海馬川柳句会のこと
2022年1月から湊圭伍さんが始められたネット句会が年末でお開きとなった。私はすべての会に参加しておらず、間が空いた期間がある。記録の頁には30回参加したとある。
自分の控えをざっと見てみると、おかげさまでたくさんの句を書いたなあと感慨深い。
選句の記録を眺めていて私は西脇祥貴さんと西生ゆかりさんのW西コンビの句が好きだったのだなということがわかった。
またいつかどこかでみなさんの句に出会えるとよいなと思うし、三年間お世話になった湊圭伍さんに感謝申し上げます。
印象に残った句
これが死人の口だよ、と描く円 湊圭伍
湊さんの句には甘さがなかった。選評もご自身のものの見方を軸に、そこそこ率直に書かれていたように思う。この句も作者のドライさが光っている。永遠を表すことが多い円。死人のあいた口の形も円に見える場合はあるだろうけれど、わざわざ円として認識することは少ないだろう。誰に向かって描いている円なのか、何のために描くのかを考えていると、句を書く行為に行き当たる気がして。
川を見てたらなにもかもおれだった 西脇祥貴
フロイデのピッチで、春を自首しよう。 〃
デウスだったですよそれはもう紅白な 〃
西脇さんの句の抒情は過剰なもので、私はそれを西脇さんの句の美点だと感じる。句の演出の上手さ。それでいつも点を入れていたのだ。ただし西脇さんの選評は正直言うと私にとっては過剰過ぎて結局何が言いたいのか、いつもよくわからなかった。わざとピンボケにしているのかもしれないけれど。
信号機の中の子募集(5歳まで) 西生ゆかり
知らない子体を脱いで海を着て 〃
彼らは本で2ページもある 〃
西生さんは俳人で、俳句作品はネットで検索すればいくつも読むことができる。柳俳の差異についてどのようなお考えをお持ちなのか興味深いところ。海馬川柳句会に出された句には「まんま俳句だ」と思った句はあまりお見受けしなかったので、川柳の句会であることをかなり意識して書いておられたのではないかと推察。着眼点が面白い句が多く、選句結果発表を見ると西生さんの句によく点を入れていた。
私の提出句を一部抜粋。出題に工夫があって、あれこれ悩みながら句作したことなど思い出しました。
てんぷら粉で揚げるときちくべいえい
みはるかす蜘蛛が紡いだあみだくじ
わたしたちの歯車はジャムパンです
のっぽさんと声を殺し合う広場
袋いっぱいにかくかくの屍
影のない明るさのまま共和国
ぜんぶわたしでせかいでしょ?ひまわり。
月曜のコードは眠たい花束
産んでも産んでも干物になる子ども
ベルリン 主題歌だけがひとり歩く