Supernote A6Xを手帳として使ってみた雑感(手書きデバイスとその収集:前編)
はじめに (長めの前置き)
イントロ的な結論
Supernote A6Xですが、結論から言えば、デジタル手帳としては満足しました。特に内向型の人に適したデジタルノートという印象です。ただし、収集対象の手帳としてみたときにはいくつか機能が必要だと感じました。もっとも後者は開発者の方からしたら現時点でイレギュラーなリクエストであるため、どちらかといえば、集めたいと考える側の課題と言えます。
なぜSupernoteか?
冒頭でこの記事における手帳とは「手で書かれた帳(ページの束)」のことと説明しました。これを手書きデジタルノートに当てはめると、①手書きできるとはスタイラスペン(タッチペン)での筆記入力が可能なことをさし、②帳(ページの束)とは複数のページに記録・保存ができる端末をさします。もう少しだけ補足すると、①において入力ではなく筆記入力としたのはフリック入力などは含めないニュアンスを入れたかったからです。また②においては、伝言ボードなどの1ページを書いて消して使うタイプのものを除外しています。
さて、上記①②を満たした手帳づかいできそうな端末は、2022年現在、かなりあります。Supernoteを選ぶさいにも、iPad、クアデルノ、Remarkable2、BOOX NovaAir、HUAWEI MatePad Paperあたりと比較していきました。
絞り込みの条件としては、
・可搬性:持ち運びしやすいこと
・応答性:レスポンスが軽いこと
・持続性:手帳=自分の身体の延長としてできるだけ長く使いたい
・集中性:気が散らない(手帳行為に集中できる)
などがありました。
これらの条件について説明します。
まず可搬性とは、12.9インチだと鞄に入れるには大きいなとか、枕元に置くと占有して具合が良くないな……とかです。いつ記録したい気持ちになるか予測がつかない以上、手帳として可能な限りいつでもどこでも書けるのが大事です。
次は応答性です。レスポンスが重要なのは、反応が悪いといらいらするなどして書きたいと思った一瞬の感覚や思考が失われてしまう可能性があるためです。私的な記録はちょっとしたことで内容や筆跡が大きく変化すると考えています。この点で、Supernoteには購入時点でバージョンアップしてレスポンスが改善したという情報がありました。
持続性については、長持ちするとか壊れにくさとかは自分で試していないので断言できる部分はありませんが、コミュニティに関して言えばSupernote(Reddit)は活発でロードマップも示されており持続性が間違いなくあると感じました。正直に言えば、オープンで活発なコミュニティを見て信頼できるチームだなと思ったのが選択としては大きいです。
最後の条件である集中性ですが、頭の中に浮かんでいる油断したらすぐ忘れそうなメモをとろうとした瞬間にプッシュ通知が来たときのことを考えると分かりやすいです。こういうシーンではブラウザに手を伸ばすことすら書きたいことを忘れるリスクが伴いますし、たくさんのアプリが使えることもこの限りにおいてはデメリットです。手帳上でスリルと興奮に満ちたゲームが遊べると、それを手帳と認識することが困難になります。
使ってみた感想
物質としてのSupernote A6X
なかばテストとして買ったSupernote A6Xですが、E-Ink(電子インク技術)端末自体が初めてなのもあって予想外な印象もありました。まずE-Inkの見栄えは手帳として使う分には問題なく感じたし、白黒なのもむしろ気に入りました。目に優しいので心も落ちつく感じがあります。四六時中使わないこともあってか電池の持ちも十分にあると感じました。また、バックライトがないため夜は明かりが必要なのですが、これは紙の手帳でも同じだし、その一手間も個人的には嫌いじゃないです。この点は好みの差があるかもしれません。
(ただ、電気を消した状態で夜中に起きておぼろげな夢を書きとめることだけは問題になります)
一方で、物質的に紙より硬いのもあり、枕元に置くと手帳やiPhoneよりも圧迫感があるというか、布団が狭くなったように感じます。衣類のポケットに入れたい気持ちもあるので、手帳としてみるともっと小さくて柔らかくて軽いと良いのですが、これ以上小さくなると一息で書きたいことを書くための領域が確保できなくなりそうです。この点では紙の手帳+細い筆記具の組み合わせに軍配が上がります。
