波大学大学院 理転院試体験記(文系→生物資源科学学位P)
おはこんばんにちは、しらぬひです。
本日午前10時に筑波大学大学院 8月入試の合格発表があり、無事に合格していたので記事を書いています。
少々特殊な進学をしていますので、なかなかレアな体験記が書けると思います。長くなってしまいましたが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
0.簡単な自己紹介
・出身地:東京都(東京在住)
・出身学部:筑波大学 人文・文化学群 比較文化学類(どんな学部かはこちらをご覧ください)
・進学先:筑波大学大学院 理工情報生命学術院 生命地球科学研究群 生物資源科学学位プログラム(博士前期課程)
・興味があること:みかんの消費量を増加させる方法(農業経済学)
1.理転への決意
私はもともと数学が苦手でした。論理的思考をするのは好きでしたが、いざ問題を解くとどうしてもケアレスミスがひどく、センター試験の数2Bは50点も取れませんでした。
そんなこともあり、理系に進学するのは最初から諦めていました。
ではなぜ比較文化学類に進学したのかというと、ちょうどその当時の興味と比較文化学類がマッチしていたからです。たくさんのコースの授業が履修でき、そして一番興味があった地理学のコースもあるという欲張りセットのような学部は他にありませんでした。
ということで、比較文化学類を受験し、合格したのでそのまま進学しました。
ところで、私には大学生になってからやりたいことがありました。
それは、「みかんについて詳しくなる」ことでした。
たまたま受験期に東大みかん愛好会というサークルの存在を知り、大学に入ったらこのサークルに入りたい!というのが夢だったくらいにはみかんが好きでした(後に本当に入会します)。
そこで、夏休みから自分なりに本を読んだりしてみかんについての勉強を始めました。歴史、品種、生産…などなど、みかんの知識を詰め込みました。
このときはまだあくまでみかんは「趣味」であり、卒論は観光の話にしようと考えていました。
しかし、観光について取り上げた地理学の論文が多すぎて新しい切り口で入り込むのが難しそうだったので観光は諦めてしまいました。
それからは食べ物関係に興味を持ち、6次産業化や食品ロスなどの話題に着目するようになりました。生物資源学類の授業を履修したり、生物資源学類の先生とコンタクトを取るようになったのがこの頃です。あまりにも生物資源学類が魅力的に見えたので、転類も試みましたが結局断念しました。
しかし、この頃もまだみかんで論文を書こうとは思っていませんでした。
時は流れ大学3年の夏、論文のテーマを決めることになりました。
先述した通り、当初はみかんではなく別の食材の食品ロスの論文を書こうとしていました。しかし、ゼミの先生が
「比較文化学類は好きなことを論文にすることができる学類です」
と話してくださり、ここで初めてみかんの論文を書くことを決意しました。
このとき悩んで決めたテーマは、到底卒業論文だけで書けるものではなく、ここから漠然と院進を考えるようになりました。
比較文化学類の文化地理学コースの出身者はたいてい生命環境科学研究群の地球科学学位P(の、人文地理学分野)に進学するのですが、自分の決めたテーマと近しい内容の研究を行っている先生がいないことは明らかだったので、進学するなら生物資源科学学位Pだな、と思いました。
そこで、生物資源学類の先生にも自分が決めたテーマの先行研究があるか相談をしました。この相談がターニングポイントとなります。
先生曰く、
「別の先生のもとで卒業した人が似たような論文を書いていた」とのこと。
早速各所に問い合わせ、その論文を閲覧できないか試みました。
そして、その論文の主査の先生に問い合わせ、直接お会いして見せていただけることになりました。(※コロナ禍だったので、オンラインで閲覧できないかと尋ねたのですが、電子化はしていないという理由から断られました)
学群の卒業論文は学類によって扱いが異なっており、比較文化学類のように学類長室で保存している場合もあれば、情報学群のようにオンライン上で閲覧ができる学類もあります。詳しくは図書館のHPを参照してください。
そして実際に先生にお会いして、論文を閲覧したり自分のバックグラウンドを1時間ほど話しました。このときに生物資源科学学位Pに進学したい、ということも少々話しました。
この先生が、今度院でお世話になる指導教員です。
まとめると、
地理学に興味があり、比較文化学類に進学
↓
みかんについて独学する
↓
好きなこと(みかん)を論文にしようと思い立つ
↓
筑波の地理学分野には同じような研究をしている先生がいなかった
↓
生物資源科学学位Pに進学しよう!
