シベリアがあるところ
令和五年西暦2023年。近所のスーパーでシベリアを見つけたので買ってみる。初めて食べたシベリアは身ぶるいするくらい甘い。
持ち歩くことができるシベリア
由来が不明なシベリア
愛・地球博覧会場のマンモスの欠片
あれもシベリア
毛の生えたシベリア
動く歩道から眺めるシベリア
石原吉郎は「シベリヤ」「ロシヤ」と書いている発音
わたしの「シベリア」「ロシア」とは違うものとしての発語
雪のなかで育まれる「ヤ」
大阪平野で育まれる「ア」
謎々にくるまれた「ヤ」
数学の難問のような「ヤ」
マンモスの地響きが結晶化して吹雪く
けれど永久凍土の崩壊は止められない
詩集の中のシベリアの変容もまた
アイスクリームが溶けるみたいに
トキオが東京から乖離するように
地面はばらばらになろうとしている
だからせめて
シベリアを食べる
虫歯を増やしながら
材料を疑いながら
白砂糖の中毒になりながら
甘さにがたがた震えながら
吹き飛ばされながら
※『what's』vol.6号 掲載詩
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