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思い出せ

死にたくなったら思い出せと自分で唱えている出来事がある。
死にたくなったら思い出せ。
私はあの痛みに、恐怖に耐えたじゃないか。生きて普通の暮らしが出来ることをありがたがったじゃないか。

ちょうど1年半前、私はとある大学病院の婦人科に入院していた。病名はチョコレートのう胞。右卵巣にできた陽性か陰性か開けてみないとわからないのう胞だった。
病院探しはかなり苦労した。婦人科のある名医がいる病院を求めて横浜から岡山まで行ったこともあった。結果的には精神科がなく、心理的サポートができないからと断られたので家から最も近い大学病院に入院することとなった。
婦人科での入院は想像以上に快適だった。というのは精神科病院の閉鎖病棟に比べての話だ。閉鎖病棟がどれだけ劣悪な環境か思い知らされるくらい、病室は快適で思うように家族が面会に来てくれて。自殺企図をして措置入院したときに比べたら天と地の差だ。

しかし、手術の不安は大きかった。人生で経験したことのない開腹手術を30歳で行なうのだった。不安要素は痛みや麻酔や手術失敗の妄想まであらゆることに至った。死にたいとSNSに呟いていたり、自殺企図した人間もいざ手術でいのちにかかわるとなると怯えて、生きたいだとか手術がうまくいって欲しいと思うのだなあと。
手術当日はほとんど記憶はなかったが、術後の麻酔が切れて下腹部が強烈な痛みに襲われたことだけ覚えている。多分痛くて軽く暴れたような。
こんな思いをして生きている現実があるのにまだ、死にたいと思うことはある。ちょっとした物事がうまく行かないとかそんな理由で死にたくなるのだ。だけど思い出せと脳に命令する。

あのときはどうした?

手術の痛みにも恐怖にも耐えたじゃない

あの時に比べたらたいしたことないよ

自分を鼓舞する言葉を並べて思い出す。これだけでも気の持ちようが変わった。あくまでこれは私の場合だが、自分を励ます、過去の体験で特に成功体験のようなものは思い出し励みにする、というのはだいぶ効果がある。自分で自分を励ます、それで私は救われている。

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