「花街の剣の舞姫」第二話
武闘会を盛り上げるため、小雪が十人、半月が五人、そして三人しかいない大華全員が王城に招待された。
一体いくらの金を払ったのか、世間知らずのお坊ちゃんかと思いきや、もしかしてとんでもない上役のお役人様だったのかも、と呟いたのは美美だ。
王城へ赴くとなって、いつも以上に美しく着飾った遊女の中に混ざった桃花は、自分だけ場違いじゃなかろうかと不安で仕方ない。
光雅楼まで寄越された馬車に乗った遊女たちは、興奮から甲高い声で賑やかに話している。
桃花と同じ馬車に乗っているのは大華の美美と杏杏、半月で古参の鈴鈴|《リンリン》だ。五台の馬車が列を成し、王城へと向かう様子はとても目った。町民たちはなんだなんだと家から顔を覗かせている。
「にしても、アンタが受けるとは思わなかったわぁ」
「何がなんでも行かないって拒否しそうなのにね」
「やっぱ、あの若様がイイ男だったから? 帰ってくとき、頬っぺたに真っ赤な痕つけてたけど何されたのよぉ」
「うるっさいなぁ、なんにもされてないよ」
「何にもされてないなら花つけて帰るわけないじゃない」と、姦しくきゃっきゃと声を上げる大華のふたりにうんざりする。だからこのふたりと同じ馬車は嫌だったんだ。人が眠ったふりしても、お構いなしに話しかけてくる。
美美と杏杏は、本当の姉妹みたいに仲が良い。
花の色香を放つ美美と、幼い顔立ちの愛くるしい杏杏。
黒と紫の反物に金の花を散りばめた衣をまとった、夜の女王のような美美。対照的に、白や淡い色合いの衣を着た杏杏は、精霊や妖精の類かと勘違いしてしまうほど可愛らしい。
きゃっきゃとはしゃぐふたりを、微笑ましく見ているのが鈴鈴だ。
落ち着いた色合いの衣は彼女の雰囲気とよく合っていて、低めの声音で紡がれる子守唄は男たちに大人気。母性にあふれているというかなんというか、行為で鈴鈴のことを「母上」だとか「母さん」だとか呼ぶお客もいると知ったときはドン引きした。
桃花の一部の熱狂的な愛好者の中に、「踏んでほしい!」「罵ってもらいたい!」と願望を抱いているお客がいるのは、当人も知らぬところ。
「お城が見えてきたわ」
静かに窓の外を眺めていた鈴鈴に、三人揃って外を見る。後ろに続く馬車からも、はしゃぐ声が聞こえてきた。
高い塀に囲まれた、紫禁城。
こんな機会じゃなければ、足を踏み入れることなんて一生なかっただろう。
門前には、官服を着こなした桃真が待っていた。
深い蒼を基調とした衣に、射干玉の髪を半分だけ結い上げて、銀の簪を一本挿している。美美の言った通りだったんだと、内心驚きながら、姐たちに続いて馬車を降りた。
歳若い遊女たちは、顔の良い桃真に頬を染めて落ち着かない様子だ。横目にそれを見て、なんとなく、心がざわついた。
「お待ちしておりました。ようこそ、紫禁城へ」
深い蒼は、桃花の瞳と同じ蒼だった。
その色を身に着けられる者は、限られている。
「あら、まぁ……どこかのお坊ちゃんかと思いきや、お役人様で蒼家のお坊ちゃんだったなんて、若様も人が悪うございまいてよ」
カラカラと笑う美美にふんわりと笑みを形作る桃真。
蒼家と言えば花街育ちの桃花でも知っている、紫王家に次ぐ由緒正しい古い貴族だ。
華国は紫州王都を中心に、東に碧州、南に紅州、西に黄州、北に蒼州があり、色の名を氏とする一族が州を治めている。碧家、紅家、黄家、蒼家は紫王家から派生した四大彩家と呼ばれ、王族に次いで大きな権力を持つ豪族だ。
まさか桃真が、蒼家の人間だとは思いもしなかった。
