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2023年度国家総合職教養区分(国総教養)合格体験記~合格者のメソッド~

2023年度国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)教養区分(以下「国総教養」)に合格しました.現段階では官僚になるつもりはありませんが,合格したのは嬉しいので,合格に至るまでの道中をここにまとめます.受験の参考にはならないと思います.


国総教養とは?

国家公務員総合職,いわゆる「官僚」の採用試験には様々な試験区分があります.教養区分はそのうちのひとつです.ほかの区分と違って専門試験がないので,幅広い分野の人間が受験することができます.「官僚」というと文系のイメージがあるかもしれませんが,物理学を専攻しているわたしでも合格できたので,大学生ならだれでも受ける価値があると思います.友人に勧められて受けただけなのでこれ以上の詳しいことは知りません.詳細が知りたい人は人事院の公式サイトや伊〇塾の記事などを読んだら良いと思います.

受験に至る経緯

わたしは京都大学熊野寮に住んでいます.寮ではここ数年国総教養の受験が流行っており,わたしも流されて受けることにしました.だいたい第1次試験が後期の授業が始まる直前にあるので,目覚ましとしてちょうど良いと思います.

国総教養受験が寮内で流行したのは,友人のZが「受験料タダだし,受かれば〇藤塾やT〇Cに重課金しているボンボンを蹴落とせて気分が良い.」と触れ回って人々に申し込みさせまくったのが原因で,今年も寮から20人近くが受験しました.Zの受験体験記宣伝用Twitter(新X)アカウントはこちら.ちなみにZが言っている「受験料タダ」というのは微妙に嘘で,証明写真代や交通費がかかるうえに貴重な土日を3日も潰さなきゃいけないので,よく考えてから申し込んだ方が良いです.特に二次試験は紅葉の時期ですから,官僚を志望しないのであれば山に行って散歩でもした方がよっぽど有意義な時間の使い方であるように思います.

一次試験

一次試験3日前の9月28日,わたしはインドのデリーにあるシク教寺院の巡礼者食堂の厨房でナスを片手に倒れていました.衛生的に怪しい食事や標高5000mを超えるヒマラヤの山越え,カシミールでの野犬や詐欺師とのバトル,オートリクシャー(知らない人は検索)13人乗りでの移動などなどによるダメージの蓄積がここにきて限界を迎え,39℃の熱を出して動けなくなっていました.

倒れる前の様子
これを厨房と呼ぶのかは諸説あるかもしれない

しかし,ここでずっと寝ていては帰りの飛行機が行ってしまうので,気合いで立ち上がり,露店で買ったグァバを片手に地下鉄駅に向かいました.インドではグァバを買うと切って砂糖と塩をかけて袋に入れて渡してくれるので,これが経口補水液のような役割を果たしダメージを受けた体に効くのです.そんなに美味しくはないけど.本当ならタクシーで行きたいところですが出国前で現地通貨を使い果たしかけていたうえに,海外キャッシングが限度額を迎えていたのでこうするしかありませんでした.

そんなこんなで地下鉄駅まではたどり着きましたが,再び体力の限界を迎え地面に倒れこんでしまいました.これはしばらく帰国できないかもしれないぞと思いながらもがいていたら,通りすがりの人がエナジードリンク(なぜ?)をくれました.これを飲むと少し体調が良くなったので絶対に帰国するぞと決意を固めました.あのエナドリには怪しい成分が含まれていたのかもしれません.

インド人の優しさに感謝して再び立ち上がり,気合いと贈賄(それでもぼったくりタクシーと戦うよりはマシ)でなんとか空港にたどりついたときには飛行機のチェックイン締め切りギリギリの時刻になっていました.これはまずいかもしれないぞと思いました.LCCのいちばん安い運賃以外で飛行機に乗れるご身分ではないので当然便の変更などできません.しかし,ここで運が味方しました.飛行機が遅延していたのです.時間に余裕ができたので悠々とチェックインを済ませ,残りの経口補水グァバを食べ,解熱剤を飲みトイレと水飲み場を往復しながら飛行機を待ちました.

