【Exploring】千厩(岩手県東磐井郡)
2023年8月18日(金)
一ノ関から大船渡線に乗り換えた。
この日は八戸からずっと鈍行で、既に遠野に行ってきた。
今の今までロングシートの、しかもギラギラ照りつける日なたの側に座っていたからか、ボックスシートのディーゼルカーは気持ち的にも身体的にも楽だ。
これで東磐井の郡都・千厩まで向かう。
摺沢で行き違いのため少し待つ。
向かいの席の夫婦は、摺沢だの千厩だの、地元の話が尽きずに続いている。何処で降りるのだろう。
「我田引鉄」の象徴的存在として語られることも多かった大船渡線の「つる」の部分を軽快に走り抜け、ディーゼルカーは千厩に到着した。
私と向かいの夫婦とが降りると、気動車は唸りをあげながら太平洋へ飛び出していった。
陸奥横浜駅以来の構内踏切を渡り駅舎に入る。
少し驚いたことに駅員がいた。
「いわてホリデーパス」を提示して改札を終える。
業務委託であろうが16時で窓口が閉まろうが、駅に人がいる、というのはそれだけで何だか安心してしまう。最近は駅の無人化にも拍車がかかっているから、これには珍しく思えた。
しかし、とても静かだ。
駅舎内の椅子は多め。
券売機は数年前に撤去されたようで、見慣れたオレンジ色の筐体が白いペラ紙を吐き出すのを待っている。
「POKEMON with YOUトレイン」の停車駅であり、写真用のパネルも置いてある。
自販機で「いろはす」を買う。ちょうど飲み物が切れそうだった。
あっっっっっっつ。。。
殺人的な暑さ…
強烈な湿気も相俟って心が折れそうだ。この島国に生きる以上、仕方のないことか。
実は車内では、ウェザーニュースのツイートに千厩がピックアップされているのに気付いていた。なぜに今ホットな(?)日本指折りの熱い町に来たのだろう。。
駅前には3つの標柱。左から市営バス、県交通、市営バス…?
何が違うんだろう。
市営は多言語表記に力が入っている。
商工案内図。手描きでない最近のものだ。
サンクスやら町役場やら懐かしめの文字列も散見され、最近と言っても自分の生まれる前のものらしい。先輩だ。
「一関市せんまや観光タウンマップ」。
一関市になってからのものだ。現在地は結構な町外れだなあ。
千厩を抜き出した地図もある。
旧千厩町は千厩、奥玉、磐清水、清田、小梨の5つの大字から成っている。
大船渡線がめちゃくちゃ直角。凄い形だ。
しょうがないので街中へ歩く。できるだけ日陰を辿りながら体力を守る。
「字構井田」に差しかかる。
「千厩病院入口」。ここを折れて高台へ上がると、小さな戸建て団地と県立病院、小学校やら運動公園やら、色々あるみたいだ。
レンズ径250mmの樹脂灯器には、「いわて」を醸成する機能がある(感じるのは一部の人類だけ)。
セブンイレブンがあるなんて何て都会なんでしょうとか思いながら歩くと街らしくなってきたが、これでも端っこなんだろう。
ここは随分歩道が広くて歩きやすい。
ここから先は歩道が狭くなる。気をつけて行かなければ…。
何か曰くありげな巨石やら碑が並んでいる。
「東洋一の奇岩 夫婦岩」
前が男岩で、後ろが女岩らしい。いかにも信仰対象になり得るような奇岩である。
「夫婦岩」を通り過ぎると道筋は一直線に街を貫く。
字名も「四日町」になり、いよいよ街場らしい。
「千厩町タウンガイド」と銘された大きな商工案内板。
如何にも古そうなものだが、「合同庁舎」というのは、千厩合庁が分庁ではなかった頃のものか、下の太めの道路はバイパスか、とか色々考えるものの、この街の人間でない自分にはあまり解らなかった。
住所が千厩町千厩「字町」に変った。ここからが街場としての千厩の核心部らしい。
街場すぎる。ヤバ・街場景観。これを観にここまで来た。
電柱と商家が隙間なく建ち並ぶ。銀行もきちんと生きている。
夏の雲のもと、今日もそこに街場が在る。
店々。
千厩の商店には、「創業○○年 店名」と記された木の札が軒先に見えるのに気付いた。銀行の支店にもある。
明治だったり、昭和だったり、、、歴史の深い店が多い。
西へ進むと、いわぎんの前で突如開ける。
街灯が並んだ現代的な通り。振り返ると見えるザ・街場的な景観とはまた趣が異なる。
ここで南で折れて国道方面へ向かう。
一灯点滅は好きだ。。。
夏草の繁茂する千厩川を渡って、国道284号に出る。
ピャ!?
ピャ!!!??!!
突如平成が出現した。栄えすぎでは???????
大都会が過ぎる。
この大通りこそが千厩の大動脈・国道284号千厩バイパス。
一関を出て気仙沼へ、そして高田へ向かう国道だ。
車の波がひっきりなしに押し寄せる。
郵便局、信金、JA、ほっかほっか亭、ファミマ、ローソン。
この道沿いに大抵の物が揃っているようだ。
もう少し西へ行けばマイヤとベルプラスのショッピングセンターが1つずつ。コメリもサンデーもある。セリアに薬王堂にドコモショップも…。
東磐井でも随一の商業施設の立地を誇る284号沿線だったが、ショッピングセンターには行けず。再訪時には行ってみよう。
この日は平日。風景印を求めて郵便局へ。。。
丁寧に押印して頂いたのはこの風景印。
奥には先刻眺めた夫婦岩が、手前には太夫黒が描かれている。
かの源義経の愛馬であり、源平合戦で活躍した千厩産の馬である。
「厩」の文字が入る局らしい図柄で好きだ。
局をあとにして、館山公園へ向かう。
ウオオオオオオオオオオ。。。。。
千厩川を挟んで拡がる千厩の中心街が一挙に見渡せるこの高台はもともと千厩城があった土地で、現在は公園になっている。春には桜が綺麗だそうだ。
トタン屋根の街並みを飽きるまで眺めたら、駅に戻ろう。
国道へ戻ると、ここで初にお目にかかるスーパー「神文ストア せんまや店」。
一関に本社を置くスーパーマーケットで、胆江両磐に全10店舗を展開するそうだ。
「かんぶん」と聞くとどうしても「菅文」を思い浮かべるのは馬淵川に沿って生きる人間の性だろうが、どうもそのかんぶんではないらしい。岩手には2つの「かんぶん」があったのだ。
(ちなみにロゴが七戸の「カケモ」によく似ている)
右手には岩手県立千厩高等学校。
旧東磐井郡では最大の高校(郡都ポイント加算)で、明治34年に郡立東磐井蚕業学校として設置されたのがはじまりだそう。創立120周年の幕が見えた。
隣には千厩警察署。
一関市内の旧東磐井郡域を管轄する(郡都ポイント加算)。
その警察署前の交差点で、初めて「東磐井」の文字を発見(郡都ポイント加算)。
両磐がほぼひとつの自治体になって久しい今、なおもセントラル・千厩を感じた。
もうそろそろ駅だろうか。
古びた284の国道標識が陰の中に立っていた。
ここから先、室根を過ぎると沿岸だ。
「隣県」気仙沼への呆気ない距離程に驚く。
車列を見送ったわたしは、高校生らに混じり帰路に就いた。