「会場までの案内を承りました。どうぞ、ついてきてください」
遊女に混じる桃花の姿を認めた桃真は、笑みを深めて視線を送ってくる。なんだか気に入らなくて、視線を反らして立派な門を視界に収めた。
大きな門を潜り、向かうのは紫禁城南西部にある武英殿だ。
武官の詰め所で、広い訓練場を兼ね備えている。物珍し気に門を潜る遊女たちを厳めしい表情で見やる門兵たちだったが、姐たちがしゃなりと微笑んで手を振れば、頬を緩めてだらしない顔を晒した。
衛兵だけでなく、すれ違う官吏たちですら、色香の集団にぽやんと現を抜かして柱にぶつかっている。
「はぁ、まったく……」
額に手を当てて溜め息を吐く麗しい御人は、気苦労が絶えなさそうだ。
春の風は冷たい。石畳の広い訓練場に、風除けの絹屋がいくつも張られていた。
「ようこそいらっしゃった! お美しいお嬢さん方! こんなにたくさんの美人に応援されちゃあ武闘会も盛り上がること間違いねぇ! 今日くらいはテメェを褒めてやってもいいぜ、お坊ちゃん」
桃花たちを出迎えたのは、大口を開けて笑う大柄な男。鍛え上げられた立派な筋肉は、服を着ていてもわかった。
精鋭兵の集まりである羽林軍の総大将・名を茶竜朴だ。
遊女の姐さんたちは、魅力的な肉体に夜を想像して指を咥えている。きっと、後からお声がけが行われるだろう。
「貴方に褒められても嬉しくないですね。ほら、さっさとそこをどいてください。彼女たちをいつまでも日差しの下にいさせるわけにもいかないでしょう」
「相変わらずクソ生意気な坊ちゃんだぜ……。お嬢さん方には特等席で応援してもらわなきゃならねぇからな。主上の真正面の絹屋に案内してやってくれ」
主上――王様の真正面!
浮足経つ遊女たちとは反対に、美美や鈴鈴は眉根を寄せ合わせた。
「場所はどこでもいいんだけど、王様の真正面って緊張して酒も注げやしないよ」
「安心していい。主上はとてもお優しい方だ。それに真正面とは言っても五間は離れているから、目が合う距離ではないよ。まぁ、もしかしたら大華の方には、主上の元へ向かってもらうかもしれないが」
「その分お金が弾むなら、わたくしたちはなぁんにも言わないわぁ」
うふ、と甘い声音に桃真は苦笑いだ。
わたしだったら断固拒否するけど、と桃花は胸中で呟いた。
大華や半月の一部は、内儀から金づるを捕まえて来いと仰せつかっているに違いない。
光雅楼にも官吏のお客様はいらっしゃるが、総じて金払いが良い。それなりに高官だというのもあるが、お役人様というのは見栄っ張りな御方が多いのだ。気に入りの遊女のためにちょっとばかし奮発して、それが続いた末に金に困っているのを何度も目にしたことがある。
何度でも言うが、金が払えないなら石ころ以下だ。
金が払えなくなったと分かれば、遊女は男を袖にして、新しい男を見つける。
花街とは、そういうところ。金がなければ遊べない――蒼家のお坊ちゃんである桃真なら、金に困らないだろう。
「どうかな、城へ来た感想は?」
隣にやって来た桃真にゲッと舌を出した。
彼が隣にいると、自然と視線が集まってきて落ち着かない。
「別に、これといった感想はありませんが」
「城へ来るのは初めてだろう? 大体、初めて来た人は想像以上に煌びやかで驚いた! とか言うんだけど」
「しいて言うなら、貴方が蒼家のお坊ちゃんということに驚きました」
桃花の知っている貴族のお坊ちゃんは、偉そうに胸を張って、女をあたかも自身の装飾品かのように扱うのだ。
