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Supernote A6Xを手帳として使ってみた雑感(手書きデバイスとその収集:前編)


はじめに (長めの前置き)

この文章は前編と後編で構成されていますが、それぞれ単独でも読めます。

前編:「Supernote A6Xを手帳として使ってみた雑感」(本記事)
後編:「手書きデジタルノートの収集に関する試論

それもあって前置きとしての注意点が3つあります。

1点目ですが、この記事の関心対象を過不足なく言うと「手書きデジタルノート」ですが,少し長いので、本文中では「手帳デバイス」とか「デジタル手帳」と書いている個所もあります。同じ意味ですので適宜読みかえてください。

2点目ですが、著者は手帳類収集家として他人の書いた私的な紙媒体の手帳を集めて共有する活動を2014年からしています。その活動の延長でデジタル手帳も可能ならば集めたいと考え、自分でSupernote A6Xを購入して手帳として使いながら検討しています。考えてみたいのは、「どういう条件がそろえば、あるいはどういうデバイスなら電子の手帳が収集対象として成立するか」です。なので、手帳としてのデジタルノートやSupernote A6Xについてのみ気になる方は前編だけ読むのもありかと思います。

3点目は手帳という言葉についてです。これらの記事において、手帳とは手で書かれた帳(ページの束)全般を指します。スケジュール帳はもちろん、日記帳やアイデアノートなども含んだ言葉として使います。僕自身、手帳には行動、思考、欲しい物、気になった言葉や読書メモなど、思いついたことをさっさっと書くことが多いです。

もっともSupernoteがスケジュール帳として使えないという意味ではありません。著者の主要な関心がそこにないというだけです。


イントロ的な結論

Supernote A6Xですが、結論から言えば、デジタル手帳としては満足しました。特に内向型の人に適したデジタルノートという印象です。ただし、収集対象の手帳としてみたときにはいくつか機能が必要だと感じました。もっとも後者は開発者の方からしたら現時点でイレギュラーなリクエストであるため、どちらかといえば、集めたいと考える側の課題と言えます。

Supernote(出典:Supernoteギャラリー

なぜSupernoteか?

冒頭でこの記事における手帳とは「手で書かれた帳(ページの束)」のことと説明しました。これを手書きデジタルノートに当てはめると、①手書きできるとはスタイラスペン(タッチペン)での筆記入力が可能なことをさし、②帳(ページの束)とは複数のページに記録・保存ができる端末をさします。もう少しだけ補足すると、①において入力ではなく筆記入力としたのはフリック入力などは含めないニュアンスを入れたかったからです。また②においては、伝言ボードなどの1ページを書いて消して使うタイプのものを除外しています。

さて、上記①②を満たした手帳づかいできそうな端末は、2022年現在、かなりあります。Supernoteを選ぶさいにも、iPad、クアデルノ、Remarkable2、BOOX NovaAir、HUAWEI MatePad Paperあたりと比較していきました。

絞り込みの条件としては、
・可搬性:持ち運びしやすいこと
・応答性:レスポンスが軽いこと
・持続性:手帳=自分の身体の延長としてできるだけ長く使いたい
・集中性:気が散らない(手帳行為に集中できる)

などがありました。

Supernote(出典:Supernoteギャラリー

これらの条件について説明します。

まず可搬性とは、12.9インチだと鞄に入れるには大きいなとか、枕元に置くと占有して具合が良くないな……とかです。いつ記録したい気持ちになるか予測がつかない以上、手帳として可能な限りいつでもどこでも書けるのが大事です。

次は応答性です。レスポンスが重要なのは、反応が悪いといらいらするなどして書きたいと思った一瞬の感覚や思考が失われてしまう可能性があるためです。私的な記録はちょっとしたことで内容や筆跡が大きく変化すると考えています。この点で、Supernoteには購入時点でバージョンアップしてレスポンスが改善したという情報がありました。

