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反逆ノ人生

かれこれ15年ほど愛読している作家がいる。学生の頃に「自分の言いたいことは全てこの作品に書かれてしまっている」と思える作品との出会いを果たした。それからというもの、彼の作品は翻訳を除いてほとんど全て読み尽くした。新作が出れば身銭を切って読んだ。そして時間を置いて何十回と読み返した。幸いなことに、自分の好みじゃなくてがっかりしたという経験は今まで一度もない。彼の名がつくものはたとえ中身が空白であっても購入するだろう。きっと、彼の作品における独特の温度、醸し出される温かみが好きなのだと思う。

そういった信頼に似たものを、私は葉月さんに対して抱いている。ULTIMAは記念碑的なアルバムだ。制作の背景を知らずとも受け取る側にひしひしと伝わってくるものがあり、私の中にあるいくつかの感興を呼び覚まし、その深みに圧倒された。以来ずっと彼の作品に魅了され続けている。今回のツアーに臨む際もきっと好きになるであろうという予見があり、新曲が世に放たれる前に予定を組んだ。私が人生で初めて、初期から応援し続けているバンド、HAZUKIの話を少し。。

XANADUを手にした時の感動は計り知れない

昔の曲が好きなのは決して少なくない時間、その曲と一緒に過ごしてきたからである。しかしHAZUKIに関してはなぜか、今の曲に対して同じぐらいの思い入れがある。ラジオで初解禁の時を今か今かと待ち望み、視聴動画で作品の片鱗を感じ、待ちに待った音源が出るとMVで期待を膨らませ、ライブ会場へと向かう。初めてHAZUKIの楽曲を聴いた時、今の自分がこういう歌を求めていたのだと知った。ライブに行けば必ず自分の好きな曲が聴ける。これから曲が増えても、もっと好きな曲に出会えそうな予感すらする。
なぜ自分はライブに行くのか?暇つぶしでも、気分転換でも、ストレス発散でもない。全国各地を行脚する中で自分の人生において好きな曲が増えていく時間だという実感があるからだ。日々聴いている曲に更なる思い出を地層のように積み重ねたいという思いが衝動の根幹を成す。目には見えない財産をたくさん抱えていたい。

すべてが始まった初ライブ

最初の頃はセトリのほとんどがライブで初めて出会う曲だった。生で聴くたびに早く歌詞が読みたいと思い、未発表とわかっているはずなのに何度もApple Musicで検索しかけては早く音源で聴けたらと胸を高鳴らせる日々だった。

愛する七夕乃雷がMVになり感無量

アルバムが出る前にライブに行くというのはこれまでにない経験だったが、一観客としてアルバムの制作の過程に携われた事により、実際に手にした時の愛おしさは一線を画したものだった。当たり前かもしれないが、こうやって順を追って形になるのだと、目から鱗が落ちる思いだった。昔のアルバムを聴いて、この時代に生まれたかったという感覚がたった今、味わえている奇跡もそこにはあった。

名盤ツアーセミファイナル・札幌

楽しみにしているからこそライブは体感として一瞬で終わってしまう。でもその背景には決して全てを知る事のできない数多くの時間や手間がかけられている事を想像できるからライブというものが好きなのだと思う。曲もそうだが、MCなどで語られる言葉の一部から推察される長い道のりが好きだ。反逆ノ福岡セミファイナルで「最初の頃はこうだったけど今は...」という話を聴いて感慨深いものがあった。音楽も今はいとも簡単に聴けてしまうけれど、作品を受け取る時、その裏側の時間をどれだけ想像する事ができるかで味わいが全く違ったものになると思っている。

葉月さんとの出会いを振り返れば2016年、CROSSFAITHのXENOツアーの福岡だった。全国回った中で唯一CROSSFAITHの曲をカバーしてくれたバンドである、というのが第一印象だった。時は流れ、2019年にcoldrainのBLARE DOWN BARRIERS仙台で再会した。再会に際し、10周年のアルバムを通勤時間に聴き、自分でも驚くほど夢中になった。単独ライブに足を運んだ事がないのにもかかわらず、なぜこれほど自然と聴いてしまうのか不思議だった。当時の自分は知る由もなかったが、今思えば完全なる予兆だった。その日はLIGHTNINGをやってくれたのが鮮烈な記憶に残った。そして、大好きなResurrectionをやってくれるその場に居たいと強く思った。だからこそ2020年のブレアフェス、PTPのステージは人生でも忘れられない珠玉の時間の一つだ。

LIGHTNINGに衝撃を受けた数日後は全曲披露ツアーの仙台Rensaに足を運んだ。「昔の曲は皆が喜んでくれるからやりがいがある」という内容のMCとともに本編の最後にfrom the endを聴けた時、雷に打たれたようだった。武道館でforgiven、ASTERを聴けた事も心の灯火であり続けている。葉月さんはセトリや曲に対する欲望をあふれるほど満たし続けてくれている人だ。ライブはいっときの孤独からの解放だが、葉月さんと共に居れば孤独をも楽しめる気がする。

多くの人が暗い気持ちでいた極限の時、葉月さんと出会い直した。突然、空から何かがひらひらと舞い降りてくるように。先が見えなくて何にもできないよ、と現状を嘆くのではなく、今できることを探して全力で取り組むという姿勢を見せてくれたからこそ。未知のウイルスに対する恐怖に共感してくれた事も、YouTubeで配信し続けて楽しみの連鎖を生み出し続けてくれた事、心の雨に傘を差してくれて平板な日常に彩りを与えてくれた事に対して溢れる感謝の気持ちしかない。ULTIMAツアーの時に「たとえ終息しなくても仙台にまた来るから」と言ってくれた事が支えであり、あの夜が今も私の背中を押している。

最新作に一番心惹かれる

反逆ノ行脚というタイトルに心を掴まれたのは、どこか自分の人生と重なる部分があったからだと思う。ツアーが終わってしまっても各地で聴いた音楽や言葉は永遠に聴こえる。フロアに降臨して歌う葉月さんの姿。その土地の名前を何度も叫んでくださる大好きな声。汗だくでポカリが似合っている様子や、迫真のオールバック、ギターをかき鳴らす姿が目に浮かぶ。無数の手がひらめくフロアが見える。MCでメンバーと話している時に関係性が垣間見える笑顔だってそうだ。終わってほしくない世界の断片の数々。

もうすでに誇りに思う、これほど好きなバンドに出会えた事を。HAZUKIの歴史が刻まれていく様を刮目できている事を。そして、愛する逆鱗を踏まえてのアルバムが聴きたいと強く願う。他者に期待したら傷つく事なんて承知の上だが、私はそれでも、自分の好きな人に対しては大いなる期待を抱き続けたい。この先、自分がこれは一生ものだと思えるアルバムと何枚出会えるのだろう?好きな人が新しい事に対して果敢に挑んでいる姿を、無限の可能性を秘めた未だ見ぬ一面を見続けたい。これからも葉月さんの魅力が爆発している楽曲に出会い続けたい。少しでも長く愛する音楽と共にいたい。その為に生きているのだから。もう一人で抱え込む必要はない。終わる事のない飽くなき探究心といつまでも共に歩めたらと願って。

反逆ノMY LIFE

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