という流れになります。
2.英語対策
過去の話を書きすぎました。手っ取り早く受験が知りたいんだよ!という方、申し訳ありません。ここからが本編です。
生物資源科学学位Pの入試は英語の外部試験(100点)と面接(200点)のみです。
英語がそんなに得意ではなく、3年生のときに大学で受けたTOEICは550点程度だったので、さすがに600点くらいは欲しいと思い、試験1ヶ月前から単語帳を読んだりALCのオンライン教材を使ったりして勉強しました。このALCがかなり効果的で、全部終わらなかったのですが勉強したところだけはむちゃくちゃ点数が伸びました。素晴らしい。
ちなみに650点くらいになりました。院生さん曰く、600点あれば試験で足を引っ張ることはあまりないそうです。
※筑波大学はALC NetAcademy NEXTと契約しているので、学生は無料で勉強することができます。リンク貼っておきますね。
↑このページ内のリンクから飛べば入れます。
3.研究計画書/研究室訪問
研究室訪問のメールを送ったのが6月半ば、修論の研究計画書を書き始めたのは6月末でした。
7月半ばに出願が締め切り(指導教員の内諾と研究計画書も必須)なので、多分これは遅いほうです。真似しないでください。
上で言っていませんでしたが、指導教員は卒論でも副査としてお世話になっているので連絡が取りやすかったです。そうではない、はじめましての方は遅くとも6月上旬には連絡しておいたほうが良いかと思います。
卒論と修論の大元の問題意識は同じですが、実際に計画書を書いてみると具体的な研究に落とし込むことが難しくて悩みました。数日悩みましたが、ふとお風呂で思いついた内容が面白そうだったので、そのテーマで計画書を書きました。
研究計画書の書き方は調べればいくらでも出てきますが、余裕があれば今度書き方をnoteに書き記しておきたいと思います。
7月頭に期末試験があり、大学に行くことになったのでそのときに研究室訪問を行いました。
最初に先生に計画書を見せ、アドバイスをもらおうとしましたが、いくつか内容について質問されただけであまり深く突っ込まれませんでした。
その後、院生が自習する部屋を案内してもらい、そこで院生の方に計画書をまた見せてアドバイスをもらったり、ゼミの様子などを聞いたりしました。わざわざ大学に出向いて見学させてもらったのは、比較文化学類の学生であることから院生とのネットワークが全く無かったためです。生物資源学類ならそんなことはあまりなかったと思いますが、関係のないところから進学を目指そうとすると誰かに質問したくても誰にも聞けないで不安が募ってしまうので、院生の方とのコネクションを作るのが狙いでした。
その後、Twitterの生物資源学類の同期経由で院生を紹介してもらい、Teamsを使ってその方にも同様の質問をしました。本当にありがとうございました。
それからはアドバイスをもとに他の先生に計画書を送ってアドバイスを頂いたり、多少の修正を加えて仕上げました。2000文字程度ということでしたが、1942文字で書き終えました。
4.面接対策
私は定期的にカウンセリングを行っているのですが、せっかくなのでカウンセリングのついでに面接の練習を頼んでおきました。
そこでは絶対に聞かれる志望動機、卒論と修論の研究の内容をすらすら言えるかどうかのチェックをして、あとはカウンセラーさんに適当な質問をいくつかしてもらいました。
もし面接の練習をするなら、専門外の人にお願いするのをおすすめします。というのも、院試では専門的なことももちろん聞かれますが、その分野を知らない人にもわかるように説明できるに越したことはないからです。
そして、私の場合必ず聞かれる問いがもう一つありました。
「なぜ比較文化学類から生物資源科学という異なる分野に進むのか」です。
これに答えるには、地理学と生物資源科学の両方の学問を知っている必要があります。これは最後までどう説明するか悩みましたが、面接の1時間前に満足する答えが考えつきました。
その他、多少知識問題も聞かれるということだったので、経済学のテスト勉強の教材を見直しておきました。
当日は電子機器の電源を切るように指示があるので、カンペなどを作るときは印刷して持っていきましょう。
5.面接本番
前日の夜に気合を入れて身支度を整えました。
持っていったもの
・面接の時喋る用のカンペ
・暇つぶしの本(みかんの本)
・ガム(眠気防止)
・飲み物(暑そうだから多めに)
・汗拭きタオル
・お昼ご飯
・筆記用具
・受験票
・体温記録表
・野菜生活(有田みかん味)
・現金
・PASMO
・みきゃん(愛媛のゆるキャラ)の小さいぬいぐるみ
