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LINEミニDappが切り拓くWeb3の新潮流:Telegram成功事例から見る「広告費をユーザーに還元する」仕組み
はじめに
昨今、Web3(ウェブスリー)やNFT、仮想通貨(暗号資産)などのキーワードが注目を集めています。特に、SNS上で動くアプリ「ソーシャルDapp(ダップ)」は、ユーザー規模を短期間で爆発的に伸ばす事例が増えてきました。
これまでTelegram(テレグラム)上で流行し、海外ではわずか半年で1億ユーザーを獲得するようなアプリも登場しています。これに続く形で日本の大手メッセンジャー「LINE」でも、2023年1月22日から「ミニDapp」が公開されました。
本記事では、LINEミニDappの概要やTelegramでの成功事例、日本企業の狙い、そして「広告費をユーザーに還元する」ビジネスモデルの仕組みを整理してご紹介します。
1. LINEミニDappとは何か
ミニDapp(Mini Decentralized Application) とは、通常スマホアプリをダウンロードせずに、LINEの上でそのまま使える小規模のWebアプリケーションを指します。
従来のDapp(Decentralized Application)
分散型アプリケーションと呼ばれ、ブロックチェーン上で動作し、ユーザー同士で直接価値のやり取りができるアプリケーションです。
「ミニDapp」の利点
ユーザーはLINEのトーク画面から直接アクセスでき、ダウンロードの手間が要りません。ブラウザベースのため、スマホに負荷をかけずに利用できます。
Telegramがこの「ミニDapp」に類する仕組みをオープン化し、世界中で大成功を収めた事例を受けて、日本版としてLINEも同様の取り組みを始めました。
2. Telegram事例から見るソーシャルDappの可能性
Telegramでの爆発的ユーザー獲得
Telegramは世界で3番目に大きなメッセンジャーといわれ、2022年頃からアプリ内で動く多数のWeb3ゲームやアプリを公開してきました。
一部のDappはたった数ヶ月で数千万〜1億ユーザーを獲得し、関連トークンが大手取引所「Binance(バイナンス)」に上場されるという快挙を遂げています。
なぜ短期間で大規模ユーザーを集められるのか
従来のWeb3ゲームは、単体アプリとしての集客が難しく、ユーザー数が限られがちでした。しかし、SNS(ソーシャルプラットフォーム)上で動くDapp であれば、もともとのユーザーベースに乗って一気に広がることが可能です。
ソーシャルDapp(SNS上のDapp)のおかげで、ユーザーが短期間で爆発的に増え、結果としてゲームやサービスが認知・拡大されやすい特徴があります。
3. 「カイア(KAIA)」チェーンとLINE・Kakaoの提携
カイアとは
LINEが運営するブロックチェーンと、韓国のカカオトークが運営するブロックチェーン「Klayton(クレイトン)」を統合したものが「カイア(KAIA)」です。
Kakao Talk:韓国最大のメッセンジャーアプリ
LINE:日本最大級のメッセンジャーアプリ
両社が協業してブロックチェーン基盤を一本化し、共通のチェーンを整備しています。
韓国は規制が厳しく、まずは日本のLINEからスタートしたものの、将来的にはKakaoトーク側も参入し、日韓共同でWeb3のソーシャルDappを盛り上げていく計画です。
4. 広告費の行方:ユーザーに還元される仕組み
従来の課題:広告費がプラットフォーマーに流れる
従来のスマホゲームやアプリは、全体売上の約20%をFacebookやGoogleなどの広告費に当てるのが一般的でした。
さらに30%ほどをプラットフォーム(App StoreやGoogle Play)の手数料で取られるため、約半分がユーザー以外に流れていきます。
新モデル:ユーザー紹介に広告費を直接還元
Web3ゲームやソーシャルDappでは、ユーザーによる「口コミ」や「紹介」が重要になります。
企業側は広告を打たずに済むため、今まで広告代理店や巨大プラットフォームに支払っていたお金をユーザーへ還元できるのです。
具体的には、ゲーム内での「ポイント」や「トークン」を配布し、ユーザーは友達紹介やゲームへの貢献度に応じて報酬を得られます。
ゲームやプロジェクトが成功してトークンが大手取引所に上場すれば、そこで「仮想通貨(暗号資産)」として換金できる可能性もあります。
この仕組みは「ポイ活(ポイント活動)」のように見えますが、トークンが大幅に値上がりすればユーザー側のリターンが高まる点が大きな特徴です。
5. Web3ゲームとソーシャルDappの進化
かつてのソーシャルゲームブームに似ている
本来、ゲームを単体でリリースすると大きな集客コストがかかります。しかし、SNS(たとえば昔のモバゲー・GREE・mixiなど)上に公開することで、一気に数百万ユーザーのアクセスを得られたのが「ソーシャルゲームブーム」の背景でした。
同じことが「Web3版ソーシャルゲーム」、つまりソーシャルDappの時代にも起きています。
キャプテン翼の事例
既にTelegram版でリリースしたところ、4ヶ月で約800万人のユーザーを獲得。
今後はLINE版「キャプテン翼」でも同様の拡大が見込まれています。
従来ゲームであれば、売上の多くを広告費に投入して集客していましたが、広告費をユーザーに還元するモデルへと転換することで、さらなるユーザー誘致とコミュニティ強化を狙っています。
6. インフルエンサートークンとコミュニティ価値
ミームトークンとは
「ミーム」はSNSなどで盛んに共有される“ネタ”のようなもので、トークン発行にもこの概念が広がっています。