大した恋愛経験もなく、春画の情報を鵜呑みにして、抱いた女に後から「下手くそだった」と笑われているとはまさか思うまい。
みんながみんなそうではないが、遊女たちの話を聞いていればそう思わざるを得なかった。
だから、あの蒼家の人間だと知って驚いた。同時に、頬を引っ叩いてしまったことを後悔した。私刑に処されてもおかしくないことをしたのに、桃真は変わらぬ笑みを浮かべて話しかけてくる。
「あの時はお忍びだったのでね」
「そのわりには、毎週来ていらっしゃったじゃないですか」
「君の舞が見たかったんだ。はじめの一回目以外は全て自腹だよ」
「遊女の間で噂になってますよ。わたしの剣舞だけ見て、酒も飲まず、女も抱かずに帰る色男がいるって」
「だって、君、座敷には上がらないんだろう? 僕は君の舞を見に行っているのだから。君が座敷に上がらないのであれば、君の舞だけを見て帰ったほうが時間も有効的に使えるだろ」
つまり、酒を飲んで女を抱くことは有効的な時間の使い方ではない、と。妓楼に来ておきながら、この男は何を言っているんだ。
至極真面目な顔で言うのだから、ことさらにおかしかった。遊女の在り方を否定する男に、どうして自分が気に入られたのか不思議でならない。そんな男に、舞を気に入ったと素面で言ってもらえることが、ほんの少しだけ嬉しい。
桃花の剣舞を気に入り、率直に褒めてくれる。嬉しくないはずがなかった。言葉はぶっきらぼうだし、態度もそっけないが、毎週最前列で見てくれる男の顔を覚えないほど、桃花は薄情ではなかった。
あと一刻もすれば、武闘会が始まる。開会挨拶が終われば、桃花の出番だ。
会場内は徐々にざわめきを増し、観覧する官吏や出場する武官が集まり始めていた。
艶めかしい遊女を見て、頬を紅潮させる女慣れしていない武官もいれば、舌なめずりをして遊女を見やる官吏もいる。そんな彼らに、姐さんたちは営業用の笑顔を浮かべて手を振った。
「――御妃様たちの登場だよ」
桃真の声に従って、真正面の上座に視線を向ける。華美な衣装をまとった妃たちがやってきたところだ。
緩やかに、お淑やかに登場したのは黄色の衣をまとった妃。四人いる妃の中で一番歳若く、今年で十七歳になるという桜妃《オウヒ》。
現在、四妃すべての席が埋まっており、その四妃とも四大彩家の姫君である。
桜妃、葵妃《キヒ》、蘭妃《ランヒ》、椿妃《チュンヒ》と花の名を冠した妃たちが侍女を伴って登場し、ほどなくして陛下が現れた。紫の衣に、高貴な血筋を表す銀の髪を靡かせ、切れ長の瞳が会場を見渡す。
思っていたよりもずっと若かい王に、もっと髭を蓄えた厳格な男性を想像していた桃花は思わず「若っ!?」と小声で漏らした。静まり返った会場内に響いていたかもしれないと、面布の上から口元を覆い隠す。
「ふふっ、主上は今年で十九にならせられる。僕と同じ歳だ」
「誰もあなたの歳なんて聞いてないです」
「そういえば、君は何歳なんだ?」
ムッと口を噤んだ。
物心つく前から、桃花は光雅楼にいた。親の顔がわからなければ、正確な年齢もわからない。どうして光雅楼で育てられることになったのかも、桃花は知らなかった。光雅楼の大旦那は何か知っているのだろうが、聞こうとも思わなかった。聞いたところで、どうにかするつもりもなかったからだ。
親を探して、感動的な再会を望むわけでもなければ、どうして捨てたのと罵るわけでもない。一切の無関心だ。
今の今まで育ててくれたのは光雅楼の女たちで、桃花はそれに満足している。桃花にとって、光雅楼が家で、遊女たちが家族だからだ。
