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渋谷の夜を眺めた日

たまには恋愛の話を

高校の部活の同期を高校の三年間ずっと好きだった私。向こうにも気付かれていたかもしれないし、部活内の周りにも気付かれていたが、思いは実らなかった。彼は頭がよく、くりくりの瞳にメガネをかけていて、声も良くて、と恋をしている私にはいいところづくめって感じだった。当時の私は恋愛にかなり奥手だったし、見た目も自信がない状態。そもそも私というと教室の隅でずっと読書したり、終わっていない教科の予習を必死にやったりそんなことばかりしている人間だった。自称進なのでそのくらい地味でおとなしくてもやっていけたが、たまに揶揄われることはあったので周りに気を許すことはなかった。
教室はともかく部活だけはリラックスして行っていた。
さて、話を戻すとその部活は放送部なのだが、私のいた頃は県大会優勝後、わりと全国大会出場を果たしており、田舎町から都内へと宿泊をかねて遠征することも毎年行っていた。自分のいた部の強みは団体で行うラジオドラマ制作だった。私の好きだった彼は高校2年時から先輩のノウハウを引き継いで音声編集担当になった。PCや機械に強く、何でもできる印象だったので恐らくは後輩からの羨望もあっただろう。だが、高校生活の間は何もなく卒業するタイミングも何もなく、時間だけが過ぎた。それぞれ大学進学を果たし、OB会などを開いても会う時間などはなく、その後も私は4年間恋愛は何もなく過ごした。好きという感情も薄れていたと思う。

そして時は流れて、社会人になってから私はSNS経由で何度か出かける約束をしていた。しかしずっと元カノの話をされて不満だっただけでなく、デートした後は妙な悲しみとイライラに襲われた。例の彼はというと見た目が随分変わっていて、職も転々としていた。酒癖も悪い感じになって居酒屋で大声で話す姿がイメージと違った。やがて私の前でベロンベロンに酔った彼と渋谷のTSUTAYAの上にあるスタバに行って渋谷の夜を眺めた。おいおい、大丈夫かーと声を掛けたくなるほど彼は酔って結婚してえなあなどと言うので私は内心慌てた。

ないないないない!絶対ない!と。

そもそも私に言われてないよなと言いながらその結婚したいなあは無視し、横断歩道を渡っているコスプレした日本人の女の子などを見ていた。渋谷の夜も何もなく終わった。
それ以来連絡は取っていない。一度誕生日にLINEのメッセージが来たが、ありがとうとだけ答えてLINEは終わりにした。
たまに思い出すのはやっぱり高3くらいの彼の姿で、猫背でパソコンをいじっている後ろ姿だった。

ただ、人って変わるんだなって話をしただけになってしまったが、初恋には違いないのでここに記録した次第だ。彼がちゃんと定職にありつき幸せになっているといいなあとは思う。

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