試験時間が10時から17時まで(ソース:募集要項)で、私は受験番号が後ろの方だったのでもしかしたら何時間も待たされるかもしれない、と思い入念に準備をしました。
みかんグッズがいくつかありますが、もちろん好きなものを見てテンションを上げるためです。
試験開始の1時間前に会場入りし、受付で控室の場所が書かれた紙をもらいました。場所が分かる人はそのまま直行して構わない、とのことでしたのでそのまま行きました。
ちなみに、試験の3週間前くらいにWebに掲載される受験者心得はよく読みましょう。受験者心得にだけ、「生物資源科学学位Pと〇〇学位Pの受験者は試験時間の40分前に集合」と書いてありました。
控室の書かれた紙には試験の順番も書かれていたのですが、確認したらなんと2番目。番号順に試験ならどうせ午後だろうとタカをくくっていたのですが、見事に裏切られました。コースごとに控室も試験教室も分かれているので、コースの人数が少ないほど早く面接が回ってきてしまうようです。
実際はどんなに受験番号が遅くても、終了時間は14時ごろとなっていたので、募集要項に書いてあることはあまり信用しないほうがいいのかもしれません。
最初の人の試験が終わり、自分の番がやってきました。
久しぶりに対面で大人と話をするので、「おはようございます」と挨拶をして気合を入れました。
試験官(先生)は5人おり、そのなかには指導教員もいました。
本人確認が済んだらすぐに試験が開始されます。
志望動機、卒論と修論の計画をあわせて5~6分で話したあと、先生方から質問が飛んできました。卒論には全く触れられず、修論のことばかり質問されました。これらの返答にはだいぶ自信を持って答えられました。
その後、知識問題に移りました。ここからは卒論の内容にも関連する質問も出されたのですが、諸事情で勉強できていなかった統計学の質問も出されてしまい、焦ってしまいました。その結果、最後に出された「需要曲線とは何か、また需要曲線のシフトを説明せよ」という経済学の基礎的な問題もしどろもどろにしか回答できませんでした。今考えたら30%くらいの説明しかできていなかったように思います。
これだけでは終わりませんでした。需要曲線の説明をなんとか終え、ほっと一息つこうとしたその時、一人の先生が「これは需要曲線の説明ですか?」と質問を投げかけてきました。それを聞き、もしかして需要曲線の説明をしていたつもりなのに間違えて供給曲線の説明をしてしまったのか、と焦ってしまい、つい
「逆だ…」
と、つぶやいてしまいました。その瞬間、試験は終わりました。
しかし、実際には私の説明したものは需要曲線でした。間違っていなかったのです。試験後、ふらふらとテラスに行ってから失言に気が付きました。合格した今でもあの発言を思い出すと胸が苦しくなります。
終わってから、同じ学位Pを受験した友達と落ち合い、一緒に学内で学食を食べました。久しぶりの学食はとても懐かしい味がしました。
6.合格発表
毎晩毎晩「落ちてたらどうしよう」という不安と「ほとんど落ちないんだから大丈夫」という安心感がぐちゃぐちゃに混ざり合って、気を紛らわすためにYouTubeを見まくりました。
そして合格発表。合格者の番号が掲載されたPDFを開くのが怖くて押す直前で尻込みしていたら、番号を伝えておいた友達から
「おめ!!!」
とLINEが来て、そこで合格を知り安心してPDFを開きました。
明日には入学のための書類が届くはずです。さあ、忙しくなるぞ。
ちなみに、受験者は合計118名。
募集人数は110名。
合格者は114名でした。
たった4人しか不合格にならないけれど、それでも他学類から進学するのはある意味外部受験のようなものに感じて、「ほとんど落ちない」という言葉を最後まで信頼することはできませんでした。
ようやく不安な夜を過ごさずに済みます。
7.これから院進を目指す人たちへ
①知識系の問題がボロボロだったからこそ言いますが、勉強はしましょう。
基礎的な部分だけで全く問題ありません。むしろそこしか聞かれません。
②相談することを惜しまないようにしましょう。
まだ学問を学んでいる最中のみなさんは、一人で考えても解決策が出ないこともあります。また、大学院という大学とは違う世界に飛び込むわけですから、勝手が違います。
先生や同期、院生へのコネクションは多ければ多いほど得です。
③自分の研究に自信を持ちましょう。
自分の研究は唯一無二のものです。その分野に最も長けているのは自分です。
堂々と試験に臨めれば、きっと受かります。
もし何か聞きたいことがあれば、コメントやTwitter(@shiranuhi_SML)のDMなどに書き込んでください。できるだけ答えられるように頑張ります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?