しかし,いつになっても出発のアナウンスが流れません.予約していたのがハノイ経由成田行きで2.5時間乗り継ぎの便だったので,これは大きな問題です.結局飛行機は2時間ほど遅れてデリー-インディラ・ガンディー国際空港を出発しました.機内でもずっとトイレと座席を往復していました.

ハノイに着いて飛行機から降りたのは次の日の朝,乗り継ぎ便出発の約20分前でした.おおよそ間に合わないだろうと思いつつも腹痛を我慢して乗り継ぎカウンターに向かうと,なんと航空会社の職員さんから成田行きの遅延を伝えられました.LCC特有の遅延の多さに感謝です.今回はさして大きな遅延ではなかったので急ぎ目に搭乗口に向かい,日本に向けて飛び立ちました.

帰国後はすぐに検疫に向かい,マラリアや鳥インフルエンザなどひととおりの検査をしてもらいました.その結果とくに何も検出されず,検疫の職員さんにも「インド帰りの人間あるあるだから特に気にしなくて良いよ」と言われたので,その日は東京に引っ越した友人(Zの受験体験記に登場するT)の家に泊めてもらいました.体調不良と過酷な移動で完全に体力を使い果たしたので,次の日(国総教養一次試験前日)の夕方まで寝ていました.

起きても体調は全く改善していません.もともと夜行バスで一次試験地の大阪に行こうとしていたのですが,さすがに体力的体調的に不可能な状況でした.仕方がないので,実際に行くかどうかはさておき,余らせていたマイル使ってとりあえず次の日の羽田発伊丹行きの初便を押さえて,東京でもう1日泊めてもらいました.

いざ大阪へ

一次試験当日は東京の友人宅にて午前3時台にかけたアラームで起床しました.熱も下痢も収まってはいませんでしたが,歩ける程度には体調が回復していたので,解熱剤を飲み,羽田空港に向かいました.空港のローソンで必要なものを印刷して飛行機に乗り、試験会場である大阪経済大学大隅キャンパスについたのは試験開始の10分前でした.登山靴を履いてヒマラヤ帰りの土埃まみれのばかでかい荷物を持って試験室に入ると,前の席に友人Rがいました.きちんとした身なりの人間がたくさんいる中なんだその荷物と恰好はと散々に言われましたが,京都に帰って荷物を置いてくる時間が無かったのでこれはやむを得ないことです.荷物がでかすぎて机間巡視の邪魔になるので欠席者の席に置くよう試験官に指示されました.

間に合った


でかすぎ荷物(ヒマラヤのすがた)

一次試験の午前は総合論文試験です.腹痛と悪寒が酷すぎて何も覚えていません.2つお題を与えられてそれぞれについてなんか書けという内容だったと思います.体調が悪くてあまり椅子から立ち上がりたくなかったので,途中退出はせずに試験室で文章を書いたり書かなかったりしていたら試験時間が終わりました.普段からちゃんと考えていますかというような内容なので,付け焼刃でできる対策とかはあんまりないと思います.お題に対する知識よりも論理的に物事を考えてそれに従った文章を組み立てられるかの方が重要なので,もし何か対策をするとすればそういったことの訓練をするのが良いのかなと思います.それなりに長丁場な試験なので食べ物をなにか胃に突っ込んでおいた方が良いでしょう.当然ですが,体調も整えておいた方が良いです.午後の基礎能力試験は頭働かなくても手を動かしていればある程度なんとかなりますが,こっちの総合論文試験はちゃんと考えなきゃいけないので体調による影響が如実に表れると思います.

午前試験が終わって試験室を出ると,寮生がたくさんいたので総合論文試験がどうだったこうだったという話をしました.この感じセンター試験ぶりだなぁと思い少し懐かしい気持ちになりました.この日は終日体調悪かったのであんまり何話したか覚えてないです.ばかでかい荷物についてはさんざんツッコミを受けました.

