マウントを取り合う人たち
「わからない事があったらすぐになんでも聞いてね」
「それぐらい自分で考えて」
こんな事を上司から言われた事ありませんか?
普通に考えて「どっちやねん」としか言いようが無いこの矛盾した二つの指示を「ダブルバインド(二重拘束)」と言うのですが、これは相手を強力にコントロールする事が出来る手法です。しかしこの矛盾した指示を与えられた方は精神疾患にすら繋がる可能性があるようです。
ただこの現象、相手を精神疾患にしてやろう!と積極的に考えるサイコパスな人よりも、そんなつもりではない人々が良く発生させてしまう現象でもあったりします。
「どうしてそんなミスをしたのか理由を説明しろ!」
「実はこれが理由で」
「言い訳をするな!」
「何食べたい?」
「なんでもいいよー」
「じゃあパスタにしよう」
「ん-、パスタの気分じゃないなぁ」
でもこれらに関して、実はもう少しだけ重要な要素があったりします。
・2つの矛盾したメッセージを送る
・どちらのメッセージに従っても罰がある
・メッセージの矛盾から逃れられない
・その結果強くストレスを感じる
ここまで至るかどうかです。
なので先ほどの例でも
「言い訳をするな!」
「いや、お前が説明しろって言ったんだろ」
と言い返せるような環境ならダブルバインドから逃れられます。
冒頭で「上司に言われた事ありませんか?」と問いかけたのは実はこれが理由です。
2つの矛盾したメッセージを知らない人に投げられたら普通無視をします。
自分より年下の部下に言われたら反論できます。
仲の良い友人に言われたら突っ込みを入れられます。
でも上司に言われた時だけ反論できず委縮してしまう。
これは権威構造が背景にあるためではないでしょうか。
矛盾したメッセージを受け取った後に
「自分が我慢すればこの場は丸く収まる」
と考えてしまう関係は要注意です。
この権威構造は実際の職責以外の部分でも、相手の声が大きいだけで生じる現象です。
粗野な人と繊細な人の間でも発生します。
いわゆる「マウントを取られる」状況です。
この権威構造は相手をコントロールするという意味では”便利”な手段で組織の中でとりわけ多く用いられます。
会社で決めた事を強力に推し進めるためにはこの権威構造は優位に働きますが、冒頭で述べた通り、同時に部下の精神疾患を誘発します。
近年「エンゲージメント」という言葉を用いて従業員の企業に対する貢献意欲を意識する傾向が見られますが、この権威構造がエンゲージメントをバキバキに破壊している状況も多く見られます。
では権威構造が悪なのかというと必ずしもそうではありません。
例えば「俺が全て責任を取るから自由にやれ」という上司の下に居たとしたら、権威構造がむしろ良い方向に働く可能性すらあります。
ここで出てくるキーワードが「心理的安全性」です。
細かい定義は色々ありますが、平たく説明すると「この人ならちゃんと話せばわかってくれる。自分を受け入れてもらえる」と思える関係や状態です。
パスタを提案して断られた後、相手の気に入る選択肢を用意出来ないとキレられる関係ではそうはなれません。
先ほども述べた「自分さえ我慢すれば丸く収まる」が一番ヤバいです。
普段の生活でこの言葉が脳裏を頻繁によぎる人は悪いレールに乗っている可能性が高いので気を付けてください。
もし可能であればその関係から逃れる方法を真剣に考えたいです。
それが出来たら苦労しないからダブルバインドされている(逃れられない状況に陥っている)のですが、例えばそれが職場で発生しているのであれば、周囲を巻き込んででもそうならないように対話を。
対話ではどうしても解決できないような環境なのであれば、究極転職も視野に入れないと、精神疾患になる可能性が大いにあります。
私の周囲にも似たような状況で精神疾患に掛かった人が何人もいますし、私も「自分さえ我慢すれば丸く収まる」状況を我慢し続けた結果毎朝食事を全てリバースする状況になった事もあります。
僕はここで「よっしゃ辞めたらぁ!」とすごい勢いで退職したので今は健やかに暮らして、体重も無事10kg以上増えてしまいましたが、このような負のスパイラルに陥っている方は本当にお気をつけくださいね。
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