カラスとポテトチップス
先日街中を歩いていたときのこと。
ふと目に入った不動産屋の空き物件情報を眺めていると、上から「ガサッ」という音がした。なんだろう?と見上げると、不動産屋の軒に一羽のカラスが飛んできてとまったようだった。
「え?」思わず声が漏れる。
カラスがポテトチップスの袋をひとつ咥えていたからだ。しかも、新品。…それどこから持ってきたのよ?…自分で開けられなくない?
そんなギモンを浮かべながら見つめているとカラスと目があった。その直後、目をそらしながら私から見えないように袋を隠すそぶり。
…いや、とらんし。なんなら開けてあげたいくらいなのに…。
私の思いはもちろん届かず、2人の間に微妙な緊張感が漂う。
これ以上刺激しないうちにとその場を離れ、歩き出した数歩先に見えたスーパーのワゴンの中。カラスが咥えていたポテトチップスが並んでいた。
なるほど、拾ったんじゃなくて盗ってきたのね。
もちろんカラスは盗んだつもりはないだろうし、店員さんも気づいてないかもしれない。
それでも戦利品を盗られないようにとこっそり隠した先ほどの姿が、なんだか悪いことだと知っていたようにも思えて笑いが漏れる。
本人たちも知らないうちにおこなわれていたポテトチップスをめぐる攻防戦。
そんなイメージが浮かんできて、また少し可笑しくなった。
売り物を一袋とられたスーパーに心の中で手を合わせつつ、上手く袋を開けて食べられるといいなぁ、なんて思いながら歩いた休日の午後。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?