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童話【ちょっと おやすみ】(幼年向け)


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 小さな庭のかたすみに、大きな茶色の鉢があります。
 水のはった鉢には、緑色のまるい藻がういています。
 水の中で、メダカの家族がくらしています。

 サクはメダカの男の子です。
 寒くても、へっちゃら。
 今日もプランクトンをおなかいっぱい食べています。

「ふぁあー。ねむたくて、ねむたくて」
 お父さんがあくびをしました。
 お母さんもつられてあくびをします。

 冬のあいだ、メダカは冬眠して、あたたかい春をまつのです。

「ぼく、ねむくなんかないもん!」
 サクは泳ぎまわっています。
 やわらかな草をぱくぱく食べます。

 お兄さんや弟たちは身をよせあって、うつらうつらしています。


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 それから、数日後の朝です。
 きーんと水が冷たくなり、うっすら氷がはりました。
「朝だよ、ねぇ起きて」
 サクがはなしかけても、お父さんとお母さんは、ねむったままです。
 お兄さんや弟たちもねむっています。

「ねむるなんて、もったいないよ。ご飯も食べられないし、泳げないし」
 サクは小さなあくびをしました。
 それから、泳ぎだしました。

 水の中から外を見あげると、ひかりがさしこんでいます。
 氷をとおしたひかりは、たくさんの細い糸にわかれています。
 ひとつになったり、束になったり、またひとつにもどったり。


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 サクは水の中のひかりをおいかけるのが好きです。
 しかし、いつも、お父さんとお母さんにおこられていました。
 鉢の上の方へいくと、いたずらネコに食べられてしまうからです。

「てっぺんのひかりにふれてみたい!」
 サクはぐんぐん泳ぎだしました。

 水面の藻のすきまを目指します。
 まるで、ひかりの道をおよいでいるようです。
「きもちいいなぁ」
 サクがつぶやいたときです。

 パシャッ!

 ネコの手がうすい氷をわりました。
 藻がサクをまもってくれました。
 けれども、サクは気をうしなってしまいました。

 でも、だいじょうぶ。
 サクはちょっとおやすみしているだけです。
 春になったら、きっと一番早く目をさますでしょう。

#童話 #幼年童話 #言霊さん #言霊屋

〜創作日記〜
お世話になっている「教育雑誌」に書かせていただいた童話です。
低学年向けです。
テーマ作品では生態を間違えてはいけないので、短めの作品でも
かなり調べて書き込み、そして大幅削りました。

イラスト:okadodo様


新人さんからベテランさんまで年齢問わず、また、イラストから写真、動画、ジャンルを問わずいろいろと「コラボ」して作品を創ってみたいです。私は主に「言葉」でしか対価を頂いたことしかありませんが、私のスキルとあなたのスキルをかけ合わせて生まれた作品が、誰かの生きる力になりますように。