一力遼、応氏杯優勝!
皆様こんばんは。
名人戦は封じ手予想をし損ねてしまいました。
ハイレベルな戦いの結果、一力挑戦者の連勝となりましたね。
さて、その一力九段がついにやりました!
3連勝で応氏杯優勝です!
私が入段して以来日本勢の優勝がなかったので、実感としては初優勝ぐらいのものですね。
この日を長く待ち望んでいました。
対局の模様はYoutubeの日本棋院囲碁チャンネルや日本棋院ネット対局幽玄の間で中継されましたので、そちらもぜひご覧ください。
一力九段の黒番です。
色々な打ち方が考えられる場面ですが、黒1、3には優雅さを感じますね。
井山九段と同様に、昔の一力九段の碁には絵画的な美しさを感じることが多かったです。
現在では昔ほど表には出てこなくなりましたが、やはり根っこにそうしたセンスがあるのでしょうね。
センスだけでは戦えないので、当然白1のツケコシ対策は用意しています。
形に明るい方は、黒4ではAと飛びたいと感じられると思いますが、白B、黒C、白Dとなると取られてしまいます。
それはプロなら読むまでもないことですが、黒4と打たなければならないことを分かったうえで、前図の打ち方を選んだことがポイントですね。
きれいな形を作ることは非常に大切ですが、それはあくまでも目的の達成のための手段です。
目的の達成のためには、ときには手段を選ばない割り切りも必要なのです、
本局はきれいな形より目的優先という場面が多かったですね。
黒1は美しくない形の代表ですね。
空き三角に打って白2と先に伸びさせています。
形だけを見れば、黒1ではAと打つ方が良いことは明らかでしょう。
しかし、その場合は白Bと打たれて黒×が苦しくなります。
そこで、実戦は黒1によって黒Cの先手1眼を確保し、必争点の黒5に回ったというわけですね。
本図も実戦派の打ち回しだと思いました。
形だけ見ると、黒1、白2がひどい交換になっていますよね。
何もなければ出切りが残るわけですから。
しかし、その交換がない理想図は現実にはあり得ません。
となれば、黒7の切りを入れられた現実を大事にしようというわけですね。
再びの空き三角です。
これで黒Aは白Bで取られますからこの一手ですが、前から分かっていたのに本図を回避しなかったということです。
空き三角にされても、白を切断するという目的に比べれば些細なことというわけですね。
まだ対局を見ていない方もいらっしゃるかと思います。
中央黒と白が競り合っている状況ですが、次に黒はどう打ったでしょうか?
黒△のツケ!
トッププロになってからの一力九段を象徴するような一手ですね。
この手で黒Aなら誰でも打てますし、間違いのない一手でもあります。
しかし、例えば白B、黒C、白Dのような進行をイメージすると、黒が押し込まれているような印象もあります。
それを逆に押し込もうというのですね。
なんという厳しい発想でしょうか。
おとなしく白6と伸びるのではなく、白1から3とハネて抵抗しましたが、もちろん予期しています。
黒6と切り、そして黒10と空き三角に打ったのが用意の手でした。
形だけ見れば、この手では黒A以外あり得ません。
しかし、中央白を閉じ込めるという目的のために形を犠牲にしました。
黒6、10など本気で白を取りにいっています。
そして、白11に対して黒12と押さえられることがポイントですね。
黒×で白×のダメを詰めたことで、白Aと打たれてもシチョウになりません。
とは言え、白1の切りから上下の黒を狙われることになります。
黒もかなり危険な状況ですが、果たしてどうなるか・・・。
黒13と当ててコウになりました。
コウになった部分は当然として、黒×や白×の生き死ににも影響してきます。
大変なコウ争いです。
結果、白がコウに勝って黒×を取り、黒は白×を取ったうえで白〇も取れそう、という振り替わりになりました。
黒としては不本意な結果で、白優勢になったようです。
黒8と白を分断し、そして黒10の置き!
一力九段の形勢判断は正確ですから、黒不利は自覚しています。
ただでは帰さないよと言っていますね。
気迫の追い込みです。
白1の置きで様子を見て、白Aの切りが残ったところで白7、9と左辺白を逃げ出しました。
このあたりは謝科九段の試合巧者ぶりが発揮されていましたね。
黒3と飛び込みましたが、白4には黒5の手入れが必要です。
白6とつながって白が上手くかわしました。
ところが、白10が失着だったようです。
一力九段はその隙を逃しませんでした。
黒△のツケコシ!
白Aには黒Bと切り、次に黒Cからはみ出す手と、黒D、白E、黒Fと切る手が見合いです。
どちらも非常に厳しいです。
「ツケコシ切るべからず」で白1と外しました。
しかし、この形には大きな隙がありました。
次に白Aなどとつながりたいのですが・・・。
黒2から切れてしまいます。
黒6が上手い手で、AとBが見合いですね。
ということで、白1とダメをつながりましたが苦渋の一手でした。
白15と生きた手も同様です。
黒16に回り、勝負は決しました。
最後はきっちり止めを刺して、白投了となりました。
連勝に油断することなく、全力で戦って勝ちをもぎ取りましたね。
応氏杯は賞金40万ドルという世界最高峰の棋戦であり、しかも4年に1度しか開催されません。
世界のトッププロたちがこの棋戦に照準を合わせて調整してくる中、一力九段が優勝したことは本当に素晴らしいですね。
しかし、一力九段は優勝してやっとこれからというコメントを残しています。
一力九段のさらなる活躍に期待しましょう。
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