ひとしきり話したらコンビニにご飯を買いに行き,「早く帰りたいなぁ」と思いながら冷やし中華を食べ,「早く帰りたいなぁ」と思いながら試験室に向かいました.これまでの経緯と体調を考えれば仕方のないことです.午後の基礎能力試験はただ書かれている問題を消化するだけだったので特に面白いことは無いです.腹痛との戦いでした.ぱっと見でわからない問題もありましたが,あんまり深い思考をできる状況になかったので,ある程度考えて分からなかったら鉛筆転がしてました.全然その程度で良いと思います.対象となる出題範囲が広すぎるのでこれも付け焼刃での対策は難しいように思います.

そんなこんなで一次試験が終わりました.ちなみにこの体調不良は3週間くらい続きました.原因の心当たりが多すぎてどれがダメだったのかはわかっていませんが,皆さんインドに行くときは気を付けましょう.

一次試験~二次試験

一次試験の合格が分かったらまずしなければならないのが英語民間試験の成績証明の取り寄せです.試験によって違いますが,それなりに時間がかかるのできちんと調べておきましょう.わたしは院試のためにTOEICを受けていたのでそれを使いました.スコアに応じて15点加点と25点加点があるのですが,TOEICは割と簡単に25点加点が得られるのでおすすめです.

英語試験加点申請のほかに住民票記載事項証明の取得の手続きも行わなければなりません.わたしは住民票を現住所に移しているので,役場に行っていくらか払ってはんこを押してもらうだけで済みましたが,住民票を移していない人は住民票所在地の役場で手続きが必要なので注意が必要です.本人が出向く必要はありません.

また,これは最悪当日の朝でかまいませんが,二次試験の人物試験で用いる面接カードの記入も必要です.二次試験1日目に回収されるので忘れないようにしましょう.

まだ官庁訪問をしてないので先のことは分かりませんが,少なくとも国総教養に合格するまでの過程のなかでは一次試験~二次試験の間の手続きがいちばん難しいと思います.先ほど住民票記載事項証明の取得を「役場に行っていくらか払ってはんこを押してもらうだけ」と書きましたが,これをするためには当然昼間に起きている必要がありますし,持って行くものを調べて,カバンに入れ,現地に行かなければなりません.わたしは年金の学生猶予の申請を忘れて半年滞納しているのですが,こういった事務手続きが得意な者であれば今ごろ年金滞納などしていないでしょう.全然知らない町の役場にだったら喜んで行きますが,自分の住んでいるところの役場など特に面白くないので本当に行く気が起きません.我々のような手続き苦手人間にとって役場はインドより遠い場所なのです.

二次試験

2日間あります.めんどくさいです.

1日目(企画提案試験)

面接カードの記入は最悪当日で良いと書きましたが,気づいたら本当に当日になっていました.後回しにするのは良くない習慣です.6:00くらいから面接カードを書き始め,部屋に散らばった書類をかき集めて7:30に寮を出発しました.

スーツを着るのがめんどくさかった&こんなめんどくさいこと寮祭企画の一環だと思わなければやってらんないという理由により2日とも熊野寮祭の寮祭パーカーを着ていったのですが,これはおそらく良くない選択です.1日目は別にどうでも良いのですが,2日目の人物試験や政策討議試験では,試験の公平公正のために自分の所属大学等を明示・暗示する発言をしないよう強く言われます.実際に指摘は受けませんでしたが,寮祭パーカーのように所属を暗示する服装は避けた方が無難でしょう.こういったことは本来であれば受験者心得などに書くべきことだと思います.ほぼ全員スーツで来るので人事院がこういったパターンを想定できていないのでしょう.

話を戻します.会場最寄りの新大阪駅に着いて,ローソンで必要書類を印刷し,会場に到着したころには試験開始5分前でした.直前に着くとだいぶ慌ただしいのでもっと時間に余裕をもって行動した方が良いです.

