シオコレ・コーデ・リレーvol.20 柳瀬瑛美
シオコレに関わりのある人や、そのまわりの人にシオコレの古着を着てコラムを書いてもらうゆる〜い連載 #シオコレコーデリレー 。
なんとこの連載も今回で20回目。
楽しみにしてくださっている皆さん、いつもありがとうございます。
初めての方も、よかったら過去の分も遡って見てみてください。
#シオコレコーデリレー
さて、今回はたびたびシオコレのモデルとしても登場してくれている柳瀬瑛美さんです。
夕暮れ時に塩屋漁港で撮影した美しい景色も一緒にお楽しみください。
塩屋に住みはじめて4年。4年というのはひとつの町をきちんと知るのには短い年月だと感じているけれど、現在23歳の私にとっては、5年間(!)の大学生活の大半という大きな意味をもった時間でもある。この町でいつも通りの学生生活を送り、ありがたいことにアルバイトもさせてもらってきたし、さらにはコロナ禍、留年(!)といったさまざまなイレギュラーな出来事も経てきた。他の大学生は歩いていないような道を(比喩ではなく)歩いたし、出会っていないだろう大人たちとものを作ったり、あるいは夜な夜な(時には昼間の八百石で)お酒を酌み交わしたりしてきた。
そうしたなかで学んだのは「もう全部、そこにある」ということ。まちは楽しみ方や知識がひとつあるだけで見え方がぐっ、と変化する。右目室外機は数が少なくて見かけるとラッキーなこと、この時間には海によい光が差してうつくしいこと、昔この砂浜にはヘリがやってきてね、このお店は元々牛乳屋さんから始まってね、、、元々散歩は好きじゃなかったけれど、知っていくうちによく歩く人間になった。そうやって知識が循環、というか継承されてきた塩屋の町では、取り壊されてしまう家屋に待ったがかかり、廃材になるはずだったものがつぎの建物の資材になっていく。私は旧ジョネス邸が海沿いに建っていた時の姿を知らないけれど、その窓は、扉は、町のあちこちで目にしてきた。こうやって町に循環させることで遺していく方法があるのだと知った。新しいものを作らなくても、もうそこにある。そこにあるものを大切にする。(最近では知り合いの小山さんが廃材をストックするスペースを始めたらしい。)
それは服に対しても同じことなのだ、と気がついたのは、シオヤコレクションがあったからだった。今回これを書いていて、こうした土壌の町にチャリティーショップができるのはとても自然な流れだったのだと理解する。
服だって新しいものを作らなくても、もうすでに、そして大量にある。気がつけば量産の、製造段階のどこかに問題を抱えているような服は選択しなくなっていた。いろんなニュースを目にしたり知識を得たりして、なんとなくもった違和感に正直になり、消費者としての選択が変化していく(なんだか社会の教科書みたいな文章だけど)。全部自分の意志で選択しているつもりだったけど、身近に活動しているシオコレの存在はとても大きかったのだと思う。
私が今回着ているスウェットは、バンブー(町内のオリジナルTシャツ屋)さんが発注したものの工場のプリントミスで泣く泣く廃棄するしかなくなってしまったのを、シオコレスタッフが上からシルクスクリーンプリントを重ね、シオコレスウェットとして再生させたものだという。そのエピソードを聞いて、迷わずこれを選んだ。
あの家の窓がこの家の窓になったり、あの子の服が私の服になったり、そういうのが当たり前な町。町の中、あるいは外も巻き込んで循環して生きていくことに、私は強い希望を感じている。一方で神戸の街は再開発ばかりだけれど、新しく作らなくても、もう全部、あるのになあと毎日思う。
いつか私がこの町を出る時が来ても、この町の誰かが私のものだった服を着てくれているかもしれない。それは私にとって小さな救いのような気がしている。ロゴデザインの担当でもあるスタッフのまんなちゃんと、嘘みたいに綺麗な景色だね〜と撮影しながら笑っていたことも、この服はずっと記憶しているのだろうか。
柳瀬瑛美 @_smlbeme_
(大学生)
今回着用いただいた商品
■シオコレスウェット
■ネックレス
■ドット柄ロングスカート
■黄色いシューズ
■その他私物