白石雨月

小説を書いています。日々思ったこと、考えていることを書いています。 Twitterもやっています →@shiraishiugestu 宜しくお願い致します。

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最近の記事

こんなにも空が青い日に

抜けるような青い空に、もくもくと立体的な雲が我が物顔で居座っている。ぎらぎらと照りつける太陽と、遠い場所で鳴る風鈴の音。 なぜか、この時期の土日休みがほかの季節よりも楽しい気分になるのは、私の中に残る夏休みの残滓のおかげなのだろうか。 そんなことをつらつら考えながら、木陰を歩く。境内までの道は、緑が多いお陰か日向よりも涼しい。長い参道を吹き抜ける風に、目を細める。 胸元にぶら下げた守袋が、ゆらゆらと揺れた。 その時、ひときわ強い風が吹いて、私の被っていた帽子がとばされた。焦げ

    • ハローハロー

      宗助は、空を見上げるのが大好きな子供だ。もっとも、そういう子供は多くいるだろう。天気のいい日に、母親と手をつないで上ばかりみている危なっかしい子供は。 しかし、宗助はどんよりと曇った空を見上げるのが好きな子供だ。雲は黒くて分厚いほどよい。雨雲には興味がなく、どんより分厚い曇り空を、大きな目をキラキラさせて見上げている。 幼稚園から帰って手を洗い終わった宗助は、いつものように、自分の部屋の窓から空を眺めていた。 しかし、空の様子はいつもと違っていた。灰色の雲よりも黒い豆粒のよ

      • むかしむかしのお話

        虹のふもとには宝物がある。 祖父から聞いたおとぎ話を、本気にしたわけではない。 しかし、あまりにもくっきりとした虹を空に見つけてしまったので、思わずふもとを見てみたくなったのだ。 幸いにも、自分はかなり強いので、かすり傷一つ負わない自信がある。そんな自信に後押しされ、俺は家を飛び出した。 うっそうとした森を越えしばらくすると、周りにごつごつとした岩が目立ってきた。空気は乾燥していて、自分の住処とは全然違うなと周りを見渡す。 虹のふもとは、この乾いた大地の辺りを示していた

        • 瓶詰の歌

          早朝の海辺は、静まり返っていた。さくさくと、少し湿った砂を崩す音がやけに大きく聞こえる。 今日は、何かいいものに出会えるだろうか。  色素の薄い瞳で遠い朝焼けを見ながら、青年はぼんやりと考える。 太陽が昇る前、この薄明かりの中で。あるいは、月の下で。そういう薄明の中でのみ、青年は自由だった。 そして、そういった明るさの中で、海辺を散歩することを好んでいた。 昨日の、異国の硝子は高く売れた。できれば、あれくらい価値があるものを拾いたい。 つらつらと考えていた青年の足が、何