あえてそれを桃真に言う必要も感じず、「十六くらいです」とだけ答えた。
「くらい? 自分の年齢なのにわからないのか?」
「むしろ、花街にいて自分のちゃんとした年齢を知っているほうが珍しいですよ。女も男も、売られて花街にやってくるんですから」
大切に育てられたお坊ちゃんにはわからないだろう。
花街とはそういう世界だ。生きるも死ぬも、今日次第。
バツが悪そうに、「すまない」と小さく謝った彼に、それ以上何か言うこともなく、桃花も口を噤んで黙り込んだ。
気まずそうにする桃真を横目に、小さく息をついた。
広い石畳の上で、総大将が開催の口上を述べている。長々しい巻物を手に、若干棒読みのところもあって、本人も飽き飽きしているのが見てわかった。
「茶総大将」
「は、」
王から発せられた声は、夏の夜の冷たさを詰め込んだようだ。
「長々とした口上はよい。陽にも恵まれた良き日だ。ハメを外し過ぎぬよう、皆楽しめばよかろう」
「――お言葉、頂戴いたします」
にんまりと口角を上げて笑い、巻物を仕えの宦官に手渡した総大将は、声高々に武闘会の開会を宣言する。
「開催するに先立ち、花街一の妓楼・光雅楼からお嬢さん方をお招きしております! 並びに、光雅楼の舞い手による、剣舞にて鼓舞していただきましょう!」
さぁ、いってらしゃい、と桃真に囁かれた。
姐たちに無駄に着飾られた桃花の耳もとで、しゃらしゃらと耳飾りが揺れて音を立てた。清流のような響きが、ざわめき立った心を落ち着かせてくれる。
共に演奏を奏でてくれるのは、光雅楼でも腕利きの二胡の奏者だ。
愛剣を片手に、からんころんと下駄を鳴らす。背中に桃真の視線を感じながら会場の中心へ。
会場内は静けさを保ちながら、熱気に包まれていた。
陛下と絹屋のちょうど間で立ち止まり、両手で剣を掲げて一礼をする。ピンと糸が張ったような空気の中、ゆっくりと片足を振り上げ、カンッと下駄で石畳を踏み鳴らした。それを合図に、二胡が奏でられる。
晴天の下、軽やかな旋律が響き渡る。
「まぁ、志雄英伝ね。この曲好きよ、私」
「どのような曲なのでございましょうか?」
「遥か昔、世界が闇に覆われたとき、ひとりの男が剣を振るい、闇を断ち切ったという伝説から、彼の男の武勇を讃えて作られた曲よ。序盤は闇を表現する静かな始まり、中盤にかけて剣を振るう男の猛々しさと荒れ狂う闇の激しさを表現し、終わりは闇に打ち勝った穏やかな旋律という序破急で奏で方も旋律も全く違う難易度の高い曲よ。私は特に、激しさを増す中盤が好きだわ」
わくわくを抑えきれない表情を桜妃に向けられて、桃花は気分が高揚していくのを感じた。
切りそろえられた艶やかな黒髪が宙を舞い、闇を切り裂く剣が空気を一閃する。
上質な絹で誂えられた衣装は、今日この日のために内儀が用意をしてくれたものだ。たっぷりと贅沢に布を使い、音に合わせて翻るたびに裾が風に靡いて細い手足の線を浮かび上がらせた。上衣は何よりも白い純白で光を映し、裳は裾へかけて濃い青藍へと色変わりして、まるで青い海の白波のようであった。
細い手首を回して剣を振り、足を踏み出すたびに環がしゃなりと音を立てた。不思議と、下駄を履いているのにからんころんと音を鳴らしたのは最初だけで、軽やかな足取りで桃花は石畳を踏んでいく。
頭の中で想像するのだ。世界は闇に包まれている。
剣を一閃するたびに、闇は断ち切れ、祓われ、空気は清らかになっていく。