著名人やインフルエンサー、クリエイターなどが独自のトークンを発行し、その支持者(トークン保有者)が“共同体”のように活動を盛り上げます。
例)social. meme(ソーシャルミーム)
インフルエンサーごとに「ミームトークン」を発行。
第1弾は「國光トークン」(起業家・国光氏)、第2弾は「ガチホトークン」(イケハヤ氏)…といった形で順次リリース。
トークンは将来的に分散型取引所(DEX)や仮想通貨取引所で交換可能になる可能性があります。
コミュニティの価値とは
従来のインフルエンサーは、フォロワー数や再生回数が収益源でしたが、Web3時代では「コミュニティに所属し、トークンを持つ」という形に変化します。
トークンを保有しているユーザーが増えれば増えるほど、そのインフルエンサーやコミュニティ自体の価値が可視化されます。
クリエイターを応援するほど、トークンの値上がりによるメリットをホルダー全員で共有できる可能性があります。
7. 詐欺の温床とならないために
違法コンテンツの例に学ぶ
かつて音楽や動画の分野で違法ダウンロードサイトが乱立したように、Web3トークンやNFTでも詐欺や無許可の著作権侵害が生まれる可能性があります。
しかし、音楽や映像が最終的にSpotifyやNetflixなど“合法かつ質の高いサービス”に落ち着いたように、Web3領域も正しく運用されるプラットフォームが主流になると考えられています。
信頼あるプラットフォームの役割
日本国内では、トークン発行や運営を慎重に行う「FiNANCiE(フィナンシェ)」のような事業者があり、インフルエンサーと協力して正当にコミュニティを盛り上げる動きがあります。
発行体が顔を出し、公にコミュニティを形成することで、利用者保護とプロジェクトの透明性を確保することが重要です。
8. 今後の展望:Web3がもたらす新しい「お金」と「楽しみ方」
「価値のインターネット」の進化
インターネットで情報を自由にやり取りできるようになった結果、個人が情報発信できる時代がやってきました。Web3は同様に「価値」を自由にやり取りできるインフラを提供します。
国や大企業だけでなく、個人でも「通貨に近いもの」を発行できる時代が到来しつつあります。
広告が変わる、メディアが変わる
従来、広告収益をメインにしていたWebメディアは、企業がユーザーに直接還元するモデルと競合する可能性があります。
企業が広告代理店に支払う費用をユーザーに回すことで、ユーザーは「ゲームやSNSを使う=ポイントやトークンを貯める」という形になり、ますます利用を促進する仕組みができます。
メディア全体の収益モデルにも大きな変化が起こりうるでしょう。
新しい遊び方:コミュニティが主役になる
Web3ゲームやミームトークンでは、コミュニティのユーザー自身が主体的にコンテンツを作ったり、企画を考えたりできるようになります。
従来は運営会社やインフルエンサーが発信の中心でしたが、トークンを保有することで「自分も主役の一人」となる楽しさがあります。
今後は恋愛リアリティショーやスポーツ番組など、リアルタイム番組とトークンの価格が連動するようなイベントも登場するかもしれません。
まとめ
LINEミニDapp という新しい形態のWeb3アプリは、Telegramで既に証明された「ソーシャルDapp」の可能性を日本市場でさらに広げようとしています。
ここでは広告費をユーザーに還元するというユニークなモデルが注目ポイントで、インフルエンサーやクリエイターもコミュニティとともに経済圏を育てていく展望があります。
Web3をめぐる技術や仕組みはまだ発展途上で、詐欺的なプロジェクトも懸念されるのは事実です。
しかし、正しい運営とコミュニティの協力により、新しい楽しみ方・経済活動が創出されるでしょう。
LINEやKakaoといった大手メッセンジャーを舞台に、日常的に仮想通貨やトークンに触れる世界がすぐそこまで近づいているといえます。
今後、LINEミニDappやソーシャルDappの展開を通じて、「Web3で稼ぐ・遊ぶ・応援する」カルチャーがどのように広まっていくのか、引き続き注目したいところです。
用語解説
Web3(ウェブスリー)
ブロックチェーン技術を基盤とした新たなインターネットの形態。個人がデータや価値を所有・やり取りできる“分散型”の仕組みを指す。
Dapp(Decentralized Application)
ブロックチェーン上で動く分散型アプリケーション。中央管理者を必要としない。
Telegram(テレグラム)
世界で利用されるメッセンジャーアプリ。LINEのようにトーク機能があるほか、オープン化により「ミニDapp」が数多く作られている。
LINEミニDapp
LINEのトーク上やブラウザ上で動作する小規模アプリ。ダウンロード不要で使える。
カイア(KAIA)チェーン
LINEが独自で運用していたブロックチェーンと、韓国のカカオトークが運用するKlayton(クレイトン)を統合したもの。
エアドロップ(Airdrop)
プロジェクト側が、ユーザーに無料で仮想通貨やトークンを配布すること。
NFT(Non-Fungible Token)
ブロックチェーン上で発行される、唯一性を持つデジタル資産。アートやゲームアイテムなどに利用される。
DEX(分散型取引所)
中央管理者を置かない形の仮想通貨取引所。トークン同士をユーザー同士で直接やり取りできる仕組み。
FiNANCiE(フィナンシェ)
インフルエンサーやスポーツチームがトークンを発行してファンとコミュニティを作る日本のプラットフォーム。
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