書く行為について
このあたりから個人差が多く主観的な説明になっていきます。まず入力の反応についてですが、バージョンアップでレスポンスが改善されたのもあり、追従が遅くてイライラすることはありませんでした。書き心地ですが、鉛筆のような感じではなく、クレジットカードみたいなつるっと硬いものにボールペンで署名するときのような書き心地といいますか……。
(このあたりは感性や説明が上手じゃないのでこれぐらいにしておきます)
とはいえ、手書きしている感じは十分にあり、これなら紙媒体以外でも手書きという言葉を使っても良さそうだと納得できました。ただ、一度ペンを離して文字の続きを書こうとするとズレます。このあたりは慣れ、もしくはコツ、あるいは設定の問題かもしれません。頭にあることを一気に書く場合は問題ありません。
余談ですが、試行錯誤の痕跡=情報を残すという意味で、消しゴム機能はあえて使わないこともあります。嬉しいと思ったのは、書いた後で少しだけ文字の塊を動かしたいときに、動かしたい範囲をぐるっと囲って選択→移動できることです。ときどきしか使いませんが、紙ではできないありがたい機能です。もちろん選択移動させても手書き感や手帳感が失われることはありません。
Supernoteのソフトウェアについて
率直に言って、紙の手帳に比べて学習コストはあるなと感じました。これは紙の手帳の学習コストの低さに驚くべきところかもしれません。
(ただし現在の著者が、Supernoteが持つ機能の1割も知らないのでは……という感覚なので、どこかで時間をとってドキュメントを全部読みたいと思っています)
次に機能が「ない」点についても指摘したいです。Supernoteを手帳としてみたときに、機能の取捨選択がとても良く、ソフトウェアの観点からも気が散ることはありません(前述の基準でいえば集中性に優れている)。それによって、Supernoteは手帳らしさを保っていると感じました。
それからSupernoteのアプリケーションですが、若干脇道にそれるのもあって本記事の後ろにコラムとして書きました。一言でまとめると、アプリケーションにおいても余分なものは入っていないという認識です。Kindleしかないとも言えるのですが……。
(この点、将来的にはユーザー要望等で、手帳的観点からは望ましくないアップデートがなされる可能性はあります)
おわりに&後編の予告
以上の特徴から、コンパクトな紙の手帳ほどには、どこにも持ち歩けていつでも書けるわけではないが、大雑把な感じとして日常の80~90%程度は手元に置けて手帳的な使い方ができる印象です。
いまのところ手帳として毎日必ず使うというよりは、日常の中で何か思いついたときや思考モードになりたいときにパソコンから離れて使ったり、外出先でメモや思考を残すデバイスになったりしています。例えば勉強会みたいな場面で事前配布されたPDFをSupernoteに入れておき、当日話を聞きながらメモをとるのはすごく良い体験でした。スマホを使う必要がなくなるので、気が散らなくなります。寝るときの読書に組み込むのもお気に入りで、本+Supernote、もしくはSupernote(Kindle本)+間接照明といった組み合わせで布団に持ち込むことで、スマホを寝室からも追放できます。
ちなみに現状の使い方になっている原因は筆者の環境要因も大きいです。例えば自宅の机がさらに広くなれば、机の上に常時Supernoteを広げていつでも書ける体勢にスタンバイできます。机を買い替えていつか試してみたいところです。
個人的な記録を読む側に立つと、電子デバイスで書かれた記録の味わいは紙の手帳より落ちると言わざるを得ません。例えば、匂いや手触りといった情報はありませんし、筆圧や筆致といった部分でも情報がかなりそぎ落とされている印象です。しかし収集対象としてあらゆる面で紙媒体に劣るのかといえばそうではありません。デジタル媒体ならではの強みがあります。後編では、収集対象としての手帳デバイスをSupernoteを起点に考えてみたいと思います。