繊細で、軽やかな振りから、男性的で大胆な振りへと変化する。まさしく、桃花は剣を振るう男であった。
「見たことのない舞だ」
「そりゃそうよぉ。今日のために、あの子、練習していたんだもの」
「……いつもの舞とは違い、とても大胆で、自由に舞っているように見える」
「あら、やっぱりいつも見に来てくださっているだけあって、違いがわかるのねぇ。店で求められるのは官能的で繊細で、女性的な舞だから、あそこまで派手なものは内儀様に却下されるもの」
薄絹の面布に隠れて見えないが、確かに彼女は笑っていた。心底楽しいと、自由であると。足を踏み出し、手を伸ばし、剣を振るうたびに彼女の世界が広がっていく。
「若様には感謝しているんですのよ」
「それは、どうして?」
「あの子が自由に舞うことのできる舞台を用意してくれて。店じゃ、ああはいかないもの、舞台だって限られているし、大胆で派手な振り付けはできないからねぇ。振りを考えて、練習しているあの子、とっても楽しそうだったのよ。普段仏頂面なくせに、奏者の子と話しているとき、この舞のことを考えているときは目をきらきらさせて、早起きだって苦手なくせに朝早くから起きて練習をしていたんですのよ」
口元を袖で隠して、美美は笑みを深める。
花街は窮屈な世界だ。花街で育ち、妓楼で育てられたというだけで将来は決まってしまっているようなもの。今回の話がなければ、外を知らずに一生を花街で過ごしていただろう。
美美は、桃花が可哀そうでならなかった。狭い世界しか知らない、自分には剣舞しかないと思っている子に、世界は広いのだと教えてやりたかった。
「わたくしから、お礼を言わせてくださいませ。……ありがとうございます、若様。これで、あの子の世界が少しでも広がればよいのだけれど」
「お礼を言いたいのは僕もだよ。僕は、彼女の舞がどんな舞い手よりも素晴らしいと感じた。彼女と出会えたことに僕は感謝したい」
「あら、あら。まぁ。とても熱烈でございますわね。是非、桃花に直接言ってやってくださいまし。顔を真っ赤にしながら喜ぶと思いますわ」
「はは、また引っ叩かれないといいけど」
「そうしたらわたくしが慰めて差し上げますわぁ。それに、名前で呼んであげたら喜ぶと思いますわよぉ」
――しゃん、と音が途切れ、静かに旋律が終わる。
剣を抱きしめ、うずくまった彼女は肩で息をしていた。静寂が場を包み、陛下が立ち上がって手を鳴らした。
「素晴らしい舞であった」
有難き言葉に、舞い手を褒め称える拍手喝采が鳴り響く。
紅潮した頬に、汗が額を伝う。こんなにも激しく舞い踊ったのは初めてだった。とても気持ちよかった。乱れた呼吸を整えながら、始まりと同じように剣を掲げて拝礼する。
体力を使い切り、ふらつきながら姐たちの待つ絹屋に戻ろうとする桃花の体を支えたのは、桃真だった。
「蒼様」
「堅苦しい呼び名は好きじゃないな。桃真、と呼んでくれ」
「……桃真様、なぜ」
「君をここへ呼んだのは僕なんだ。これくらいさせておくれ。……素晴らしい舞だったよ、タオファ」
率直な賛辞に、胸からこみ上げる感情を消化することができず、へにょりと目尻と眉を下げて気の抜けた笑みを浮かべた。
嬉しい、一生懸命考えて、頑張った甲斐があった。
顔を赤くして、ぶっきらぼうにお礼を言われるのだろうなと思っていた桃真は、予期せぬ笑みにギシリと体を固くした。素晴らしい舞い手という認識だったのに、彼女がとんでもなく可愛い生き物に見えてしまったのだ。
蒼桃真、十九歳。初恋はまだである。
第三話