持続性については、長持ちするとか壊れにくさとかは自分で試していないので断言できる部分はありませんが、コミュニティに関して言えばSupernote(Reddit)は活発でロードマップも示されており持続性が間違いなくあると感じました。正直に言えば、オープンで活発なコミュニティを見て信頼できるチームだなと思ったのが選択としては大きいです。

最後の条件である集中性ですが、頭の中に浮かんでいる油断したらすぐ忘れそうなメモをとろうとした瞬間にプッシュ通知が来たときのことを考えると分かりやすいです。こういうシーンではブラウザに手を伸ばすことすら書きたいことを忘れるリスクが伴いますし、たくさんのアプリが使えることもこの限りにおいてはデメリットです。手帳上でスリルと興奮に満ちたゲームが遊べると、それを手帳と認識することが困難になります。

使ってみた感想

物質としてのSupernote A6X

なかばテストとして買ったSupernote A6Xですが、E-Ink(電子インク技術)端末自体が初めてなのもあって予想外な印象もありました。まずE-Inkの見栄えは手帳として使う分には問題なく感じたし、白黒なのもむしろ気に入りました。目に優しいので心も落ちつく感じがあります。四六時中使わないこともあってか電池の持ちも十分にあると感じました。また、バックライトがないため夜は明かりが必要なのですが、これは紙の手帳でも同じだし、その一手間も個人的には嫌いじゃないです。この点は好みの差があるかもしれません。
(ただ、電気を消した状態で夜中に起きておぼろげな夢を書きとめることだけは問題になります)

一方で、物質的に紙より硬いのもあり、枕元に置くと手帳やiPhoneよりも圧迫感があるというか、布団が狭くなったように感じます。衣類のポケットに入れたい気持ちもあるので、手帳としてみるともっと小さくて柔らかくて軽いと良いのですが、これ以上小さくなると一息で書きたいことを書くための領域が確保できなくなりそうです。この点では紙の手帳+細い筆記具の組み合わせに軍配が上がります。

著者のSupernote A6X

書く行為について

このあたりから個人差が多く主観的な説明になっていきます。まず入力の反応についてですが、バージョンアップでレスポンスが改善されたのもあり、追従が遅くてイライラすることはありませんでした。書き心地ですが、鉛筆のような感じではなく、クレジットカードみたいなつるっと硬いものにボールペンで署名するときのような書き心地といいますか……。
(このあたりは感性や説明が上手じゃないのでこれぐらいにしておきます)

とはいえ、手書きしている感じは十分にあり、これなら紙媒体以外でも手書きという言葉を使っても良さそうだと納得できました。ただ、一度ペンを離して文字の続きを書こうとするとズレます。このあたりは慣れ、もしくはコツ、あるいは設定の問題かもしれません。頭にあることを一気に書く場合は問題ありません。

余談ですが、試行錯誤の痕跡=情報を残すという意味で、消しゴム機能はあえて使わないこともあります。嬉しいと思ったのは、書いた後で少しだけ文字の塊を動かしたいときに、動かしたい範囲をぐるっと囲って選択→移動できることです。ときどきしか使いませんが、紙ではできないありがたい機能です。もちろん選択移動させても手書き感や手帳感が失われることはありません。

手帳としてのSupernote(トークイベントのメモだと思われる)


Supernoteのソフトウェアについて

率直に言って、紙の手帳に比べて学習コストはあるなと感じました。これは紙の手帳の学習コストの低さに驚くべきところかもしれません。
(ただし現在の著者が、Supernoteが持つ機能の1割も知らないのでは……という感覚なので、どこかで時間をとってドキュメントを全部読みたいと思っています)

次に機能が「ない」点についても指摘したいです。Supernoteを手帳としてみたときに、機能の取捨選択がとても良く、ソフトウェアの観点からも気が散ることはありません(前述の基準でいえば集中性に優れている)。それによって、Supernoteは手帳らしさを保っていると感じました。

