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『What's』vol.7を読む
今号の目玉は、一周忌を終えた石田柊馬さんのパートナー山田ゆみ葉さんのエッセイ。長年生活を共にされた方の目線で、柊馬さんの川柳への向き合い方が綴られている。
川柳書きが亡くなった場合、余程の有名作家でもない限りもうそこで本当に活動は終わってしまう。句集の再販も困難になる。(川柳を長くやっている諸先輩方の中には、それでいいという考えのひとも少なくない。)
ゆみ葉さんのように作品の管理ができて、文章も書ける方がいらっしゃることは稀なことでもあるので、とても貴重なエッセイだと思う。
川柳は座の文芸なので、句会に参加する側にはともすれば提出した句はその場限りのものだという割り切り方がある。句を大量に書き捨てる、ということは当たり前であり、句集を制作することは前提とされていないことが多い。たまたま私の場合はそういう考えでない先輩が何人もいる状態で句作を始めたので、後から座の文芸について色々考えを巡らすことになったのだけれど、句会や句作への熱量が低くても高くても、皆でひととき楽しく座を形成することができれば上々で、意外とこれが難しいことだったりする。
最近、書き捨ててひっそり消えていく川柳書きというのも、自然な姿で悪くないものだなと感じるようになった。誰でも参加できて、いつでもやめたり、始めたりできるものであるから。そこに人間らしい発露がきらきらときらめくことは、素敵なことだ。
掲載句から。
いっしょうにいちどしかない羽交い締め 暮田真名
浮き輪がないと嫉妬できない 〃
花束を腐らせてこそ女の子 〃
いわゆる「見つけ」の句が光っている。そしてとてもいじらしい。
浮き輪の屈折、花束の退廃、羽交い締めの強がり。
こわれはじめ記念日いつだっけいつだっけ 佐藤みさ子
共食いをしない約束してください 〃
切実さを書くのが上手い書き手らしく、何が壊れるのかは不明なまま
不穏さが広がる世界への言及がじわじわ迫ってくる。
あんときの月光売りは詐欺師なの 広瀬ちえみ
こんな日は月光缶をあけましょう 〃
「あんとき」って書くんだーと、抜け感にやられる。
軽みの技あり。
詩にかんしてはあまやかされる 柳本々々
もっと。 もっとほしいわ 星のふりかけ 〃
傲慢なようなかなしいような星屑まみれ。やわらかいひかり。
私の句から。
みはるかす蜘蛛が紡いだあみだくじ 竹井紫乙
てんぷら粉で揚げるときちくべいえい 〃
だいじなともだちを地下道ですてる 〃
短い手紙 道端の鳥の羽根 〃