1日目の企画提案試験は午前にプレゼンシート(A4表裏)を作成し,午後にそれをもとに面接官にプレゼン・質疑応答を受けるという形式です.午前のプレゼンシート作成で個人的に難しいと思ったのは,言及せよと指示されている内容を漏らさず拾いきることです.基本的なことではありますが案外難しいです.気の利いた企画提案ができるかということよりもむしろ,指示されたことをきちんとできているか・論理がしっかりしているかなどを見ているような気がします.知らんけど.

プレゼンシート作成が終わったらお昼ごはんタイムです.公平を期すために,ご飯を食べる以外のことは何もできません.スマホの使用も禁止ですし,読書も禁止です.隣の人と喋るのもダメです.わたしは午後のプレゼンの順番が早かったので比較的マシだったものの,最後のほうの人とかは本当に本当に暇だと思います.わたしはたまたま朝寮から持ってきたフルグラが手元にあったので,素材をより分けながら食べていました.わたし以外の人間もみんなコンビニ弁当の原材料名とかずっと読んでたと思います.それくらい暇です.フルグラのパパイヤには色が濃いやつと薄いやつがあることを知りました.フルーツは割と分かりやすいけど穀物はあんまりよく分かりませんでした.個人的なおすすめ暇つぶしアイテムは亀田製菓のぽたぽた焼です.読書は禁止だけどぽたぽた焼の「おばあちゃんのちえ袋」を読むのは禁止されていないので,何袋か買ってきてお昼ごはんタイムに読むと有意義な時間が送れると思います.「おばあちゃんのちえ袋」は20種類あるらしいのでコンプリートを目指しても面白いかもしれません.

午後は順番に呼び出されて午前中に書いたプレゼンシートをもとにプレゼンと質疑応答を行います.わたしの場合は時間が足りずだいぶ早口になってしまいました.フルグラを選別しながら発表の脳内シミュレーションをするべきでした.しかし基本はプレゼンシートを作りながらどれだけ発表内容を練ることができたかに左右されると思うので,午後は緊張せず気楽にいきましょう.

この日は疲れたので終わったら早く帰って寝ました

2日目(人物試験・政策討議試験)

2日目は先に人物試験をやってそのあとに政策討議試験を行いました.昼はまたがないのでご飯もぽたぽた焼も必要ありません.

人物試験では1日目に提出した面接カードの内容をもとに面接を行います.わたしは大学でやっている物理の研究の話を面接カードに書いたので,そこを中心に掘り下げられました.文系の場合は知りませんが理系の場合は似たような感じになることが多いと思います.そのほかは基本的に面接カードの内容に補足説明をしていくような形で進みました.わりとゆるふわな感じでおしゃべりしてたら時間が過ぎたので,正直これでなにを測られているのかはよくわかりません.

政策討議試験は,ある議題について各自メモを作成し,それをグループで共有して,メモをもとに討議を行うという試験です.討議の最中はグループのメンバーを番号で呼ばなければならないのですが,今回の大阪市会場の二次試験受験者の約1割が寮生であったことからわかるとおり,寮生の場合はそれなりの確率で知り合いが同じグループにいます.わたしのグループも5人中2人が寮生でした.容易に想像がつく通り,この状況で相手を番号で呼ぶのは難しいです.別に間違えたからどうこうというわけではありませんが焦ります.気を付けましょう.

国総教養はこれにて終わりです

最後に

結果としては合格していましたが,特に受かる要素も落ちる要素もなかったのでよくわからんなぁという感じです.どこで差がつくのかわからないので受験者に向けたアドバイスとかは特にありません.体調は整えた方が良いとは思いますが…… 個々の受験体験記からわかることというのはさしてないので好きにやったら良いと思います.

成績開示が出たら分析を追加するかもしれません.しないかもしれません.


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