なぜメンバーズはカンパニー制を選んだのか
2020年4月1日、メンバーズグループのカンパニー制移行に伴い、弊社メンバーズデータアドベンチャーを始めとする複数子会社は株式会社メンバーズに統合され、メンバーズのいちカンパニーとなります。
(詳細:https://www.members.co.jp/ir/pdf/20200319_01.pdf)
統合というとややマイナスな響きがありますが、より攻勢を強め、素早く意思決定し、各事業体がより本質的な経営を行えるようにするための施策です。このnoteではそのあたりの背景を説明します。
※これは株式会社メンバーズとしての統一見解ではなく、私の見解です。
組織図的にはこうなります。
余談ですが、ホールディングス制にせず、事業を持つカンパニーとビジネス基盤を整備する役割をもつカンパニーを並列にしているのは「△ではなく◯の組織」を大事にするメンバーズらしい判断だなと思いました。経営判断を上から落とすのではなく、下支えするイメージです。
私は株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー社長となり、「代表取締役」ではなくなります。ただメンバーや事業に変更はなく、私個人からすると大きな変化はありません。
※カンパニー制とは何か、という点は簡潔にまとまっているページがありましたので、冒頭を引用しておきます。
カンパニー制とは、多角経営の大企業に広く普及した社内分社制の一種。企業内に存在する組織を、各事業分野を独立した会社のように扱い、大幅な権限委譲を行うとともに、責任の所在を明確化することで、収益力の強化や事業の効率化を目指す経営システムのことです。
引用元:https://jinjibu.jp/keyword/detl/66/(「日本の人事部」、2020/3/19閲覧)
何が課題だったのか?
今回吸収合併される事業体は全て株式会社メンバーズの子会社として、独立した法人格を持っていました。まあつまり、普通に別会社ってことです。
もともと子会社をたくさん作っていたことによるメリットは、
1.専門特化の子会社として切り出すことで、独自の育成・採用投資が可能。
2.新規事業領域での意思決定スピードの向上。
3.経営人材の育成。
といったところ。
逆にデメリットは、
1.それぞれ別法人なので、グループ内で取引がある顧客・パートナーとも個社ごとに契約を締結する必要があり、時間と手間がかかる。
2.秘密保持契約や情報提供の同意なども個社ごとに存在するので、情報共有が難しい。
3.別法人のため一部の管理業務も個社ごとに持たざるを得ない。
4.ツール契約なども個社ごとになるため、費用の重複が発生。
5.人材交流ハードルが高い(一度所属企業を辞めて別のグループ会社に入社し直す、転籍という対応をせざるを得ないケースがある)。
といったところかと。
特に子会社社長の身には、デメリットの1、2、3の影響は大きく、例えば1の契約締結のために1ヶ月取引開始が遅れるなどはザラでした。弊社はプロジェクト単位ではなく、定常的に顧客企業の中の人としてデータを使ってビジネス成果を上げる人材の常駐サービスなので、ストックビジネスです。一ヶ月取引開始が遅れれば、単純にその分の売上ロスです。もちろんその間コストは発生し続けています。
ビジネスモデルが違う子会社もありますが、どのみちベンチャーにとって行動スピードの速さが生命線なのは言うまでもありません。その速さが損なわれてしまうのは死活問題です。メンバーズグループは今後も多数の子会社設立を予定しており、そのままではその全てが同じ課題を抱えることになります。
カンパニー制にすることで、より速く、より本質的な経営ができるようになる
上述のデメリットに関しては、ほぼ法人格が別個であるがゆえの弊害であり、法人格を統合することがシンプルな解決策になります。メリットに関しては、法人格に紐づくものではないため、カンパニー制移行後もやり方次第で維持可能です。
そのため、メンバーズは子会社を吸収合併し、法人格を統合することに決定しました。しかし、方針や権限はできうる限り従来から変えず、カンパニーごとの自主独立に任せながら、管理部門業務の統合・効率化を進め、一層スピード早く経営判断・施策実行が行えるようにしていくことになります。もちろんPL/BS/CFもこれまでと変わらず、カンパニーごとの管理です。なので冒頭で話したように、あんまり私の責任範囲も権限も変わりません。
これは私個人にとってもチャンスであると思っています。というのが、これまで雑務に取られていた時間が解放される分、よりうちの会社らしい、本質的な価値向上のために時間も頭も足も使えるようになるからです。より「経営」らしいことに時間を割けるようになります。今まで以上に言い訳は効かなくなりますが、人生短いんだし思いっきりやれる方がいいかなと思います。
また、メンバーズは、様々な先端/専門領域子会社を立ち上げつつ、人材流動性を高めることで、社員が自ら考え、多様なキャリアプランを実現できるようにすることを目指していますが、カンパニー制に移行することで人材流動のハードルも下がります。転職せずに転職できるみたいなイメージです。転職はもちろんメリットもあるのですが、リスクも伴いますし、優秀な人もオンボーディング期間中は成果を出しづらくなります。カンパニー間の異動であればカルチャーやインフラは共通していますからオンボーディングコストは小さくて済みます。
社員がスキルを磨き、経験を積み、成長し続けられる環境を用意することで、顧客に価値を出し、社会に価値を出し、社会をよくしていく流れを生み出すことで、メンバーズのミッションの実現のキーとなる施策の一つと私は思っています。
これも余談。実は私も、キャリアプラン実現のための施策である「社内公募制度」で子会社社長になりました。
社内公募というのは、要はグループ内のオープン求人で、社員は自由に応募できるものなのですが、多くはプレイヤーの募集です。ある日その枠で「子会社社長募集」と出ていたのを見た時はまずは笑いました。で、一晩考えて、えいやで応募しました。
終わりに
ほぼお気持ち表明でしたが、まあ実務上は社内外どちらから見ても今までとさほど変わらないです。メンバーズグループ複数社と契約しなければいけなかったところがまとめられたり、カンパニー間の情報共有がスムーズにできたりで、むしろ対外的にはご不便が減るかと思います。
あ、あと、1月の開示情報で統合を知った方もいらっしゃると思うのですが、2018年3月時点(立ち上げ1期目)の苦しかった時期の数字なので、今は売上この時の30倍以上で1.2億超えなのでってイキりだけ付記させておいてください。みんなで頑張ってるんだよ。