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吟ずる遠近
先日、みんぱく創設50周年記念特別展『吟遊詩人の世界』へ出掛けた。
エチオピア高原、タール砂漠、ベンガル、ネパール、モンゴル、マリ、日本という広範囲の国々の、吟遊詩人というよりもより芸能者に寄った立場の人々についての展示で、民俗学からの視点で「吟遊詩人」を見つめるとこうなる、という視点の面白さがあった。
日本の展示内容は瞽女とラップ。
私の知っている瞽女というのは、子供の頃に母と映画館で観た『はなれ瞽女おりん』であり、次にその存在を意識したのは斎藤真一の絵画世界であったから、門付芸人の面が強く脳裏に焼き付いている。(残念ながら本物の瞽女さんの芸に触れたことはない) この展示は、古代から普通の生活者あるいは共同体にとって「詩」とはどういうもの(役割)なのか、ということを民俗学的に検証しているのでその「詩」が文学と結びついているかどうかは主眼ではない。少なくとも現在の日本では「詩」を読む人口は多くないようなので、瞽女という今では失われた存在からラッパーへの飛躍は筋が通っているのかもしれない。
これからの世界も「吟ずるひと」は世の中に望まれるのだろうか。