それからSupernoteのアプリケーションですが、若干脇道にそれるのもあって本記事の後ろにコラムとして書きました。一言でまとめると、アプリケーションにおいても余分なものは入っていないという認識です。Kindleしかないとも言えるのですが……。
(この点、将来的にはユーザー要望等で、手帳的観点からは望ましくないアップデートがなされる可能性はあります)

おわりに&後編の予告

以上の特徴から、コンパクトな紙の手帳ほどには、どこにも持ち歩けていつでも書けるわけではないが、大雑把な感じとして日常の80~90%程度は手元に置けて手帳的な使い方ができる印象です。

いまのところ手帳として毎日必ず使うというよりは、日常の中で何か思いついたときや思考モードになりたいときにパソコンから離れて使ったり、外出先でメモや思考を残すデバイスになったりしています。例えば勉強会みたいな場面で事前配布されたPDFをSupernoteに入れておき、当日話を聞きながらメモをとるのはすごく良い体験でした。スマホを使う必要がなくなるので、気が散らなくなります。寝るときの読書に組み込むのもお気に入りで、本+Supernote、もしくはSupernote(Kindle本)+間接照明といった組み合わせで布団に持ち込むことで、スマホを寝室からも追放できます。

ちなみに現状の使い方になっている原因は筆者の環境要因も大きいです。例えば自宅の机がさらに広くなれば、机の上に常時Supernoteを広げていつでも書ける体勢にスタンバイできます。机を買い替えていつか試してみたいところです。

個人的な記録を読む側に立つと、電子デバイスで書かれた記録の味わいは紙の手帳より落ちると言わざるを得ません。例えば、匂いや手触りといった情報はありませんし、筆圧や筆致といった部分でも情報がかなりそぎ落とされている印象です。しかし収集対象としてあらゆる面で紙媒体に劣るのかといえばそうではありません。デジタル媒体ならではの強みがあります。後編では、収集対象としての手帳デバイスをSupernoteを起点に考えてみたいと思います。


コラム:E-Ink 読書とSupernoteのアプリケーション

少し脇道にそれるのでこのゾーンは読み飛ばしてもOKです。

ところでSupernoteではKindleアプリがあり、Kindle本が読めます*。これまでE Ink端末を買ったことがなく、電子書籍はスマホかパソコンで読んでいたので、かなり落ちついて読めることに驚きました。直接書き込みが出来ない点を除けば、総合的な満足感は紙の読書に近いと感じました。もし僕と同じような方がいたら家電量販店でE-Inkの読書端末を体験してみて欲しいです(Supernoteは残念ながらどこにも置いていないはずです)

繰り返しになりますがE-Inkの表示は落ち着きがあり、白黒なのも低刺激を求める自分には都合が良いです。(これも前述ですが)手帳デバイスに気を散らす要素や機能は少ないほうがよいと書きましたが、本なら個人的にはセーフです。というのも、書く行為と同じく、読書も気が散らないように行いたい行為だからです。ちなみに読む途中に何かを思いついて手帳に書きつける行動は、個人的に優先度が最大であり、それを誘発する読書や読書環境は同じくらいの価値があります。その点でもSupernote+Kindle本は良いと思いました。
(これは完全に個人的感覚ですが、漫画など娯楽要素入れすぎるとこの点で良くないかもしれません)


本文中にも書きましたが、さまざまなアプリが使えることは個人的な手帳デバイスとしてはマイナスだと考えています。


* 余談も余談ですが、Pocketというアプリで保存した記事をkindleに無料で送れるP2K(https://p2k.co/)を試してみたのですが、うまく行っていません。P2Kで送信先をsupernote端末のアドレスに指定してもsupernoteのkindleに記事の一覧が出てこないです(P2Kのログ的には保存した記事を送っているらしい)。これが出来るとウェブの記事も「後で読む」して、気が散る割合を減らせそうなので、散漫な自分にとっては試してみたい習慣です。このままうまく行かない場合はInstapaperを試すつもりですが、情報などありましたらコメントいただけると嬉しいです。

Supernoteのkindleアプリ


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